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□骨折□

 今日2000年8月29日,半年に渡った骨折治療が一段落しました.

 そもそもは,2月末に湯沢中里スキー場に遊びに行った折り,新雪が積もったコブ急斜面を滑走しようとして転倒,右肩脱臼骨折をしたことに始まります.転倒直後はしびれて動かなかった右腕をかばいながら何とか下山し,スキー場の診療所で見てもらうと見事に折れていました.右上腕骨大結節部の骨折という診断でした.

 スキー場の診療所は,順天堂大学医学部の整形外科が出張して開設しているもので,当番で若い医師が詰めていました.その医師は,「右腕が水平以上に上がらなくなるかもしれないが,高いところのものを取ったりするのは左手でも良いわけだから,機能的にはともかく社会生活で困ることにはなりませんよ.」と,慰めなのかよくわからない言葉を発しました.それが全くの誤りであることを慶應大学病院受診で知ることになりました.

 東京に戻った翌日,信濃町の慶應大学病院の整形外科を受診しました.紹介状無しでの初診だったため,特定機能病院受診の上乗せ額5000円を支払いました.しかし,慶應の学生であれば医療費補助が受けられることや,大学病院を体験しながら見学してみたいという思いもあって受診しました.

 初診では専門医に診てもらうことはできません.問診やレントゲン撮影が終わると,複数の若い医師による診断と患部の固定が行われ,肩関節専門の小川先生の予約が入れられました.若い医師らの評によれば,「リハビリ体操をやってこない人には厳しく,言葉も乱暴かもしれないが,良い先生だ」とのこと.

 確かに,小川先生は良く言えば「フランクな」悪く言えば「口の悪い」先生でしたが,次から次へと外来患者をさばいていく中でも丁寧に状態を説明してくれ,リハビリ体操の意味についても患者が納得できるように指導してくれました.私もリハビリの途中でサボってしまい,叱られたことがあります.腕がある程度上がるようになり,尻ポケットの財布もとれるくらい後ろ手が回るようになって,慢心していたからです.

 「肩が動かないのに手を使おうとすると,肩以外に負担がかかって故障することがあるから注意しろ.」確かに,手首や肘に痛がゆいような炎症になりかけの自覚があり,慌ててリハビリに励みました.このことは,順天堂の医師が「右腕が上がらなくても...」と言ったことと反しています.やはり医師の質の差は,想像以上にあるのではないかと思わされました.

 もちろん大学病院ですから,3時間待って3分診療という現実はあります.整形外科ですから3分よりはもうちょっと時間をかけてくれますが,毎日大勢の外来患者が押し寄せています.しかし,アクセスの自由という意味では,3時間待てば誰でもどの病院でもかかれるという日本の医療のメリットを評価しても良いのではないでしょうか.また,整形外科は薬をほとんど出しませんので,再診料のみの自己負担額210円という回が何回もありました.薬価に頼るのではなく,医師の診察料に診療報酬が多く割かれても良いのではないかと思います.

 肩の骨は軽石のように多少でこぼこした状態で形成されました.今後2年ほどかけて新しく密度の濃い骨に作り替えられていくそうです.厳しくリハビリ体操を指導してもらったおかげで日常生活に何の問題もなく,骨折したことも忘れそうになるくらい快復しました.小川先生,お世話になりました.


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