クリスマスプレゼント


ポニー先生
レイン先生

きっと今ごろは、クリスマスバザーのために焼くクッキーの匂いが<ポニーの家>中に漂っているんだろうなぁ、とこのカードを書きながらなんだか深く息をすいこんでしまいました。先生たちが焼いたジンジャークッキーは世界一です!
毎年、この季節になるとわたしもクッキーを焼くお手伝いしましたね。……っていうより邪魔してたみたいだけれど、楽しかったなあ、あのころ……

ポニー先生、レイン先生、きょうはとってもとっても、ステキな事があったんです!
ああ、ポニー先生とレイン先生にカードを書く日にこんなステキなことがあるなんて!
先生たち、スタイントンさんの<クリスマスファーム>覚えているでしょう?
もみの木を育てていたファーム。いつもクリスマスシーズンは大忙しでもみの木を積んだ馬車が行ったりきたりするのをアニーとポニーの丘から見下ろして楽しんでいました。
スタイントンさんは無口で顔はごついけれど、みかけと違ってやさしいひとでしたね。
毎年、ポニーの家にツリィーをくださいましたね。
「これは売りもんにならんから持っていけ」とぶすっと言って、そのくせとっても枝振りのいいもみの木をくださっていました。クリスマスにはいつも、わたしとアニーがスタイントンさんのところにジンジャークッキーを届けていました。
アニーがいなくなった年でしたね。スタイントンさんが突然亡くなったのは…。
クリスマスファームも人手にわたる、と聞いたときは悲しかった…
もみの木がどんどん抜かれていくのを見ていられなかったわたしはたまらず出かけていって、「おじさんたち、やめて! スタイントンさんが大切にしていたもみの木なのよ!」
訴えましたが…子供のいうことなど誰も聞いてはくれませんでした。
どんどんもみの木がはこばれていって・・途方に暮れたわたしがぼんやりと、その場にしゃがみこんでいたとき、足元で小さな声がしたのです。
「…ボクをたすけて」
はっとして見ると、そう言ったのは小さな小さなもみの木の苗木でした。
わたしはびっくりして、その苗木をみつめました。
「ボク、大きくなりたいんだ、でも、このままだと刈り取られてすてられてしまう!」
小さな苗木のいうとおりでした。クリスマスファームの後はポテト畑になることが決まっていたのです。
わたしは息を吸い込んで、その小さなもみの木に小声で話しかけました。
「どうしたらいいの? どうしたら、あなたのことたすけられる?」
「そっと、ボクを植えかえて・・場所はボク、もう決めてあるんだ」
わたしはうなずくと、おじさん達に気がつかれないように小石を見つけ小さなもみの木を根っこから起こしました。
そして、小さな苗木の願い通りスタイントンさんの家の裏庭に植え替えたのです。

わたしはその小さなもみの木を<リトル・ボーニー>と名付けました。
アニーがいなくなった後のわたしの友達……先生達にも、話していなかったの……
小さなやせっぽちのもみの木、<リトル・ボーニー>…
スタイトンさんのことが、大好きだった<リトル・ボーニー>…
でもね、この名前がリトル・ボーニーは不満だったようです。
「キャンディ、ボクはいまにきみより大きなもみの木になるんだよ!スタイントンさんも言っていたんだぞ!、‘こいつはきっとでっかくなるぞ!‘ってさ、」
「わたしだって、大きくなるわ!」
リトル・ボーニーとそういって笑いあったのが、最後でした。
わたしは急にラガン家に引きとられることになりリトル・ボーニーにお別れさえ言う暇はありませんでした。
そして……ポニーの家に戻ったとき…スタイントンさんの家もなくなり、<リトル・ボーニー>も消えていました。
大きな大きなポテト畑が広がっているだけでした。
ポニーの丘の上に立って、わたしは<リトル・ボーニー>のことを考えていました。
(わたしがここにいたなら、たすけられたかもしれないね、リトル・ボーニー……)

ポニー先生! レイン先生!
その<リトル・ボーニー>に、きょう、会ったのです!
街でいちばん大きなデパートの前でした。毎年、クリスマスにそのデパートの前には<特大のツリー>が飾られます。
夕暮れでした。
クリスマスキャロルが流れる中、その前を急ぎ足で通りかかったとき……
「キャンディ!  キャンディじゃないか!」
突然、呼びかけられてはっと立ち止まりました。どこかで聞いた事のある声…
記憶の底に沈んでいた声……でも、思い出せない…だれ・・??
その時、また、おかしそうにその声がささやきました。
「ボクだよ! ほら、スタイントンさんの・・」
「リトル・ボーニー!!??」
わたしは人目も気にせず大声を上げて、デパートの前の大きなツリーを見上げました。
たわわにオーナメントの実をつけた堂々とした立派のもみの木____
「シッ!相変わらずだなぁ、キャンディは」
リトル…ではなく<ビック・ボーニー>がわたしを見下ろしてクスクス笑っています!
「おっ、おっきくなったねえ…」わたしが感激して見上げると、「ちっとも大きくならないねぇ、キャンディは」
<リトル・ボーニー>は憎たらしい事をいいました。
わたしたちは、早口でこっそりと近況を話しあいました。
<リトル・ボニー>はわたしがポニーの家を去ってから、どんどん大きくなって別のクリスマスファームに引きとられたそうです。
「そこでいちばん立派なもみの木になったんだよ!今度のクリスマスが終わったら、カナダの自然公園に選ばれて植えられるんだぞ!」
リトル・ボーニーは自慢そうにいいました。
「すごいじゃないの! わたしはねぇ、これでも看護婦になったのよ!」
わたしも少しいばっていいました。
リトル・ボーニーとはもっと話したい事がありましたが、病院にいく時間が迫っていたので、これからクリスマスが終わるまで毎日会いに行くことを約束しました。
ずっと気になっていたこと。
リトル・ボーニーにさよならも言わずにお別れした理由もやっといえます。

ポニー先生、レイン先生、
先生たち、いつも話してくれましたよね。
忘れずに思っていたら いつか、きっと思いは通じるって…
ああ、こんなところでリトル・ボーニーに会えるとは思ってもいませんでした。
なつかしいスタイントンさん、そしてポニーの家のみんな…小さかったあのころのクリスマスが戻ってきたようでした。
なんだか神様からすてきなプレゼントをもらった気分です。

ポニーの丘はもう雪が積もっているでしょうね。
もうすぐプレゼントが届くと思います。楽しみに待っててね!


               愛をこめて メリークリスマス!
                        キャンディス・W・アードレー


PS
     MERRY  CHRISTMAS !
     わたしのことを心配してくださる  みなさま!

                        キャンディより


(C) Keiko Nagita