読みやすくて読み応えのある本でしたよ。 若者好みとも言われているらしいのですが、おばさんでも楽しめます。 今、中原俊監督の手で映画化もされ、上映中のようです。 (私は、ビデオ化待ち・・) 電源を入れ起動しはじめる瞬間のハードディスクの音が好きという、生の人間の感情に距離を置いて生きてきた 一人の有能で魅力的な女性が主人公。 彼女の 40を過ぎ、無職で引きこもりがちの兄が、餓死のような曖昧な自死をしたときから、 彼女の心身に異変が起き、今まで封印してきた新たな自我に出会うお話かな? 他人に大きな感情移入が湧かないから 友人も特になく、男もSEXする方がまだしも理解できると思っている。 だから、友人のような男=木村と寝てしまったとき、性格の素直さがたたずまいに表れているような清廉な人間は 気詰まりなのだ・・・といいながら、なぜか包み込むような親しさをもつとこなど、おもろい。 腐乱死体でアパートの台所で発見された兄。餓死にしろそういう自死にしろ、 私(主人公)自身も加担してしまったという深い想い、感じ、視える霊魂への繋がり方探し・・・ 防衛的で、プライドが高く、コンプレックスの塊でいやらしいほど自意識過剰だった兄に疲れ切っていたが、 なお、いかに彼を慈しみ、似たもの同士だったか、それを探り当てていくことで 全く違う自分に出会うプロセスを精緻な分析文章で読ませてくれます。 コンセントを探して・・・・この世界と協調する方法を捜して・・・ この本で一番気持ちがきゅーんとしたところ。 「地球の生き物はすべて風と共振して自らの音を出している」 この言葉に共振してから私自身、風の音や響きの中に 花や草、そしてそこに住んでいる人の 庭の置物からの気というか息吹を感じることが出来ました。 主人公のような切れ味のある感性ではもちろんないのですが、そして、 いったい何年生きているんや!って言われちゃいそうだけど、いくつになっても、人との間の取り方って とまどい、ちょっと考え込んじゃいます。 月並みだけど、 不器用だけど、誠意だけは忘れずに残りの人生を(^_^;)って思っています。 (2002.4.21) |