きくち正太――あられちゃんから美味しんぼへ




 おもしろくて何回も何回も読んでしまう本って、たまにあります。

 最近、久々にそんな本(まんが)を買いました。なんせ、買ってからというもの、少なくとも2〜3日に1回、時には1日に2〜3回は読んでしまう。あれば読んでしまうので友人に貸したんだけど、1週間くらいして戻ってきたらまたその日に2〜3回読んでしまったくらい。

 きくち正太『おせん』がそれ。2001.8.1現在で発行されているのは1巻2巻の2冊。モーニングに不定期連載されていたが、8月からは創刊される雑誌に連載される模様。

 ぼくがきくち正太を初めて認識したのは、10年ほど前、『三四郎^2』(三四郎の自乗→三四郎の事情)。独特の絵で、特に女の子がかわいくて気に入ったのだけど、だんだんと『Dr.スランプ』が『Dr.スランプあられちゃん』になっていったのと同様な変化をしていったので、途中からフォローしなくなっていた。

 で、10年ぶりにきくち正太の本を読んでみたら……、なんと、あられちゃんが美味しんぼになっていました。

 老舗料亭の大看板・おせんは、板場に立った日はごみが半分になるという、『思想』のある料理を作る料理人であり、また店で使う器は自分で焼き、しかもそれは骨董商をして桃山時代の作品かと言わしめる。本当にいい物を「拵える(こしらえる)」。さらに、本当にいい物を「見る目」も持っており、彼女の料亭は彼女の惚れた本当にいい物であふれている。

 と、書いてしまうとただの美味しんぼ。でも違うのだ。このおせん、おっちょこちょいでかわいくてだらしがなくて色気もほどよくあって、読む人を楽しませてくれる。なんせ、最初にも書いたが、このぼくが、1巻を読み2巻を読み終えたら、また1巻をもう一度読み始めてしまうくらいなのである。

 さて、この中毒状態をなんとかしようとして、友人に貸したのだが、その女友達は、絵がちょっと受け付けられなかった、というコメントとともに本を返してきた。確かに非常にくせのある絵なのだ。ときには、この人どういう格好してるんだろうと手足のつながりを考えてしまう場合もあったりする。実は、『おせん』の絵は、一般的なまんがのデフォルメではなく、浮世絵のデフォルメの手法で書かれている。だから人によっては受け付けない絵になっている。まあ、一度見てください。

 ところで、このおせん、笠置の宿は千成神社のそばに住んでいるという設定になっているのだが、これってどこ?



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