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□マイケアプランの違法性?□

 介護保険制度でサービスを受給するためには,要介護認定を受けた上で,その後居宅介護支援計画(ケアプラン)を作成する必要があります。一般には,居宅介護支援を実施している事業者に依頼して,介護支援専門員(ケアマネジャー)の有資格者が作成を行います。その後のサービス事業者の手配や介護報酬の給付管理なども居宅介護支援事業者が担当します。これを自己作成することは介護保険法でも認められて,給付管理部分は自治体が代行することになっています。居宅介護支援計画の自己作成は通称マイケアプランと呼ばれています。

 私は「要介護者の家族が作成するマイケアプランは違法」なのではないかという疑問を持っています。これは成年後見制の導入に関係して抱いている考えです。自己作成といいつつ,実際に要介護者本人が作成している例はほとんどなく,家族などが作成しているのが実情と見ているからです。

 日本経済新聞の2001年8月30日夕刊に浅川編集委員の署名記事で,「使われぬ痴呆高齢者の成年後見制」があります。この記事は単に痴呆で契約能力が無い高齢者の成年後見人を定めずに,本人が自署すべき事業者との契約書に家族が代理サインすることの違法性を糾したものです。一方で原則の確認として,厚生労働省が社会福祉基礎構造改革の根幹に据えたのは「自己決定権の尊重」であり,家族の代理権は否認していることが挙げられています。

 ある意味,措置から契約へと移行した介護サービスは,全ての局面が契約行為と言えます。マイケアプランを自己作成と言えるのは,要介護者本人が主体的に作成するものだけだと考えます。もちろん専門家の助言を受けたり,家族の支援を受けることまで否定しません。ただ,自治体とのやりとりが生じるときに家族が関わるのは委任状が必要ですし,サービス事業者との契約書作成は本人が内容を確認して自署する必要があります。少なくとも,痴呆症状のある要介護高齢者のマイケアプラン作成は法的に存在し得ないと見なせます。実際に訴追されるかは別として,契約書の本人署名欄に別人が署名すれば,有印私文書偽造という刑事責任も問われかねない行為だと言えるでしょう。

 とはいえ,日経の浅川編集委員は2001年10月3日の署名記事でマイケアプランに専門家の助言が加わることで制度を使いこなせると好意的な内容を書いておられるのは,どうも立場が一貫されていないという印象を受けます。

 この意見は,全国マイケアプランネットワークのMLに投稿したものですが,誰からも反応を得られていません。「スジ」論と「ベキ」論はあると思いますが,実践されている方々の認識を知ることができないのは残念と言わざるを得ません。


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