雇用における年齢差別ニュース

一歩前進した控訴審判決(2004年10月)公務員の年齢制限には合理性――東京地裁(2004年6月)公務員の雇用と年齢制限(2003年8月)年齢差別の歴史(2002年8月)邦語書籍紹介(2002年1月)雇用対策法 施行(2001年10月)コメントへの回答(2001年9月)指針案が正式公開(2001年8月)指針10項目(2001年7月)『サンデー毎日』のコメント(2001年6月)雇用対策法改正(2001年4月)イギリスでも?(2001年2月)雇用対策基本法に努力義務(2001年2月)紹介予定派遣制度で年齢制限の禁止(2000年10月)||雇用における年齢差別情報集へ戻る
一歩前進した控訴審判決(2004年10月)
 平成16年9月28日、公務員の年齢制限を争った訴訟の控訴審判決が出た。結論は控訴棄却であった。但し、下記争点[
2004年6月のニュースを参照]の(2)については、あまりに簡単に年齢制限の合理性を認めた地裁判決に比べると、より踏み込んで判断している。
 本判決は、「年齢制限を設けることにより・・・受験年齢超過の優資質者を排除してしまう」ことは容易に推認でき、さらに中途採用に伴って生ずる問題も解決可能性があるとして、「受験資格に年齢制限を設けることには合理性に疑問を抱く余地のある問題を孕んできていることも否定できない」と述べる。さらに、近年になり大きく変わりつつある日本の雇用形態や賃金体系の変化に触れ、こうした背景から新しい施策(2001年雇用対策法7条・公務員制度改革・千葉県市川市の年齢要件撤廃)が進行していることに言及する。ただ、現状では、こうした変化に対応して年齢制限を廃した地方自治体が多数派となっていないこと等も「公知の事実」であり、「本件採用試験当時の平成15年度においては」、年齢制限が「明らかに合理性を欠くものであったとまでいうこと」はできず、国公法44条の委任を逸脱するものではないと結論付ける。
 結論については予想の範囲内であったものの、年齢制限のネガティブな側面についても正面から検討したという意味では、裁判例としての価値を十分に持つのではないかと思われる。

残念ながら、上告は2005年4月19日に棄却(平成16年(行ツ)第330号)されました(2005年5月追記)。

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国家公務員の年齢制限には合理性――東京地裁判決(2004年6月)
 平成16年6月18日13時15分、東京地裁で公務員の年齢制限を争った事件の判決が言い渡された。争点は、(1)受験資格を有することの確認に「訴えの利益」があるか、(2)受験資格規定が国家公務員法44条および憲法14条に違反するか、の二点である。
 (1)の地位確認については、「受験資格の見直しの契機となることがあり得るというにとどまるものであるから」確認の利益はないととして却下した。
 また、(2)国家公務員法と憲法違反について、国公法によれば、採用試験はできる限り広くかつ平等に行うことが要請されるが(27条、46条)、人事院規則により最小限度の客観的かつ画一的な要件を定めることができる旨を規定している。この人事院規則への委任は、判断の専門性と事情の変化に適切に対応していく必要があるためである。そこで、「委任の趣旨」を逸脱したものといえるか否かについて検討すると、(a)わが国の雇用慣行を前提とすると、一定年齢以下の若年層に優先して就業機会を与えることは、社会的に是認されていて、不合理であるということはできない、(b)わが国の雇用形態に変化の兆しがあるものの若年層への優先的な就業機会が妥当性を欠くに至っていない、2001年の雇用対策法も例外指針で長期勤続キャリア形成を図る場合を認めている、人事院による年齢制限を撤廃する方向での意見表明は本件合理性の判断を左右しないとして、原告の慰謝料請求を棄却した。
 この判旨についての検討は別の機会に譲るとして、年齢制限についての合理性を論じたという意味で、ニュースで取り上げるべきではないかと考えた。ちなみに、控訴の予定である。

