ルロイ・アンダーソン

ルロイ・アンダーソンの音楽
 ウィーン・フィルがウィーン国立歌劇場管弦楽団のもう一つの顔なのは有名ですが、小澤征爾が音楽監督を勤めるアメリカの名門オーケストラ、ボストン交響楽団ももう一つの顔を持っています。それがボストン・ポップス管弦楽団です。ボストン・ポップスの演奏会では、クラシックの交響曲や協奏曲などはお休みして、ポピュラーな曲やスタンダードなジャズ、またスターウォーズ・スーパーマン・スタートレックなどの映画音楽を演奏するのです。
 ルロイ・アンダーソンは、一時ハーバード大学の語学の教授を勤めていたのですが、ボストン・ポップスの編曲の職を得て、音楽家に転身しました。その後、編曲だけでなく、作曲家としてボストン・ポップスのために数々の小品を作曲したのです。
 アンダーソンの作る曲はユーモアとアイデアにあふれたものがいくつもあります。「踊る子猫」でワルツを踊る猫は、曲の最後で犬に吠えられて(犬の鳴き声は打楽器奏者が声で演奏します)逃げだしますし、「そりすべり」では馬のいななき(これはトランペット奏者が高度なテクニック?で演奏します)も出てきます。また、タイプライターや紙やすりを楽器にしてしまったりもします。しかし、アンダーソンの曲はユーモアやアイデアだけではありません。代表作のひとつである「ブルー・タンゴ」はなんとオーケストラの曲であるにもかかわらず、ヒットパレードのトップテンにランクされたほど人気が出たそうです。

●タイプライター
 最近はワードプロセッサが主流になりましたが、アメリカのオフィスにタイプライターは必需品でした。プロのタイピストは1分間に50語以上、つまり数百文字を打つのですから、機関銃のようにパチパチパチパチ、行が終りに近付いたらチーン、改行するときにはジャー、とさまざまな音を忙しくたてます。これを音楽にとりいれてしまったわけです。1950年代のアメリカの活気のある雰囲気をうかがわせるようなきびきびとした曲です。
 本日の演奏は本物のタイプライターを使用する予定ですが、はたして当団の打楽器奏者はタイピストの素質があるのでしょうか?

●シンコペーテッド・クロック
 「くるった時計」という意味の題名のこの曲は、ウッドブロックとトライアングル演ずる目覚し時計が主役です。その昔、交響曲の父・ハイドンは正確にリズムを刻むところから「時計」と名付けられた交響曲を作曲しましたが、さすがに20世紀中頃のアメリカはジャズの本場ですから、時計もまともには時を刻まないようですね。ただ、曲の最後でゼンマイが飛ぶところがあるのですが、これはさすがに40年前を感じさせてくれます。
 なお、この曲はアメリカのCBS放送の「レイト・ショー」という番組のテーマ音楽に使われていたそうです。

●トランペット吹きの子守歌
 場所はアメリカの都会の一画のアパートの屋上。時は夜がそろそろふけはじめるころ。若者が、愛用のすこし古ぼけたトランペットでせつないメロディーをかなでる。近くのアパートに住む人々はその微妙な調子を聞き分けて、今日の彼の気分を推理する。もしかすると、若者に想いをよせる娘が、窓を開け、窓枠に肘をついてうっとりと聞き入っているかもしれない。
 そんな場面が思い浮ぶような曲ですね。

●ラッパ吹きの休日
 3人のラッパ吹きが軽快で楽しいメロディーを吹きまくります。まあ、この曲は何の説明もいらないでしょう。運動会のかけっこを思いだしませんか?
(457)


トップへ   曲目解説目次のページへ  

MAN man@leaf.email.ne.jp