ダンサー・イン・ザ・ダーク 

ラース・フォン・トリアー監督・脚本: /音楽:ビョーク/
出演:ビョーク/カトリーヌ・ドヌーブ/デビッド・モース/
ピーター・ストーメア/他    
2000年デンマーク作品/
2000年カンヌ、パルムドール主演女優賞(ビョーク)
(↓パンフレット写真の一部抜粋(-"-;))

 ビョーク=セルマって感じで、
全身すべてセルマその者になりきったシンガーのビョークが、
その目と口元の表情が、
最高に素敵で、厳しく切なく、愛らしく、
魂にびんびん響く!!秀逸の作品でした。
 チェコからアメリカの片田舎へ移民し、
工場のプレス工をしながら、息子を一人で育てているセルマ。
 弱視の彼女は、ミュージカルが大好きで自身もアマチュアミュージカル劇団での
練習を心の糧にしていた。

 工場で働く場面、危なっかしい夢見がちな表情と手つき。
心配そうにそっと見守り手助けする働く仲間で、
ミュージカル大好きなカトリーヌ・ドヌーブ演ずるキャシー。

画面が左右に大きく動いてぶれて何だか目眩がしそうになった私。
やがてセルマの夢想の世界がミュージカルになって始まると
ぶれないはっきりした画面の動きになる。
(工場で黙々と厳しい顔で働く工員達が
ミュージカルの場面では生気のある顔でうたって踊る場面は感動だった。)
その厳しい現実と夢想の繰り返しを見続けるうちに
自然に、彼女の必然的心の二面がクローズアップされて、
観る者の心ををビシビシ突き動かす。
「ミュージカルの中ではどんな悪いことも怖いことも起こらないのよ」
上手い演出だなって思った。

 遺伝性の目の病気が進行しほとんど見えなくなり、
息子の13才の誕生日を前に彼のための手術費用をあと少しだからとあせって内職等を
増やすセルマ。。。
この時期での手術を逃したら彼もいつかは失明してしまう。

優しい隣人に見えたはずのビル&リンダ夫妻の荒廃した心と仕打ち。。。

自分を慕ってくれるジェフに対しても「あなたはやっぱり見える世界の人」と
線を引き、孤高の人になっていくセレマ。

 どこまでもどこまでも昇華していくしかしかたないセルマの魂。。。

歌うときの顔の表情と声でその内面の透明感を伝えてくれるビョーク。
独房での静寂と孤独と恐怖は圧巻だった。
彼女を支える看守役の女優さんの抑えた演技も魅力だった。

ラース・フォン・トリアーとミュージシャンのビョークの世界が上手くスライドした
濃密で清く酷な生を詠いあげた傑作品です。

お正月、もう一度観ようかな。(2000.12.24)

 初恋のきた道(我的父親母親)  

監督:チャンイー・モウ/脚本:パオ・シー/
出演:チャン・ツィイー/スン・ホンレイ/
チョン・ハオ/チャオ・ユエリン/
リー・ピン/チャン・クイファ/
2000年ベルリン国際映画祭銀熊賞/ 中国・米合同作品

自然をとらえる映像が、とっても綺麗で、
場面転換もさりげなくそれでいて鮮やかで
心暖まる中国の良心とも思える作品。

プロローグ・エピローグのモノトーンと
若き日の両親の出会いの時代の鮮やか色のカラーの
対比が生きて、それでいて素朴でした。

作品の内容は
1950年代の中国のへんぴな田舎を舞台に
そこに初めて赴任してきた若い青年教師と
村一番の美少女の、村で初めての自由恋愛・・・
のラブ・ストーリー。

父の死で、都会から帰ってきた息子が
嘆き悲しむ母の一番の希望=
(町の病院から父の遺体を昔の習わし通り、
担いで家路をたどらせたい)をかなえていく。
それは思いもしなかった
両親の恋物語をたどることでもあった。

自分の中に芽生えた恋心に、全身全霊を駆ける若き日の母
「ディ」をおいかけ続けた映像だ。

可憐な少女、素朴な農民、なだらかな山々の緑、紅葉、
そして厳しい雪景色。白一色の中のわだち。
吹雪。馬車の砂煙。。。

そのどれもが中国版おとぎ話、夢物語のようで、
実際には厳しい自然と貧しさを前に、
無力に陥りそうな人間の魂と肉体の、
あえて、美しい無垢さだけをクローズアップさせることで、
観るものの心をふるわす。

少女役=チャン・ツィイーの美しさと笑顔は
何だか田舎の少女にそぐわない
女優として計算された表情に見えて気になったけど、
綿のいっぱいはいった服とズボンのかわいさ、
ひたすら走る、その外股気味の走りは素敵でした。

私が一番好きな場面は、
町に連れ戻される先生に
一口「キノコ餃子」を食べさせたくて、
一番好きな「青花」の器に入れ、走ってはしって追いつけず、
こけて割れてしまう鉢。
それを盲目の母親が少女の思いをくんで、
瀬戸物修理人に頼んで丁寧に金具で止めてもらって
もう一度生き返った器。
そこに込められた様々な想いが最高に温かく、心震えた。

モノクロの画面で
100人位の教え子たちを中心の担ぎ手が
吹き上げる地吹雪の中を家路に向かって歩く
映像も心にしみるものでした。    (2001.01.13朝日シネマで鑑賞)

同監督作品・「あの子を捜して」もすごーーく好きな作品です。
 

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