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公務員の雇用と年齢制限(2003年8月)
 この4月から国家公務員教育職(文部科学教官・助手)として勤務することになった記念として、公務員と各年齢差別禁止法との関係について、アメリカでの議論を簡潔に紹介したい。
 1967年ADEAの制定当初、公務員について適用対象に含まれていなかった。ところが、1974年の改正で、連邦あるいは州の公務員についてもADEAが適用されることとなった。こうして、現在のADEAは公務員についても適用範囲に含めているのだが、及ぶ範囲が制限されている分野・職種も多い。例えば、選挙あるいは指名によって任命された高度の政策決定者は完全に適用除外であると定められているし、消防士や警察官、外交官や航空管制官などについては、一定の要件の下で定年制度が許容されている。
 さらに、近年の有名なKimel事件連邦最高裁判決は、州の公務員が州政府を訴えることができるとするADEAの規定が違憲であると判示した。このため、現在では「連邦公務員→適用」、「州公務員→(事実上)非適用」となったのである。この影響で、州公務員が州を訴えていた訴訟
(1995年に提訴)が継続できなくなり、EEOCが介入して和解に乗り出す場面もあったようである。
 続いて、各州法に目を向けてみよう。既に述べたように、現在では50州全てが何らかの形で年齢差別禁止を定めているのであり、州の公務員についても州ごとに適用/非適用が分かれている。興味深いのは、民間企業に対して年齢差別禁止法は非適用
(もちろんADEAは及ぶ)としながら公務員にのみ適用されると定める州が存在することである。例えば、40歳以上の労働者を対象とするサウス・ダコタ州法[§3-6A-25]であり、同条は「公務員と官公被用者」の編に定められているため私企業には適用されない。つまり、民間/公務員の適用/非適用関係が、1974年改正前のADEAと全く逆ということになる。また、フロリダ州では、民間企業を対象とする年齢差別禁止規定を制定の上、公務員を対象とするさらに厳しい年齢差別禁止規定が存在し[Fla.Stat. §112.043]、公務員個人が民事訴訟で争うことを認めている。
 このように、連邦公務員・州の公務員ともに、年齢差別禁止法が適用されるか否かについては時代・各州・職種によって異なるのである。「公務員だから」年齢差別禁止法は適用できない/適用すべきであるというような議論は全く説得力を欠くものであり、あくまで個々の仕事内容に応じて検討する必要があろう
[日本語で読める参考文献] 勝田卓也・樋口範雄「連邦制の下での年齢差別禁止法 ――州を被告に含めるADEAの規定は違憲 Kimel v. Florida Board of Regents, 120 S. Ct. 631 (2000)」ジュリスト1178号109頁(2000)、森戸英幸「雇用政策としての『年齢差別禁止法』『雇用における年齢差別禁止法』の検討を基礎として」清家篤編著『生涯現役時代の雇用政策』97頁(日本評論社、2001)、長岡徹「Kimel v. Florida Board of Regents, 528 U.S. 62 (1999) ――私人が州政府を相手方に連邦裁判所に訴えを提起することを認める年齢差別禁止法の規定が違憲とされた事例――」法と政治52巻2・3号(2001)。

