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□北欧(2)

 さてアレンジの大変さはともかくも,結局どこに行ったのかを先に書くべきだったかも知れません。今回のテーマは,保育です。昨年度から手がけている厚生労働省科学研究の一環として,全面的に公費負担で保育サービスを保障している北欧の事情を調査するのが目的でした。ですから,訪問した先は保育所や幼児教育・保育に詳しい方が中心でした。

 まず最初に訪れたのがストックホルムです。ここでは地域コミュニティにある保育所や,とても少数派ではありますが専業主婦の人でも子どもと一緒に遊びに来ることができるオープン幼稚園などを視察しました。コーディネートしてくれた方は,子どもの遊ぶ権利を守る運動やオープン幼稚園の拡充に力を注いでいるBrian Ashley氏でした。大家族がだんだんと核家族になるとともに隣人との関係も薄くなり,育児の社会的サポートが不足しがちな現状に,何とか対策を講じたいという思いがはっきりと分かりました。日本でも,公園デビューなどという言葉があるように専業主婦が対処の仕方で地域の中で孤立してしまうケースがありますので,他人事ではありません。

 フィンランドの保育の特徴は,家庭で育児をするときの子ども保育手当の支給,公立保育園に通わせるときのサービス現物給付,私立保育園に通わせるときの補助金に引き替えられるバウチャーと3種類から選択できることです。しかも,育児を理由に休職するときには3年間の地位保全が認められています。他の北欧諸国とも違う点としては義務教育は6歳ではなく7歳からとなっています。

 ヘルシンキでは,社会健康省の調査研究機関であるSTAKESを訪問してブリーフィングを受ける予定にしていました。ところが,団体ツアーがキャンセルになったために先方の担当者が別の会議に出席する予定をいれてしまい,結局はヘルシンキ大学の教授を紹介してもらいました。Mikko Ojala教授は幼稚園教諭養成学部の教授で,幼児教育・保育に関するシステムに詳しい方でした。事前に英文の資料まで用意してもらったので,詳細を確認するのにも大変役に立ちました。ただ,政府出版物センターに行って捜しても,なかなか英文資料にはたどり着きません。スウェーデンでも肝心の資料が英訳されていないことはよくありますが,フィンランドでは英文資料の需要が少ないのかも知れません。急遽入れられたアポで,フィンランド在住30年,現在は日本で大学教員になられた山田真知子先生にお話を伺えたのは大きな収穫でした。

 ヘルシンキからは,ノルウェー第二の都市ベルゲンにオスロ経由で向かいました。ここでの訪問先は,スカンジナビア観光局の業務視察のリファレンスから,Study Norwayという業務視察アレンジの役所に依頼を出して決定しました。ただ,私の依頼の仕方がうまくなかったと後から反省しているのですが,"Child care scheme"について施設見学とインタビューをしたいと申し入れたら,児童福祉施設を紹介されてしまいました。"Child Daycare Center"を見学したいと言うべきだったのかも知れません。我々の一般的な表現としては,児童福祉なら"Child care for special needs"とするのですが,アレンジのコーディネータには通じなかったようです。挨拶として,保育について研究していると申し添えたのですがねぇ。

 ベルゲンの児童福祉施設は,0歳から11歳までを対象にしています。日本の同様の施設が18歳まで一緒くたなのに比べると年齢区分がはっきりしている印象を受けます。実際には,90年代に入ってから年齢による施設分けが明確に行われたということでした。ショッキングな話としては,昨年のクリスマスイブにこれまでで最低年齢の保護ケースがあり,生後4日の女の子だったそうです。ソーシャルワーカーが自宅に連れ帰って緊急養育体制をとったそうですが,ノルウェーのパパラッチ達が施設の外に盗撮目的でたむろするような騒ぎだったとのことです。


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