「心の嵐」作戦


M.I.B.は本件に深く関与しているものの、けっして総てを知りうる立場にはなかった。
だが、関係者からの情報をまとめるとこんな様なことだったらしい。
なお、文中の固有名詞は事の重大性をおもんばかってすべて仮称であり、
現実に存在する物とはあんまり関係ない事と言うことになっていることをお断りする。

「心の嵐」作戦

その日、私はM.I.B.の担当官として我がNyutown(ニュータウン)の閣議に召還されていた。
ニュータウン政府部内では最近の国力の低下が問題視されていた。
「それはつまりカウンターの回りが少ないと言うことだ!」
そもそも昔話ばかりで最新の情報に弱いと定評のあるM.I.B.であったが
最近はほとんどがリンクの更新でお茶を濁している状態だった。
「製鉄所並びにニュータウン市街区の建設に力を注いでおりますが、
何分にも大きなプロジェクトでして。」
「日本語のレゴ関連のHP育成と海外の創造的作品の紹介によるレゴ文化の発展という、
当初の目的には貢献できたのではないかと自己評価しておりますが・・・。」
弁明もむなしく責任の所在は明らかで、通常ならばM.I.B.の改組、更迭もやむなしの事態であった。
だがこの時は妙な風が吹いていた。
いわゆる「事態の本質的打開」という奴に目が向いたのだ。
苦し紛れの「今、最も熱く語られているあの話題を導入すべきです!」との提案が受け入れられたのだ。

あの話題、すなわちRCXと呼ばれる秘石が忽然とその姿を現したのは昨年の夏のことだった。
我々の理解ではどうやら「魔法の液晶」に綴られた祈りが「聖なる塔」から放射され、
謎の孤島ビルン島から発見された秘石に魂を吹き込み、
命なき物が自ら動きだし巧みに働くらしいのだ。
もちろんその奇跡を目の当たりにして各国が調査研究と称して不正規に持ち込む動きが見られていた。

だがニュータウン政府はこれまで事態を傍観していた。
なぜならあの秘石はあの邪教、Windows教によってコントロールされていたからである。
ニュータウンの国民は皆、魂の指導者、聖ジョブス師の教えに従うMac教徒であった。
一時激しい弾圧によって全世界的に退潮を余儀なくされたMac教だが、ジョブス師の復活と
「愛Mac」の教えで再び勢いを取り戻そうとしていたのだ。
彼らは「デファクトスタンダード」と3回唱えると敵を降伏させられると信じ、
数と力とお金の三位一体を説くWindows教を「ビルアスター教:拝金教」として
快く思っていなかったのだ。

しかし99年1月末、海外からのVIP来訪に関連し有力各国のサミットが準備されていた。
「国際競争力を維持するためには今を逃すわけには行かない。」
政府部内では不退転の悲壮な覚悟がなされていた。
もちろんMac教でもNQCの秘術を用いれば秘石RCXに我らの祈りを届けることは可能であった。
だが今後熾烈になるであろうロボコン国際競争において標準環境を用いることは
何者にも代え難いとの判断があり、ついに禁断のWindows機の導入が画策された。
この「秘石とそれに関連するWindows導入」は政府部内でコードネーム「心の嵐」作戦と呼ばれた。

(以下の写真資料は今後公開予定)
・唐突にビルン島に派遣された大型資源調査船「ゴンチキ」号
・古代ミケーネ時代のオーバーテクノロジーともいわれる秘石RCXの発掘の様子
・「ゴンチキ」号に載せられ運び出される秘石
・一方密かに拉致されたWindows教の司祭
・ニュータウン臨海工業地帯の一角に建てられた研究施設に運び込まれる秘石
・拉致されたWindows教の司祭によって封印が解かれていく秘石

しかしながら国民感情を配慮して極秘裏に導入されるはずだった秘石とWindows教について
故意にリークされた節があった。
「これは大きな飛躍に向けた脱皮に伴う痛みであり、必要悪なのだ。」
事は国力回復のカンフル剤としての秘石の導入から
宗教的対立へと変質しつつあった。

政府の公式見解では
「我々はすでにMac教で仕事にも趣味にも十二分に幸せに暮らしている。」
「今回導入されたWindows機はぎりぎりのスペックの中古機に過ぎず、
秘石RCXを操る道具に過ぎない。」
としているが、いかにも無理な話である。
宗教的反発の上に「秘石の奇跡による自動化が進めば大量の失業者が出るに違いない。」と
労働側は「現代のラッダイト運動」として大規模な反対闘争に出た。
その中心は我が国の基幹産業である製鉄労連だが、特に過激だったのは大小13台のモーターを擁する
第一製鋼工場労組分会であった。
そこに一部農民勢力も合流し、議事堂前は市街戦さながらの混乱に陥った。

だが、NHK「新・電子立国日本 第6回」に見られたように製鉄所の巨大システムもMindstorms
によるコントロールの絶好の対象なのである。センサーによる原料位置の確認やクレーンの位置制御
、圧延機の運転制御などあとはセンサーと設置しプログラムを書くばかりである。
ただし1基あたりモーターを3台以上を使用している天井クレーン6基と港湾クレーン3基、8台の
圧延機、3台の位置合わせ装置、転炉の傾動装置やランスの昇降機、高炉のダブルベルの昇降機や
各種コンベアーにローラーテーブルと一体どれだけの物を制御すればよいのか。
各種の炉にはライトが仕込まれているし、天井クレーンにはサイレント警告灯も付いているというのに。

その一方で政府部内の一部では秘石導入に更なる目論見を抱いていた!
「メタ・レゴジラII」プロジェクトである。
あのメタ・レゴジラに秘石を組み込んで自動化・自律化しようというのである。
レゴジラこそ景気停滞期に再開発をもたらす「創造と再生のための装置」なのであった。
「我々に与えられた資源と空間はあまりにも限られている。」
「老朽地区の再開発と復興需要には破壊が必要なのだ。」
そこには列強が次々と開発に成功している二足歩行ロボット開発へのあせりが見え隠れしていた。
秘石の到着は遅れていたが「メタ・レゴジラII」プロジェクトへ向けての基礎研究は
スタートせざるを得なかった。



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