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□警鐘:北朝鮮ODA利権を喰いモノにさせるな

 北朝鮮の金正日総書記が拉致を正式に認めて謝罪しました。拉致被害者の生存者が一時帰国し,永住帰国を巡って外務省と家族会が対立していることが連日のように報道されています。マスコミは一時たりとも「監視」の手を緩める様子さえありません。拉致被害者が北朝鮮で生活していたときと変わりないくらいではないのだろうかと気の毒に思います。家族は永住帰国を望むかも知れませんが,24年間というのは余りに長すぎました。中国残留孤児の帰国後の生活を考えれば,安易に永住帰国などという主張はできません。子弟の日本語教育,24年間の日本社会の変化,人間関係,いずれにしても万事うまくいく保証はありません。

 マスメディアが一時帰国した拉致被害者を連日追っかけ回している一方で,解せないことがあります。何故,もっと大事なことを取材しないのか。それは,北朝鮮との国交正常化交渉の中で決められるはずの戦争賠償に代わるODA供与の中身です。ODA(政府開発援助)には,無償供与と返済義務のある円借款の2つがあります。無償供与の場合には,対象事業の選定に日本企業を使うことが義務づけられています。

 日本のODA予算は,小泉首相の聖域を設けないとする方針に基づいて枠が10%削減されています。東南アジアにおけるODAは,日本のプレゼンスを維持するのに重要な手段です。一律に削減したのでは各国への影響が大きいので,影響度に応じて枠削減を割り振っているのが現状です。しかしながら,北朝鮮が入ってくれば話は別です。戦争賠償の代わりですから,返済義務の無いODA無償供与に決まっています。当然のことながら,日本企業を使うことが義務づけられますので,ここに北朝鮮ODA利権が発生するのです。

 私がマスメディアに歯がゆい思いをするのは,これまでのODAでも繰り返されてきたように,ODA利権に政治家が介入してきたことが,北朝鮮ODA利権でも同様に起こっているはずなのに,何故報道しようとしないのかということです。拉致被害者が一時帰国している間,外務省の事務方が全く何もせずに遊んでいる訳はありません。当然,ODAの対象事業の詰めなどを相談しているのですから,政治家からの口利きがまさに行われているはずです。

 公共事業が削減されたり,主力が無償供与から円借款に替わってしまい仕事にあぶれた建設業者などが政治家を頼みにしています。北朝鮮ODA利権は,久々のビッグプロジェクトなのですから,できるだけ甘い汁を吸いたいのは誰もが考えることです。鈴木宗男が排除されたからと言っても,官僚は省益を代弁してくれる政治家を必要としています。どうせ日本企業が決まることは間違いなのですから,ゆかりのない企業よりも,省益にも貢献してくれる政治家との関係がある企業を選定したい動機が働きます。

 社会の公器を自認するマスメディアは,すぐに報道の体制を敷くべきです。核疑惑によって国交正常化交渉がうまくいかず,北朝鮮ODA利権は霧散するという見識の高い見通しを持って,報道をしていないのであれば,脱帽することにします。 


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