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年齢差別の歴史(2002年8月)
 さて、本日はあまり知られていないアメリカの年齢差別の歴史的な側面について紹介することにしよう。すでに「アメリカには(連邦法としての)年齢差別禁止法が1967年から存在する」といった程度の情報は、マスメディアを通じて広く一般にも知られるようになり、「だから日本でも必要」といった意見が各所でみられるようになった。しかし、そもそもアメリカで年齢差別という概念がどのように形成されたのかといった歴史研究には、あまり目を向けられていないように思う。
 すでに1989年に出版された“Old and Obsolete”が、アメリカ国内においても「高齢労働者に対する経済的な差別の問題とは対照的に、年齢差別の歴史についての文献は乏しい」と、歴史的研究の不足を指摘し、遥か1860年からの年齢差別の歴史を主に統計学的見地から検討している。産業構造や経済構造の変化に重点を置き、人種差別や性差別とは異なった歴史的文脈で年齢差別の起源について研究する。やや残念なのは、研究が1920年までと限定されており、現代との連続性について検討されていない点である。
 また、すでに文献集でも紹介しているように、マスメディアの目を通じた年齢差別については、1890年から1999年までの100年以上にわたる変化を描いた単著“Age Discrimination by Employers”が2001年に出版されている。同書によれば、早くも20世紀初頭には「年をとった者は、あまりに時代遅れの方法で物事を行いがちであり、・・・若者の場合は、少なくとも訓練することができる」といったコメントをN.Y.タイムズの編集者が書いていたそうである。今から約100年前のことであるが、はやくも現在と同じような偏見が一部には存在してことが伺われる。また、前掲書と同様に、この時代に急激に進んだ工業化社会への変容という要素が重視されており、高齢労働者が新しい職務へ応募する際に障壁があったことが示されている。かかる個々の内容を追ったうえで、冒頭の一文「人種差別は、人々そのもの(what they are)を標的にする。年齢差別は、人々がどうなるか(what they become)を標的にする。」に立ち返ると、その視点の鋭さに感嘆してしまうのである。
 さて、全米で唯一年齢差別禁止法が存在しなかったアラバマ州でも1997年に単独立法が制定されて牙城が崩れたとか、カリフォルニア州で1999年に年齢差別の判断基準を明確化する条文が追加されたとか、私自身新しい情報の切り売りに走ってしまいがちなことが多い。しかし、たまには腰をすえて歴史的な研究に目を向けるべきではないか!という自戒を込めて、今回はこの2冊を紹介させていただいた。実際に原典にあたらないと伝わりにくい部分もあると思うが、年齢差別についての長い歴史の一端でも紹介できたことになれば幸いである。
*カリフォルニアの新しい条文に関する論考、柳澤武「年齢差別訴訟における正当化基準をめぐる争い ――California州Marks事件と公正雇用住宅法改正――」九大法学84号237頁(2002)を公表しました。ついでに、アメリカ全50州+1特別区の雇用における年齢差別禁止規定を概観してまとめました[こちらは未発表]。(2003年追記)

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邦語書籍紹介(2002年1月)
 今回は新年第一号ということで、「雇用における年齢差別に関する文献・論文集」(←随時追加しています) (2003年追記)に載せていない、雇用における年齢差別について書かれた新書籍の紹介をおこないたい。
 まず、昨年末に出された新しい書籍で、タイトルは西村公児『おじさんパワーで年齢差別を吹き飛ばせ』(文芸社、2001)がある。ただ、こちらはドキュメンタリー風の小説という形をとっているため、迫力を削がれてしまった感が否めない。出版社の帯からも「年齢差別」を強調して売り込もうという意図は見えるのであるが、内容的には「差別」というよりも「対話で世代間の溝を埋める」という叙情的な印象が強かった。
 次に、田尾雅夫ほか『高齢者就労の社会心理学』(ナカニシヤ出版、2001)は、門外漢にも大枠は理解できるような丁寧な記述で、他分野の専門書としては読みやすい。特に、当該労働者の職種引退の意思決定に深く関連しているという指摘や、日本の労働者は勤労意欲が旺盛でありながら年齢における規範意識が高いという一種のジレンマについて触れられた部分が大変興味深かった。
 この他にも、まだまだ関連書籍を購入してはいるのだが、それでも把握できていない貴重な書籍や文献があるのではないかと危惧している。お気付きの方は、是非メールにてご一報を。なお、私が所属する働き盛りの会(←現在は、特定非営利活動法人「年齢差別をなくす会」になってます) (2003年追記)からも、代表の兼松さんの編集で書籍出版へ向けた動きがある。こちらは会員の体験などを元にした相当な分量のものになる予定であり、出版の折には真っ先に紹介したい。

