酒井 美羽

 酒井美羽の最初の記憶は、「セーラーブルーの青春」という水泳を舞台にした作品だった。その当時は、そんなに絵のうまくない漫画家という印象だった。その後は学校を舞台にした短編・中編を発表していたが、彼女の転機は「ミルクタイムにささやいて」だったと思う。
 それまで、どちらかというとまじめな作品を書いていたが、この作品でコメディに開眼したと言っていいだろう。高校卒業したてで結婚し、子どもを産んだ幼妻の主人公と、年の離れた日本画家の夫、そして主人公の両親を中心にしたドタバタだが、往々にして「エッチな」という形容詞がつくコメディなのだ。これは、続編の「初体験ボーイ源之助!!!」でも同じ。幼くして産んだ息子・源之助が中学生になった時点を舞台にして、年老いてはいるがまだまだ元気な両親、中学生の子持ちには若すぎる母親、そして性に目覚める季節の息子が入り乱れてのえっちコメディである。この設定は、現在でも酒井美羽のメインテーマである。
 さて、この長編が完結したころ、世の中にはレディスコミック誌が数多く出回っていた。えっちなコメディをかける漫画家を、このジャンルが見逃すはずはない。というわけで、シルキーをメインにして、酒井美羽のレディスコミック時代が始まる。読み切りを中心として、数多くの良質な作品を発表した。
 レディスコミックが下火になり、角川書店の「あすか」に連載したのが、「その男ワガママにつき」という、高校教師と女生徒の恋愛を描いたコメディ。当然バレてはイケない恋愛という点に加え、例のごとく、それぞれの両親のキャラクタがすごいのだ。

「その男ワガママにつき+」

角川書店 あすかコミックス     ISBN4-04-924711-9 390円 1998/01/17 (1)
 本編では高校教師と女生徒のカップルだったが、既に結婚して子どもも生まれているという設定の続編。映画でも「○○○○2」という続編が最初のものより面白いものは数少ないのと同様、やはり教師と生徒、しかも処女という緊張感がなくなって、密度が少ないという印象である。まあ、本編が面白かったので、そのおまけだと思えば許せるのだ。

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