魚眼レンズで見る世界

ふと、思ったことがある
僕の黒い眼が映す風景と、彼の青い眼が映す風景は違うのだろうか
いや、違うのだろうと思う
見る風景は同じでも、きっと何かが少しずつ違う

まして自分の目は歪んでモノを映しているのだから
目なんて所詮レンズの役割しかない
物を見ること  認識すること
それをやってのけるのは脳の役割
だから余計に考える
あの青い眼に映ったモノを、どう考え認識しているのか
指輪に付いている硝子玉を透かして見ているようなものなのだろうか

僕にとっては世界は歪んでいる
歪んだ世界ばかりを映すこの目は嫌いだった
眼鏡(レンズ)越しでなければ何も見ることの出来ない目を不便というのではなく
不自然という意味で嫌いなのだ
見たいモノを見たいままに見ること
裸眼では歪んでしまう世界が、眼鏡を通すと僅かばかり変わってしまうのではないか
真実にフィルターをかけて映しているのではないか

曖昧にぼやける輪郭が憎らしくてかける眼鏡はフィルターで
真実が見たくて外すとすべてが歪んでしまう
それだけではない
裸眼で表情を晒していると、心が読まれそうで怖かった
アレは自分の柔らかい殻
盾にするにはうってつけのモノでもあった
そんな自分に嫌気もさす
原因はやはり、眼を覆うこのレンズでしかない

黒い眼 青い眼
色が含まれて映されると思ったことはないけれど
見方はやはり違うのだろうか
色が同じでも同じ物が映されても別と認識して映すのだろうか
結局は脳の役割というのならそれを開いてみないと結論はないけれど
他人の目を通して色んなものを見てみたいといつも思っていた

僕と彼、同じものを見ているのだろうけど
眼鏡を外した僕の世界を彼は知ることは出来なくて
裸眼で歪まない世界を僕は想像することが出来ない

魚眼レンズで見る世界

周りの風景は曖昧で、大切な人だけがはっきりと見える
そんな世界で生きることに憧れた
魚眼レンズの向こう側
幸せな世界が歪んでいたとしても
裸眼で君の姿を映し出せるならそれで構わない


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