ワーグナー

「リエンツィ」序曲
 歌劇「リエンツィ」はワーグナーの3作めのオペラで、14世紀のローマ法王の公証人リエンツィを主人公とした、全5幕、6時間もの大作です。さすがに初期の作品で、内容が上演時間に見合わないためか現在では序曲だけが演奏されています。
(494)


楽劇「マイスタージンガー」第1幕への前奏曲
 ワーグナーは、歌劇「タンホイザー」を作曲した後、この悲劇と対になる喜劇として「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を作曲しようとしましたが、いろいろな事情から長い間完成させることができず、その間に「ローエングリン」「トリスタンとイゾルデ」が完成し、大作「ニーベルンクの指輪」も作曲が進行していました。結局完成したのは20年以上後のことで、最初の構想では軽い喜劇だったのが、崇高で規律ある芸術への、そしてドイツの精神と芸術への賛歌として完成されたのです。
 中世ドイツの手工業者は組合を作り、親方(マイスター)・職人・徒弟という身分制度をとっていました。そして16世紀中ごろには歌そのものの組合もできていたのです。といってもプロの歌手ではなく、本業は別にもっていたわけです。この劇の主人公ハンス・ザックスは親方として実在した人で、数千曲におよぶ歌曲を作ったとされています。
 第1幕への前奏曲は、劇中で奏されるさまざまな動機が次々と現れます。後半のクライマックスでは、冒頭のマイスタージンガーの動機、次に金管で現れる行進の動機、前半の頂点である芸術の動機、さらに中間部でバイオリンが優美に奏でる愛の動機が、複雑にからみあって同時に演奏されるという大変な名曲です。
 ところで、この曲をレコードや演奏会で聞くと、終り方が2種類あるのを御存知でしょうか。本日演奏するのは、楽譜に忠実な演奏ですが、最後にティンパニのトレモロが残って、オーケストラが2回余分に四分音符を演奏する終り方もあるのです。「ニュルンベルクのマイスタージンガー」全三幕は、民衆が主人公ザックスを讃える「ザックス万歳」の大合唱で幕を閉じるのですが、その音楽が第1幕への前奏曲の最後と同じ(全く同じではありませんが)で、そこでは前奏曲より1小節多い、ティンパニの残る終り方なのです。前奏曲だけを演奏するときに、より華やかに終りたい場合には最後だけを借りてきているわけです。
(???)


トップへ   曲目解説目次のページへ  

MAN man@leaf.email.ne.jp