| 448.ペンタゴン石 Pentagonite (インド産) |




カバンシ石とペンタゴン石は Ca(V4+O)Si4O10・4H2O を組成に持つ同質異像の兄弟である。
希産のバナジウム酸塩鉱物だが、今のところプーナ郊外のワゴリ村からどんどん供給されている。この村では1988年にカバンシ石の(再)発見があり(⇒鉱物記 フラグメンツ)、ペンタゴン石は98年になって初めて確認された。市場に流通し始めたのは2001〜2002年頃からだから、インドでは前者が兄である。
No.444で触れたように、プーナの周辺はデカン高原のほかのエリアに比べてバナジウムの濃集が顕著だが、そのわりにバナジウムを主成分とする鉱物はこの希産の2種以外に出ていないのが面白い。両者の区別は難しいが、多くの鉱物愛好家はなんとなく結晶の形や産状で識別出来ているように思う。束沸石を伴うかどうかが間接的な目安になる。
ペンタゴン石はモルデン沸石と共存し、また別の産地では輝沸石を伴うこともあるが、束沸石を伴う例はまだ知られていない。一方、カバンシ石は、輝沸石が生成した後、束沸石と一緒に(熱水から)析出するのが普通の産状だ。カバンシ石も稀にモルデン沸石を伴うとされているが、これはペンタゴン石の双晶である可能性が高いとも言う。
原産地のアメリカ・オレゴン州には兄弟同舟する例が知られ、この場合、カバンシ石は双晶せず、ペンタゴン石はほぼつねに双晶で発見されて、見かけがよく似ている。そこで、ワゴリ村産のモルデン沸石付き標本も、形はカバンシ石に見えるが、実はやはりペンタゴン石が双晶したものなのでは?というわけだ。インドではカバンシ石の大量発見後も、10余年間ペンタゴン石が確認されず、「米国防総省(ペンタゴン)の威光か、ペンタゴン石はアメリカでしか見つかっていない」と言われてきた。今や権威は失墜したが、両者が共存する標本は、最近までほとんど市場に出なかった。2番目の画像はその「珍しい」共産品とされるもので、今年の夏、某店のフェアで薦められた。秋の京都ショーではインド人の業者も何点か出していたから、今後、流通が拡大するだろう。
ただ、上述の考察を適用すると、カバンシ石の部分はペンタゴン石の双晶である可能性もありそうだ。右側のペンタゴン石単結晶より巨大に成長しているため、なおさらそう思われる。
とはいえ、そのあたりは標本商さんもしっかり確認されているはずだが。ペンタゴン石は5稜星の形に双晶することがあって、それが名前の由来になっているらしい。標本は「2001年鉱物の旅」さんに、ヨダレものが紹介されているので、そちらをご参考に。
cf. No.28, No.32 カバンシ石追記:近年、鉱物標本全般で価格高騰が著しいが、この1、2年ほどの間でカバンシ石までが異常な値上がりを来していることに気づいた。ワゴリにはかつて複数のカバンシ石を産する石切り場があったが、次第に閉山を迎えているらしい。将来は希少化してゆくのかもしれない。(2015.12.3)