199.菱鉄鉱   Siderite (ドイツ産ほか)

 

 

菱鉄鉱−ドイツ、ジーゲルランド産

透明感のあるへき開−ポルトガル、ポナスケーラ産

菱面体の結晶 -ボリビア、タンザ鉱山

 

 

ヨーロッパでは有史以来、簡素な鉱炉で木炭と鉄鉱石を燃やし、ルッペと呼ぶ半溶状の鉄を作ってきた。その流れが大きく変化したのは14,5世紀のこと。ライン河の支流ジーグ河上流にあるジーゲルランドに築かれた高炉が製鉄法を一変させた。ここは古くから製鉄の行われた土地で、一帯に産出する菱鉄鉱は多量のマンガンを含み、優れた鉄(鋼)の原料とされていた。菱鉄鉱は鉄の炭酸塩(FeCO)で、酸化鉄である赤鉄鉱や磁鉄鉱と比べると精錬が容易である。おそらく人類が最初に利用した鉄鉱石だったろう。
水車を利用したフイゴからの強力な送風と高いシャフトを組み合わせた高炉は、より高い燃焼温度と反応速度をもたらした。還元された鉄は十分な炭素を吸収して融点が下がり、炉の羽口から灼熱の光を放つ鉄が流れ出した。ヨーロッパが初めて知った溶けた鉄(銑鉄)であった。

本鉱は方解石と同じ結晶構造を持ち、完全なへき開を示す(下の画像参照)。菱面体の結晶を作るより、上の標本のように葉片状になることの方が多い。結晶の稜は曲がっているのに、割ると直線状に砕けるのが不思議だ。生成は還元的な環境、中性〜アルカリ性の条件下で生じ、地表にあって環境が変化すると、分解されて褐鉄鉱化する。

cf. No.390 球状菱鉄鉱

cf.イギリス自然史博物館のChalybite標本(コーンワル、ウィール・モードリン産 葉板状菱鉄鉱)

 

 

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