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雇用対策法 施行(2001年10月)
 いよいよ厚労告第295号(8月で取り上げた指針)とともに雇用対策法が施行されたが、職発第543号が前掲の指針第3の4について、一部を明らかにする手がかりを示した。まず、パブリック・コメントへの返答が冒頭に引用された上で『「中高年齢者は賃金が高い」・・・といった予断をもって年齢制限を行う場合は、このCの場合には該当しない。・・(具体例)・・。さらに、賃金が年齢ではなく勤続年数によって決定される場合も、既に働いている労働者の賃金に変更を生じるような就業規則改正の必要が生じることはありえず、年齢制限は認められないものである』といった点が明らかにされることとなった。ここでは、「年齢-賃金」という関係と、「勤務年数-年齢」という相関関係を完全に異なった要素として区別しているが、双方とも近年のアメリカにおいて争われている論点であり、機械的に二分して反対の結論を導くことについては若干の疑問がある。

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コメントへの回答(2001年9月)
 先月、自分が送ったコメントが、『「年功賃金」を年齢制限が認められる場合としているのはおかしいのではないか。また、指針第3の4は、一体どのような場合がこれに当たるのか明確にすべき。』という大雑把な質問にまとめられていた。
 それは仕方がないとして、回答は『指針の第3(年齢制限が認められる場合)の4にあるのは、年功賃金であれば、すべて認められるというのではなくきわめて限定的な場合です。この第3の4に掲げている場合は、例えば30歳の労働者は30万円、40歳は40万円というように、賃金が勤続年数や能力、適性にかかわりなく専ら年齢によって機械的に決定される就業規則があるために、もしある一定の賃金で年齢にかかわりなく募集・採用した場合、募集時にその者に払うとした賃金額と就業規則により決められている賃金額が食い違うという事態が発生し、その解決のためには当該就業規則の改正をしなければならず、結果として他の労働者の賃金の変更をも必要とするような場合のことであり、きわめてまれなケースです。このように「年功賃金」を理由とした年齢制限を広く認めるものでないことを例示を示しつつ明らかにしていきたいと考えています。』(原文ママ、但し太字強調は柳澤武による)ということだった。
 この回答を信じると確かに稀なケース(そんな会社が存在するのだろうか)にしか適用がないことになるが、本当にそうなるのだろうか?また、仮にこの例外規定が適用されないとしても、雇用における年齢差別が行われた際に、その差別が高齢労働者の賃金コストという理由で正当化される危険性、は残っていることに注意しなければならない。もちろん、すべての場面において、そのような正当化が許されないわけではないだろうが・・・このバランスが難しいところである。

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指針案が正式公開(2001年8月)
 「労働者の募集及び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることについて事業主が適切に対処するための指針案」が発表された。やはり新聞報道や原案段階よりは、数段詰められたものとなった。この案にどれだけ変更が加えられるのかが、さらに動向を見守りたい。第3-4についてのパブリック・コメントを送っておいた。

(以下をご覧になるときは、フォントサイズを大きくするか、テキストコピーをご利用ください)
第一 趣旨
 この指針は、雇用対策法第七条に定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、我が国の雇用慣行、近年における年齢別にみた求人及び求職の状況、特に中高年齢者の再就職をめぐる実態等を考慮して、必要な事項を明らかにするとともに、事業主が労働者の募集及び採用について講ずべき措置について定めたものである。

第二 事業主が労働者の募集及び採用に当たって講ずべき措置
 事業主は、労働者の募集及び採用に当たって、次に掲げる措置を講ずるように努めること。
一 第三に該当する場合を除き、労働者の年齢を理由として、募集又は採用の対象から当該労働者を排除しないこと。
二 事業主が職務に適合する労働者を雇い入れ、かつ、労働者がその有する能力を有効に発揮することができる職業を選択することが容易になるよう、職務の内容、当該職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能等の程度その他の労働者が応募するに当たり必要とされる事項をできる限り明示すること。

