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□高性能電気自動車 KAZ□

慶應義塾大学環境情報学部の清水浩教授が高性能電気自動車,KAZを2001年3月のジュネーブショーで発表しました.詳細は,次のページ(http://www.gaura.com/ev/kaz/)にあります.清水教授は,国立環境研究所から慶大に移られ,川崎に新設されたK2キャンパスを拠点に研究活動をされており,手作り電気自動車の第一人者と呼べる方です.1997年には,2シーターEVのルシオール(http://www.gaura.com/ev/luciole/)を開発された実績があります.当時,SFCの周回道路を音もなく抜かれて驚いた記憶があります.現在は,研究の方向性を電気自動車を活用した都市交通システムに向けられていて,KAZはとかく非力で非実用的と見られがちな電気自動車への世間の目を変えることが大きな目的と思われます.

自動車評論家・国沢光宏氏のサイト(http://www.linkclub.or.jp/~kunisawa/)では,KAZに否定的な論調が過半数を占めました.国沢氏はジャーナリストとして当事者に取材したのかという質問には答えず,掲示板は急遽登録者のみ発言可にルールを変更されました.Yahoo!掲示板や2chに見られるような荒らし行為は無かったにも関わらず,都合の悪い発言を封じるかのような変更に感じられました.

3月25日 先日ここで取り上げた夢物語の電気自動車KAZだが、掲示板に書き込まれた情報によれば驚いたことに文部科学省所管の科学技術振興事業団から3億円の開発予算をもらっているらしい。調べてみるとその通り公金だったのだ! KAZについては3月26日売り号のカートップ誌でも清水和夫氏が厳しく切り捨てているけれど、全く同感。公金を使っているとしたら大いに腹立たしい! 同じ大学の教授は「燃料電池車を500万台走らせる」という研究機関を立ち上げた(もしかしたらすでに税金注ぎ込まれたか?)。日本を背負って立つような素晴らしい人材を多数輩出している大学だけに、OBの方々は「いい加減にせんかい!」と愛のムチをふるって頂きたいと強く思う。自分の趣味なら大学の予算を使うべきで、それなら文句を言う筋合いはない。公金を使うバアイ、少なくともKAZの公表スペックである300km出るか300km走れるかのドチラかでも達成していない限りインチキである。ワタシとしては両方の数字共に意味はないと考えますが。だって300km出してどうするの? ちなみに電気自動車はエアコンの問題すら解決されていない。寒冷地用の電気自動車の中には、灯油燃焼式ヒーターを使っているものさえあるほど。
http://www.linkclub.or.jp/~kunisawa/top.html

※「当Webサイトの内容の引用/転載は御遠慮下さい。」との記述がトップページにありますが,転載はともかくも著作権法上は主とならない範囲での引用は認められていますし,批判対象の表現を書き換えたことで曖昧になるのも本意ではないので引用します.

国沢氏は,大学における研究の何を理解し,自分で何を批判しているか分かっているのでしょうか.文部科学省所管の科学技術振興事業団から3億円の研究助成を受けてKAZを開発したことや,連続走行300kmもしくは最高速度300km/hの公表スペックへの疑問,そして電気自動車実用化に伴う条件整備の話が主な論点と読めます.

最初に,大学予算で研究をすれば良いという話はあまりにも現実離れしています.大学とは人材とノウハウのみがあるところで資金はありません.大学教育にしても学生の学費のみでやっていける大学など皆無で助成金をもらって何とかやっています.どこの大学も研究をするためには外部資金を受け入れなければならないのが実状で,アメリカの大学であっても外部資金を多く受け入れた教授ほど発言力が強いのが相場です.今回は,その外部資金が文部科学省所管の財団からの助成だったに過ぎません.

公表スペックと公金との関係についても,公表スペックが達成されていれば公金でも許せるとも読めます.そもそも研究助成を受けるに当たって事業団側の審査を受けているわけで,これまでの清水教授の電気自動車への取り組みを評価した上で,KAZの開発もゴーサインが出たのです.KAZの開発が仮に不採択だったとすれば,さらに評価の低い案件に助成がついたはずです.4月にはKAZの走行試験が行われるというスケジュールが出ていますので,スペックを達成したとき,公表スペックは理論値に過ぎないと言った評論家諸氏がどのような反応を示すのか楽しみです.インチキ扱いした不見識を公のメディアで謝罪するだけの度量はあるのでしょうか.

電気自動車のエアコンの話を持ち出して,KAZを非難するのは無理があります.KAZが開発された研究目的には,電気自動車を実用化するにあたって乗員の快適性をいかに確保するかは含まれていないからです.あくまでも,従来の非力イメージを打破する高性能電気自動車として開発されています.本来,大学の研究というものは解決すべき課題を絞り込んで,段階的に研究を進めていくというアプローチが一般的です.電気自動車の実用化するにあたってエアコンを気にする人よりも性能を気にする人が多いということが,高性能化という課題を優先的に選択させるのです.

国沢氏のサイトで掲示板ルールを変更させるきっかけになった問いかけ,「当事者に取材したのですか」を改めて国沢氏に問いたいし,取材せずに批判しているのであればジャーナリストとしての責任を放棄していると見なさざるを得ません.原点に立ち戻って,清水研究室を取材されてはどうでしょうか.


(5月25日改訂追加分)
KAZがイタリアで行われた実走試験で311.67km/hを記録したそうです.
http://www.kanagawa-np.co.jp/news/nw01052313.html
これを見ても未だインチキ呼ばわりするのでしょうか.


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