ロルカ、暗殺の丘 
監督:マルコス・スリナガ/原作:イアン・ギブソン/
 出演:イーサイ・モラレス/アンディ・ガルシア/
    ジェローンクラッペ/他
   1997年スペイン・アメリカ合作

  なんか心がグッと引き込まれ、臨場感ある映画でした。

  スペインの天才詩人で劇作家の「ガルシア・ロルカ」1898−1936 
 役を演じたアンディ・ガルシアが、
えっ、こんなに素敵な人だった??って惚れなおしてしまうほど
 繊細でアナキーでナルシストなロルカになりきった
 ロルカをこなしきって提示してくれたような演技でした。

  1936年、スペイン内戦が勃発し、フランコ率いる体制派が勝利し、
 何千何万とも言われる国民が殺されたといわれ、ロルカの死もその中の一人といわれている。
 この映画はロルカの死の真相を探りながら
 自由な空気が死んでいったスペイン内戦後の国民みんなの心の闇を解き明かす映画でもある。

  14才のリカルド少年はロルカの「イェルマ」という道徳観を揺さぶる前衛的な芝居を見に行き、
 そこの楽屋でロルカの本を持っていって彼にサインをしてもらう。
 「大きくなったら作家になりたいの?僕を忘れないで」と声をかけられたこと。
 混乱(内戦)が始まり、一緒に芝居を見に行った友人=ホルヘと二人、
 興奮した町中、ロルカを探しながら見に出かけ、流れ弾でホルヘは命を落としてしまう。

  この事柄がのち、一家でプエルトルコへ逃げてからも彼の心を占め、
 作家として、ロルカ暗殺の事実を書き留めたいと、
 まだ独裁制の続くスペイン・グラナダへと足を運んだ・・・・・・
  フランコ独裁政治下、沈黙を守り続けたスペイン国内。

  フランコ政権側も、主にアメリカに「スペイン自由の死=ロルカの暗殺」を
 クローズアップされることはなんとしても避けたく、リカルドの調査を妨害していく。
 画家のミロやダリと並ぶ文化人の象徴でもあるロルカの暗殺の真相を
 調べるのは容易ではない。
 襲われ殴られ、脅されながらも、リカルドは過去の清算、
 死んだ友人ホルヘの罪意識、そして、
 民族の誇りの為にもどうしても真実を知りたい。

  内戦勃発時と調査時の年代が交差し、不穏な空気が映像の中を漂い、
 見るものも不安な中、
 ロルカ役のアンディ・ガルシアが心の詩を全身で吐き出し、読み上げる。
 
   少年が白いシーツを運ぶ 午後の五時
   群衆が窓という窓を割る  午後の五時
   なんという無惨な    午後の五時
   ・・・・・・・・・・・・・    午後の五時
   あらゆる時計が五時だった・・・・・・・・・・・・・・・・

 
  心がうるうるぶるぶるする場面でした。
 友人たちに
 「何故グラナダに戻ったの!危険だ!すぐ出ていった方がよい」
 そう忠告されながらも、
 「一度逃亡したからもういやだ」というロルカの詩人としての魂と自己の尊厳がよく解る。
 たとえ死が迫っているとしても・・・・・・たとえ怖くても・・・・ってことが・・・ 

 最後の誰の手で撃たれたかの謎の解き明かしは、迫り来るもののある脚色でした。
                        (2001.02.012録画ヴィデオにて)

 小説家を見つけたら  
 
   監督:ガス・ヴァン・サント/脚本:マイク・リッチ
   出演:ショーン・コネリー/ロブ・ブラウン/
   F.マーリー・エイブラハム/アンナ・パキン/他

  現在のニューヨークシティーの上質な部分をすくい上げた
 品のある落ち着いた映画で、ハリウッド映画らしい華やかさの中に
 もがきつつ生きる真摯な人々の魂が前向きに描かれ、16才の高校生シャマール役の
 少年の瞳がとっても綺麗で鋭く、自分も躍動感ある青春時代の気持ちになったり、
 老齢の作家の気持ちになったり(笑)で
 とっても楽しめました。

  若い頃、処女作でピューリッツアー賞を受賞しその後文壇から消えた
 伝説の隠遁作家で偏屈で自分の世界にこもっている爺さんを
 ショーン・コネリーが演じるとなかなかセクシーです。
  私の好きなオーソン・ウエルズが生きていてこの役を演じたら
 どんな感じだろう??なんて思いながら見ていました。(笑)

  人は閉じこもったまま黄昏を迎えることもできるけど、
 機会さえあれば、出会いさえあれば、若い誰かを育ててみたいって、
 本能があるのかもしれない・・・・・・・

  ハーレム地区の貧しい黒人の高校生。
  友だちとバスケットに明け暮れながらも、
 読書が大好きで、そんな自分の心の内は誰にも見せない。
 とっても魅力的な母親にも、話す会話はバスケのことだけ。

  そんな彼の生真面目さをどこか見抜いている仲間たちに
 けしかけられて、
 いつものバスケットの練習場近くのアパートに住んでいる、
 いつも窓から双眼鏡で外を覗くだけで、
 食べ物、日用品等は正体の分からぬ青年によって月1回ほど
 まとめて届けられるだけで外にでない老人の家に押し入る・・・・

  これがきっかけで、二人の奇妙であぶなっかしい、それでいて真摯な
 求めあうような交流が始まる・・・・

  下町ブロンクスとマンハッタンという都会のコントラストが鮮やかで
 映像が内面も描写している感じで結構お薦めできる作品だと思う。
  学力テストの成績がよくてシャマールは私立学校へ奨学生として引き抜かれるのですが、
 その学校の厳格で古いタイプの教授役を演じる「F・マーリー・エイブラハム」が
 屈折した哀しいほど古い意固地な教授の心の襞を微妙に顕わして、この映画を締めていました。
                      2001.3.18.映画館にて鑑賞

 スイート・スイート・ビレッジ  

 監督:イジー・メンツェル 脚本:ズデニエク・スベラーク
 撮影:ヤロミール・ショルフ
 1985年チェコ作品
  BS放送で観たのですが、まず風景にキャンパスから現れたような
 旅行がしてみたくなるような色もアングルも引き込まれるものがある。
 
 社会主義体制の中、プラハ近郊?の
 ある「美しい景色の村」で生活する人々を
 少し「精神遅滞」の青年を中心にそれぞれが個性豊かで
 生き生きとあったかく描かれた、たいへんおもろい!goodな作品でした。

 監督と脚本家とカメラマンの目が熟成している感じがした。
 政治情勢に疎いので・・・・・なんですが、
 チェコとスロバキアがわかれる前(民族紛争前)の作品ですよねぇ。
  のっぽの「オチク」青年役のヤーノフ・なんたら言う人の演技も笑顔も良かった!
 彼を疎ましく思いつつも5年も彼を助手に付き合う運転手パベクさんも、こんな人もいいなあと思った。
 毎朝この凸凹身長の二人が並んでトラックまで
 (オチクが足をパベクにきちっと必ず合わせる)歩く姿がなんとも
 いえず、絵になる。
 
  美しい自然を謳って、いろんな人生模様があるけれど
 こういう所に住んでいれば 乗り越えられるものがある!?って感じかな。

  村で一人の初老の医者がいるのですが、勤務評定なんか無視した
 この土地の風景をこよなく愛する詩人のようなおっさん。
 「村は田舎じゃない。』緑の大庭園だ。心があればそう感じる」
 そんな風な言葉を吐露していた。
 
 プラハのような都会じゃなく、田舎がいいって言うよりもっと深い
メッセージをもらえるし、たのしい映画。

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