うきたむ風土記の丘、第6回企画展
」97年10月26日
小林達雄氏の講演を聞くため山形県高畠町の山形県立「うきたむ風土記の丘」考古資料館に行ってきた。
「うきたむ」という言葉は、日本書紀に登場するこの地方の地名「陸奥国優嗜雲(うきたむ)郡」からとった名で「流動する湿地帯」を意味するアイヌ語だという。その言葉のように近くには白滝湖、蛭沢湖があり低湿地帯遺跡の押出遺跡がある。
また草創期の洞窟遺跡が数多く点在し、古くから人々が住んでいたことを窺わせる。なかでも日向洞窟の調査は1955年にはじまり、草創期の土器群の発見で山内清男らの参加を得るなど話題となった遺跡である。また押出遺跡からは高度な生活様式を窺わせる彩漆土器など数多くの遺物が見つかり、1996年に重要文化財の指定を受けている。
資料館ではそれらを中心に高畠町周辺の出土品を展示しているほか企画展などを行っている。
この日はあいにくの雨で気温もグーンと低く季節の変わり目を感じる一日であった。好天なら押出遺跡、日向洞窟の写真を掲載できたのだが残念である。
企画展では米沢市の一ノ坂遺跡と台ノ上遺跡の出土品を見ることができた。御存知のことと思うが一ノ坂遺跡は43.5mのロングハウスで話題となり今年国の史跡となった。出土品の土器と石器はその時に一度拝見しているので懐かしく思った。
台ノ上遺跡の赤褐色の土器が印象的であった。かなり小さな破片となって出土したようだが、大木8b式の渦巻文から延びる緩やかな曲線が異常にしっかりと長くバランスよく施文されている。大胆な構図で力強さを感じさせる土器であった。
「縄文文化の魅力」をテーマにした講演は、縄文文化の原風景を解説するもので会場を埋め尽くした参加者達は熱心に聴き入っていた。講演のなかで子育てにおける祖父母の役割、核家族化する現代社会での子育ての難しさに触れ時代を対比した興味深い話を聞くことができた。
近年の発掘は縄文の原風景にだいぶ原色を深めてきたといえる。時代を駆け抜けた人々の確かな軌跡が少しずつ見えてきたようだ。
講演後は縄文食の試食会となって縄文の里は秋を深めたのであった。
|