里見  桂

 これは原作付きなのである。でも一応、作画の里見桂で分類してしまおう。原作付まんがというのは、漫画家にとってはとっても楽らしい。なにしろネームで悩む必要がない。原作にも、既に発表された小説等を原作とする場合もあれば、原作者によって、単なるプロットだけが与えられる場合、セリフまできっちり与えられる場合と、いろいろあるらしいから、一概には言えないが……。  作品によっては、というか、はっきりいうと原作者によっては、作画担当の漫画家は下働きで、原作者の作品と言い切っていいようなものもある。例えば雁屋哲原作、花咲アキラ作画の『美味しんぼ』。どう考えてもあれは雁屋哲の作品である。第一、美味しんぼと言われて、花咲アキラの名前を言える人がどれくらいいるか……。
 「原作」関連ではいくつも書きたいことがある。ついでだから、ここに書いちゃおう。
 人気が出たまんがのアニメ化のひどさである。よくもあれだけ原作のよさの影も形もないものを作れると感心してしまう。その点、美味しんぼは、原作者の力なのだろう、原作と全く変わらないアニメ化がされている。その点、雁屋哲は立派な原作者だ。自分の作品に対して妥協を許さない。よく、アニメの原作を創った漫画家が、「アニメは別の作品と考えています」と言っているのを聞く。まあ、もし原作どおりでなくてはダメと言って、アニメ化が中止になったら元も子もないから、あきらめてしまうのは良くわかるので、そういう態度を責めるつもりはないが、アニメを楽しみにしていたのに、あまりのひどさに悲しむ読者はかわいそうである。
 なぜ原作どおりにアニメ化されないか。
 一番は、テレビという視聴率至上主義のメディアゆえなんだろう。視聴率をとれるかとれないか、どうすれば視聴率をとれるか、を考える人が、より安心できるように変えられるんだろうね。たとえば、サイボーグ009。原作では元俳優で中年の007が、テレビアニメではなぜか子どもに変わっていた。あれはたぶん、子どもでまぜっかえし役が少なくとも一人はいないといけない、というセオリーというか、ノウハウがあったんだろう。ばかげたことである。
 いかん。ずいぶん長くなってきた。本当は、このあとに「アニメ化を担当する人の読解力のなさ」「アニメ化の動機の不純さ」を書きたかったんだが、別のところに譲ろう(^_^;)

「ゼロ」

集英社 ジャンプコミックス デラックス  23巻 ISBN4-08-859004-X 505円 1998/02/09 (1)
「本物を作る男」ゼロ。贋作者でありながら、作る贋作は本物と全く違わない。そんな天才贋作者を主人公とした作品である。主に美術を対象にしてはいるが、考古学、音楽、人間の偽物、いや、本物も作る。そのためには、オリジナルの作者の魂にふれるために、作者の生涯を調べ、自分を同じ境遇に置いてみる。そして、何かしらのオリジナル制作の秘密を発見する。
 この作品の原作者は愛英史。毎回(掲載誌は月2回刊だから、1か月に2回)なにがしかの作品とその作者を選び、伝記を調べ、そこから何かの謎を探し出し(または作りだし)、それを解く。たいへんな仕事だと思う。
 しかし、このゼロにしろ、テレビのなんでも鑑定団にしろ、受け手があまり詳しくないからその蘊蓄に感心をしているのかも知れない。というのは、美術にはうといが、音楽にはそれなりに知識はあるから、ゼロやテレビなんでも鑑定団で音楽関係のものに関するものが登場したときの対応のチンプンカンプンさというか、知ったかぶりさに関してはバレバレなのである(^_^;)

トップへ   最近のマンガへ   作者リストへ   作品リストへ  

MAN HBE03015@nifty.ne.jp
おてまみはこちらね(*^_^*)