第三 年齢制限が認められる場合(労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められる場合以外の場合)
 事業主が行う労働者の募集及び採用が次の一から十までのいずれかに該当する場合であって、当該事業主がその旨を職業紹介機関、求職者等に対して説明したときには、年齢制限をすることが認められるものとする。
一 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、新規学卒者等である特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合
二 企業の事業活動の継続や技能、ノウハウ等の継承の観点から、労働者数が最も少ない年齢層の労働者を補充する必要がある状態等当該企業における労働者の年齢構成を維持・回復させるために特に必要があると認められる状態において、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合
三 定年年齢又は継続雇用の最高雇用年齢と、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要とされる期間又は当該業務に係る職業能力を形成するために必要とされる期間とを考慮して、特定の年齢以下の労働者を対象として募集及び採用を行う場合
四 事業主が募集及び採用に当たり条件として提示する賃金額を採用した者の年齢にかかわりなく支払うこととするためには、年齢を主要な要素として賃金額を定めている就業規則との関係から、既に働いている労働者の賃金額に変更を生じさせることとなる就業規則の変更が必要となる状態において、特定の年齢以下の労働者を対象として募集及び採用を行う場合
五 特定の年齢層を対象とした商品の販売やサービスの提供等を行う業務について、当該年齢層の顧客等との関係で当該業務の円滑な遂行を図る必要から、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合
六 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合
七 労働災害の発生状況等から、労働災害の防止や安全性の確保について特に考慮する必要があるとされる業務について、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合
八 体力、視力等加齢に伴いその機能が低下するものに関して、採用後の勤務期間等の関係からその機能が一定水準以上であることが業務の円滑な遂行に不可欠であるとされる当該業務について、特定の年齢以下の労働者について募集及び採用を行う場合
九 行政機関による指導、勧奨等に応じる等行政機関の施策を踏まえて中高年齢者に限定して募集及び採用を行う場合
十 労働基準法等の法令の規定により、特定の年齢層の労働者の就業等が禁止又は制限されている業務について、当該禁止又は制限されている年齢層の労働者を除いて募集及び採用を行う場合

第四 その他
一 この指針は、事業主が募集及び採用に当たって、適切に対処するために必要な事項を明らかにするとともに、事業主が講ずべき措置について示すものであり、広く事業主その他の関係者の理解が深まるよう周知徹底が図られるものであること。
二 この指針は、あくまでも現下の社会経済情勢等を踏まえて定められたものであり、今後、必要があると認められるときは検討が加えられ、その結果に基づいて必要な見直しが図られるものであること。

以上である。

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雇用対策法の指針(2001年7月)
 ここでも紹介した改正雇用対策法において例外となる指針10項目が明らかとなった。7月12日の朝日新聞1面によれば、以下の場合に、年齢制限が認められるという。
(1)長期雇用を前提にした新卒採用
(2)技能承継のため従業員数が少ない特定の年齢層を補充する
(3)定年まで働ける年数を考えると、能力を発揮してもらうのが難しい
(4)年功賃金なので、賃金が割高になる
(5)特定の年齢層を対象とする仕事
(6)子役など年齢が条件になる
(7)労災などを防ぐために年齢を限定
(8)高齢による体力や視力の低下で業務遂行が難しい
(9)政策上、中高年限定で採用する
(10)労基法で特定の年齢層の就業が制限
 詳細な検討は正式発表後に譲るが、(3)(4)は基準自体が不明確であり、「骨抜き」指針という同新聞の見出しも的外れとはいえまい。特に賃金体系と年齢差別との関係は、私個人としても注目しているテーマであり、アメリカにおける議論との比較を試みたいと考えている。

*このテーマに関連する論文、柳澤武「賃金コストを理由とする解雇・採用拒否と年齢差別 ――アメリカADEAにおける判例法理を手がかりに――」季刊労働法201号172頁(2002)を公表しました。(2003年追記)

