ラフマニノフ

ピアノ協奏曲第2番
 私がピアノを習いはじめた頃、楽器やさんに並ぶピアノの楽譜の最後のページに印刷されている、難易度別のリストをよく見ました。赤い帯のかかった一番簡単な曲ですら弾けない私にとって、青い帯の一番難しい曲というのはあこがれと恐れの対象でした。一番難しい楽譜、それはたしか「展覧会の絵」と、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番だったと思います。
 その2曲を今月と来月とで演奏するのですから、ちょっと遠い目をしてしまいます。
 ラフマニノフは、19世紀後半から20世紀前半のロシアの作曲家ですが、超絶技巧派ピアニストとして大活躍した人でもあります。
 ラフマニノフはピアノ協奏曲を4曲作曲しましたが、この第2番が何と言っても最高傑作です。ピアノ奏者ではリスト、ヴァイオリンではパガニーニ等と並び称せられる技巧派ピアニストではありますが、作曲家としてはやはりロシアの作曲家チャイコフスキーの直系とでも言いましょうか、とにかくメロディーが美しい。美しいメロディーを作る作曲家としては、地味ではありますがメンデルスゾーンなどが本当に美しいメロディーを書いています。ヴァイオリン協奏曲等の、甘美な、うっとりとするような旋律は、熱狂的なファンは付かないかもしれませんが、本当にすばらしい。メンデルスゾーンの美しさをケーキやアイスクリームにたとえるなら、ラフマニノフの美しいメロディーは、水ようかんやかき氷とでもいいましょうか。透き通ったという言葉がいいのかな。何か冴え冴えとしたものがあります。
 第1楽章は独奏ピアノの鐘の音のような和音で始まり、続いて出てくるのが第1主題、一度盛り上がって急に静かになったあとに、ピアノが独奏するのが第2主題です。
 第2楽章は、第1楽章の最後の和音と同じハ短調の和音から始まって、2楽章の調子であるホ長調に次第に移って行きます。これは2楽章の最後と3楽章の初めでも同じことが行なわれています。細かいところにも気が配られている、という感じですね。
第2楽章はゆっくりとした4拍子ですが、1拍を3等分した合計12個の音符を、4つずつまとめて3拍子のリズムになっている伴奏の上に、普通の4拍子の旋律が乗るという凝った趣向になっています。
 第3楽章は何といっても冒頭のリズミカルな旋律と全く対照的で美しい2つ目の旋律でしょう。一度聞いたら忘れられない旋律です。そして、様々にテンポを変えるものの、ピアノは常にめまぐるしいほどの技巧的な音形を演奏しています。本当に難しい曲です。
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ピアノ協奏曲第3番
 ラフマニノフは天才的な技巧派ピアニストでしたが、作曲に関しては技巧だけに走ることなく、チャイコフスキーを引き継いでロシアとヨーロッパの両方の音楽を取り入れたロマンティックな作風で、ピアノ曲はもちろん、歌劇、交響曲、協奏曲、歌曲等を作曲しています。最も有名な作品はピアノ協奏曲第2番でしょう。
 本日演奏する第3協奏曲は、傑作第2番に続いて作曲されたものにふさわしく、甘美さは少ないものの、その分内容の深さ・濃さは増し、独奏ピアノもより効果的になっています。その分、元々難曲の2番にも増して、独奏ピアノは技術・体力を必要とされる超難曲になっています。
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