白だけの世界

ああ、もうそんな季節なのか
窓の外を見て、兄は言った
ちらちらとうっすらと降り出した、それは雪。
白い姿に凡てを隠して初まりへと戻す

元に還る 産れ孵る

日々は残酷だと思う。
どんなに望んだって永遠なんてものはありえない
ちっぽけな些細な夢も赦されない人々
日々は残酷だと思う。

兄の肌を見る
青みがかった生気のない肌。
兄にとって生きていることは、こんなにも難しく儚いけれど
私にとって生きるということは、これほど単純なものはないほどだ

兄は、季節を知らない。
兄は、空気を知らない。
兄は、何も知れはしない。

私は、何でも知り得ることが出来る。

世界はなんて、残酷なんだろうな……
兄の手を取って、私は心に呟く
冷たい氷を触っているような体温はもう慣れた。
私の手の暖かさに笑みを浮かべる兄の顔も好きだった。

産れ孵ることがあったなら、兄は何になることを望むだろうか。
生れ変ることがあったなら、私は何になることを望むだろうか。

もう一度この世界へと、望むのであろうか

ちらり、ほらりと雪が舞う窓の外
暖かさに包まれた部屋の中
兄にとって、二つの世界が繋がることはないけれど
私にとって、二つの世界を繋げることは容易だけど

決して、扉が開くことはない


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