シューマン

「マンフレッド」序曲
 シューマンは歌劇を1曲だけ作曲しましたが、そのほかにも劇音楽を何曲か書いています。この「マンフレッド」序曲も、バイロンの劇詩「マンフレッド」のための劇音楽です。序曲と15の場面のための音楽が作られました。
 歌劇ではありませんから、序曲にアリアの主題を登場させるなどということはなく、ソナタ形式による純粋器楽の曲になっています。
 シューマンは、交響曲などでも金管楽器、特にトロンボーンを効果的に使用していますが、この序曲でも2本ずつの木管楽器に対して、4本のホルン、3本ずつのトランペットとトロンボーンと、金管楽器を多めに使用しています。
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ピアノ協奏曲
 さて、シューマンはロマン主義音楽の推進者として、作曲や指揮活動のほか、教育者として、また音楽評論誌の主幹として活躍していました。早い話が、音楽というものを音の抽象的な構築物から、より人間的・抒情的・文学的・詩的なものを表現しようとしたのです。シューマンは交響曲や協奏曲・室内楽曲などほとんどあらゆる分野の作曲をしましたが、中心はピアノ曲と歌曲です。ロマン主義的な表現をもっともよくできるのが、この2つだったからです。
 そんなシューマンは、ピアノ協奏曲の作曲においても、古典的な構築美や、独奏者の技巧を追求することはしませんでした。というより、このピアノ協奏曲自体、もともと協奏曲として書かれたものではなく、現在の第1楽章は「ピアノと管弦楽のための幻想曲」という独立した曲だったのです。彼の妻で、天才的なピアニストだったクララ・シューマンによって初演されましたが、出版社からは出版を断られてしまいました。その4年後、2つの楽章を追加して協奏曲として完成させ、出版されたのです。
 そんなわけで、第1楽章は幻想的な楽章(あたりまえですね)です。普通協奏曲の第1楽章はソナタ形式で作られ、第1主題とそれに対照的な第2主題があるのですが、この曲では第2主題が登場すべきところには第1主題とそっくりな旋律が出てきます。事実上1つの主題が中心となって楽章が作られています。さらにこの主題(曲の最初に木管楽器が演奏する旋律です)は、第2楽章、第3楽章の主題の元にもなっています。
 第3楽章は、第1主題はまともなのですが、第2主題が難物です。この楽章は速い3拍子で1小節を1つに数えるのですが、第2主題は3拍子2つ合計6拍を2拍ずつ3つにわけて3拍子にするのです。簡単にいえば、2つを3つに分けるのです。こういうことはよくあることで、普通はたいしたことありません。大抵、2つを2つのまま正常に演奏する人と、2つを3つに分けて演奏する人が混じっているので、聞く人には複雑に聞こえますが演奏するほうは基準があって楽なのです。
 ところが、この曲は全員が2つを3つに分けるので基準の音が全くありません。はたしてどうなることやら……。
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交響曲第4番 ニ短調
 シューマンは4曲の交響曲を作曲しているので、この曲は最後の交響曲ということになりますが、作曲されたのは第1番と同じ年で、初演の時には「第2交響曲」として演奏されました。しかし、評判が悪かったので出版を見合せ、10年たって、第3交響曲「ライン」の完成の後に、一部を改作して出版したため、この曲は第4番となったのです。
 もともとこの曲は「交響的幻想曲」という標題がついていて、純粋な交響曲とはちょっと違っています。一番の違いは、この曲が、全ての楽章が続けて演奏されることです。明らかに4つの楽章に別れてはいますが、実際の楽譜には、楽章の区切りも「第?楽章」といった文字も一切書かれていません。
 第1楽章は、ゆっくりとした序奏で始まります。この部分は第2楽章にも登場します。少しずつ高揚して行って、速度が速くなり第一主題となります。この音型は第4楽章でも使われます。普通は第一主題と対照的な第二主題があるのですが、この曲には出てきません。展開部の後半に対照的な旋律が現われますが、それ以外はとにかくしつこく第一主題の音型が繰り返されます。
 第2楽章は、オーボエとチェロが旋律を奏でる短調の部分と、長調に変わって独奏ヴァイオリンが細かい装飾をする中間部とで出来ています。
 第3楽章は、スケルツォ。いきいきとした主要な部分と、流れるようなトリオでできています。
 第4楽章は、ゆっくりとした序奏で始まり、盛り上がって一段落したあと、突然速度が速くなってリズム主体の第一主題が始まります。その合いの手には第1楽章の音型が使われています。第2主題は木管やヴァイオリンで演奏される軽やかな旋律です。
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