「オール・アバウト・マイ・マザー」へ

 

 シベリアの理髪師  

   監督:ニキータ・ミハルコフ
   /出演:ジュリア・オーモンド/
       /オレグ・メンシコフ/リチャード・ハリス/
アレクセイ・ペトレンコ/他
       1999年/フランス.ロシア.イタリア.チェコ合作

  やっと、ビデオ屋で見つかって(笑)早速 堪能しました。
  帝政ロシア末期の意外と雄大でかつ明るい感じ。
  士官学校生の軍隊行進さえ
 軽やかでユーモラスで明るくリズミカルに感じるのは
 監督の目?!?!?!

  さらに、祭り等を通し、人々の明るさ、たくましさ、ユーモアが
広い大地の重い画面に漂って、
 今のロシアの人々の状況を想像させる何かがあるようで、
 結構、映像にくぎ付けになった。

  その祭りの一つ「パンケーキ祭」がエネルギッシュで、
含蓄があって、独特で、
やはり、ヨーロッパともアジアとも違うんだなと、改めて思った。

  1905年、マサチューセッツ州のアメリカ軍青年教練場?で
 訓練を受けている青年の
 「私の母の身の上に起こった出来事」と言う
ナレーションで始まる映画。

  舞台は1885年、ある任務?で、
 美しい女性がシカゴからロシアへ旅立った。
  その旅の列車の中で
 士官学校生の明るい青年=アンドレ・トルストイ達に出会う。
 彼はモーツアルトのオペラ「フィガロの結婚」で
 セヴィリアの理髪師=フィガロ役をするという。

  彼女の任務とは、
マクラカンという、
シベリアの森林伐採の為の機械作りに
全てをかけた夢見る変人男!(悪いやつではない)に
 資金調達の手段として雇われ皇帝たちに近づく役目だった。

  発明家?マクラカンは木を伐採するその夢の機械を
 「シベリアの理髪師」と呼んでいた。
  それで、この映画のタイトルが二つの意味の
”理髪師”を賭けているのが
 わかった。

  ジェーン自身の目的(ロシアまで来た)が何であったのか、
 単にお金であったのか、
 もっと違う野望があったのかハッキリとは解らなかったけど、
 愛とそして別の野望を賭け、人生そのものにし返すつもりが
 アンドレの若い一途な嫉妬によって、逆にわが身に跳ね返り、
 その苦い人生を引き受けていかねばならなかった......
 という映画でもある。
 (あのナレーション的青年は○○○○の子だったのね....)

  アンドレ役のオレグ・メンシコフの
目と甘い雰囲気のマスクが
 士官候補生の一本木でやんちゃで懸命な青年を
よく表現していたと思う。
  一緒に寄宿する仲間たち、
上官の愛情が画面いっぱいあふれていて、
 ロシアの士官学校って こういう熱いものなの?!って
不思議な感動!

  これはロシア人の、
映画を見る者達への祈り、希望かな??とも思えた。
  日本の戦中軍隊のように陰湿で暗くないところは
 やっぱり救いだ。
 
  ロシア的大自然も感じられ、
 その気候の厳しさと人の心理が、
 ドストエフスキー等の重さ、
 チャイコフスキーの重さ(あくまで、私の感じですが)と違い、

 モーツアルトの深い軽快さがあるようで、
 ロシア大ドラマとして楽しめる大人の作品だと思う。
           2001.6.28.夜ビデオ鑑賞

 オール・アバウト・マイ・マザー  

監督&脚本:ペドロ・アルモドバル /
    出演 :セシリア・ロス / マリサ・パレデス /
ペネロペ・クルス / カンデラ・ペニャ / アントニア・サン・フアン /
ロサ・マリア・サルダ
    1999年スペイン作品/カンヌ映画祭監督賞受賞作品
           (2001.7. wowowにて録画鑑賞)

 見終わってとっても気持ちよく心が潤った感じがする映画。
スペイン風土を土台に大人の女の懐の深さ、
子を失った悲しみの奥行き、
愛を求め傷つきつつ、内なる自分を掘りさげていくさまが
それぞれの人物にうかがえて
心地よい。

 主人公マヌエラは移植コーディネイターをしながら
一人息子エステバン(17才)と暮らしている。
 ある雨の日、小説家志望の息子と
「欲望という名の電車」の舞台を見に行き、
母のような女優ウマのサインが欲しくて
車に乗り込んだ彼女を追いかけ、
後続の車にひかれ、脳死状態に。
 数週間後、息子の臓器提供をうけた人を
木陰から密かに追随するマヌエラ。
 どうしても割り切れない、
整理できない気持ちを前に仕事を辞め、
息子のノートを抱え、
辛くて逃げ出してきたはずの夫のもとへ(捜しに)出かける。
それは、息子と二人三脚の旅でもあり、
もう一度人生を振り返って生きる旅でもあった.........。

 そこで出会った女たち.......。
 ボランティア活動に精を出す修道女の少女、
息子の好きだった女優ウマ、
その愛人たる新進女優のニナ、
女より細やかな気持ちの(実際、手術で胸を膨らませ)でも
あそこは男のままの個性的アグラード.........。
 みんなそれぞれ、たくましくも繊細で、一生懸命のイイ女たち。

最後のクレジットに監督メッセージで
1999ハリウッド映画ウィラード・キャロル監督作品
「マイ・ハート・マイ・ラブ」の
ジーナ・ローランズやショーン・コネリーに捧ぐってありましたが、
これ(「マイ・ハート・マイ・ラブ」)も華やかで
ハリウッドらしくも、繊細なおもしろさがあります。

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