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『サンデー毎日』のコメント(2001年6月) ここをクリックすると掲載写真が出ます
 半分私事で申し訳ないが、年齢差別についての私のコメントが『サンデー毎日』2001年7月1日号に掲載された。遠い昔にラジオ出演(高校時代に音楽番組にて。純朴な少年にプロのミュージシャンになれるのではという巨大な勘違いをさせた罪なON AIR。)した経験を除外すれば、これがマスコミ初デビューである。紙幅の都合で直前にカットされたコメントなどもあり、もったいないので、ここに追記させていただきたい。以下がカットされた(涙)コメントの一部である。
 (1)「企業へのペナルティーといいますと、懲罰的損害賠償というのが有名で・・・映画なんかでも良く出てくるアレですが・・・これが性差別や人種差別では、認められる場合があります。しかし、ADEAにおいては、この類型の損害賠償が認められません。」「とはいえ、企業にとっては雇用差別訴訟を起こされるというだけでイメージダウンもありますし、和解という手段においては多額の金銭賠償を行う場合が少なくないようです。」
 (2)「柳澤さんは、こんなエピソードを紹介してくれた。ある米国系航空会社が客室乗務採用に体重基準を課したところ、統計的に体重は加齢とともに増えるものだから年齢差別にあたるという訴訟が起こされた。結果は原告の敗訴に終わったというが、30年前に法整備を終えたアメリカと日本では、意識にこれほどの開きがあるのだ。」
 (3)「(このような点からも、)『雇用差別』禁止法であるという点を看過してはならないと考えます。最近の議論は、どうも政策的な側面に偏りすぎているように思います。」

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雇用対策法改正(2001年4月)
 先のニュースで紹介した雇用対策法改正が4月18日に成立、4月25日の官報に掲載された。官報によれば、7条は「事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときは、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならない。」と規定する。当初の情報どおり努力義務にとどまったわけで、かつ、前半部分の微妙な言い回しが気になるところである。旧雇用機会均等法の努力義務規定が効果を期待できなかったことに鑑みれば、やや冷めた目で眺めざるを得ない。

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イギリスでも?(2001年2月)
 2001年2月17日の朝日新聞6面によれば「イギリス政府が男性65歳女性60歳となっている定年退職年齢の撤廃に向けて検討を始めた。ホッジ雇用担当相が14日、下院の委員会で明らかにした。」とのことで、同担当相によると、「雇用にあたって、宗教、年齢、障害の有無、性的指向を理由に差別することを禁じたEU基準に応じて、2006年までに英国内法の改正を目指す」そうである。ちなみに、見出し文句は「定年制なくなる時代」。
 日本を含め、これまでは雇用における年齢差別を特に問題としてこなかった国々が、急速に動き始めた。これからの動向が、ますます注目される。
*寺田博「イギリス年齢差別禁止の動向 ―行為準則から立法へ―」高知短期大学 社会科学論集83号271頁(2002) がフォローしています。(2003年追記)

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雇用対策基本法に努力義務(2001年2月)
 2001年2月6日読売新聞に、見出し記事として「厚生労働省の『労働政策審議会』(西川俊作会長)は2月5日、企業が採用条件に年齢制限を設けないよう、努力義務を盛り込んだ再就職促進一括法案の要綱を、坂口厚生労働省に答申した。中高年の再就職を支援するのが狙いで、同省は今年10月の施行を目指し、今国会に雇用対策法改正案を提出する。しかし、法改正の実効性に疑問の声が出ているうえ、将来は終身雇用、定年制の見直しにつながる可能性もあり、雇用と年齢をめぐる議論の行方は不透明なままだ。」と掲載された。
 続く本文中では、働き盛りの会の兼松信之代表の「年齢だけを理由に門前払いをするのは理不尽・・・年齢制限は撤廃すべき」というコメントに続き、森戸英幸先生(成蹊大学)、そして清家篤先生(慶応大学)、といった各界の第一人者のコメントが続く。立場上、ここ(ネット上)で各コメントに対する私見を述べることは反則気味なので差し控えたい。ただ、一般誌レベルでも様々な論点が議論の対象となったことは歓迎すべきことである。

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紹介予定派遣制度で年齢制限の禁止(2000年10月)
 2000年10月29日日本経済新聞によれば、「派遣社員として働き、能力が認められれば社員として雇用される『紹介予定派遣』が十二月一日から解禁されるのを前に、労働省は求人企業がこの制度を利用して人材を募るさいに年齢制限を設けるのを禁止することを決めた。」とのこと。
 かなり限定された場面であるとはいえ、求人(に近い)段階において年齢制限の禁止が盛り込まれたことは注目に値しよう。すでに、労働判例でも年齢差別を争点の一つとして争うケースが増えてきており、年齢差別をめぐる関心は急速に高まりつつある。このまま一気にブレイクか!?

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