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□投機と投資□

 投資は推奨される行為で,投機は非難されるべき行為のような論調を耳にすることがあります.どちらも経済行為なのですが,市場メカニズムが機能する経済においては正当に存在する行為です.

 経済学ではリスクヘッジと投機(リスクテイク)を組み合わせて説明します.貿易をするメーカーなどで為替リスクをヘッジするために為替予約を行います.これは為替の先物取引ですが,当然先物取引市場が成立していなければ為替予約を行うことができません.積極的なリスクをとる=投機が存在していなければ,リスクに消極的な経済活動も成り立たないわけです.

 例えば,1ドル=120円の為替レートで採算を考えている製造業の企業が,製品を輸出したとすれば,決済時に1ドル=100円になってしまっては困るわけです.輸出した価格を米ドルで固定と考えれば,円高の進行により2割近くも手取りの円が少なくなる計算です.

 またその逆も考えられます.輸入食品を扱う商社が決済時に円安に為替レートが振れてしまえば,円建ての費用はかさむことになります.もちろん,為替変動を当然のものとしてリスクを受け入れるという方法もありますが,堅実に利益を確保するためには為替予約を行ってリスクヘッジを行うことになります.このような経済行為を成り立たせるためにも,投機は必要なのです.

 株価を乱高下させる仕手戦のような市場操作は犯罪ですから論外ですが,通常の取引における投機は決して悪者でもなんでもありません.

 国際的な大企業ともなれば,為替変動をリスクではなく,飲み込んでしまうような行動に出ることも可能です.英国に進出しているトヨタが良い例です.欧州通貨統合に参加していない英国ポンドは,ユーロに対して高くなる傾向が顕著です.そのため,英国で製造されたトヨタ車が欧州大陸で価格競争力をそがれる事態となっています.トヨタの対処法は,為替リスクのヘッジではなく,為替リスクそのものを部品メーカーに移転することでした.取引をユーロ建てにするというのです.これは,英国ポンドの通貨統合への参加を強く迫る行動と言えるでしょう.


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