ソフトウェア(1)


ソフトウェア

 コンピュータがハードウェアとソフトウェアに分かれて,ソフトウェアをプログラムとして与える方式をノイマン式と呼びます.フォン・ノイマンという天才数学者がその原理を考案しました.ちょっと脱線すると,この人はアメリカの原爆開発にも携わり,経済学をはじめとして社会科学一般で注目すべきツールとされている「ゲーム理論」の創始者でもあります.

 ソフトウェアはいくつかの階層に分かれます.大きく分けると2つで,OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションです.実は狭間にミドルウェアというのもあります.でも,普通のユーザーにとってはあまり意識したことのないものに違いありません.それにOSやアプリケーションに機能が吸収されてしまいミドルウェア単独で存在するものが少なくなってきました.例えばOSがWindows3.1の時代にはネットワークを構成するためにNovel社のNetwareというミドルウェア製品を使うのが一般的でしたが,Windows95ではOSにその機能が盛り込まれてしまい,Novel社は商売あがったりだとか….

OS(オペレーティングシステム)

 OSは基本ソフトウェアとも呼ばれる,ソフトウェアの中でもベースになるものです.中央演算処理装置・主記憶・補助記憶・その他周辺機器とアプリケーションの仲立ちをして,共通のインタフェースを提供するものがOSです.OSが存在することで,それぞれのアプリケーションはわざわざFDに直接データを書き込むための機能を持たなくていいですし,画面表示のために直接ディスプレー装置を制御するような必要が無いわけです.つまり,OSがあることによって役割分担がされ,アプリケーションは特化した機能のみを実現すれば良くなり,開発期間・コスト・小売価格を低減することができるのです.

 ここで,具体的なOS製品を見てみましょう.
Microsoft社製品
MS-DOS IBM社の依頼で開発されたCharacter User Interface(文字主体のインタフェース)のDISKベースOS.当然シングルタスク.NEC PC-98版とIBM-PC版では互換性が無かった.実はWindows95の裏でもごそごそやってる息の長い奴.
Windows3.1 MS-DOSをGraphical User Interface(アイコンやWindowシステムを採用し,マウスなどで操作するインタフェース)にしたOSで,Windowを切り替えることでマルチタスクのように見せることができた.実は16bit処理の疑似マルチタスク.
Windows95 32bitのマルチタスクになったOSで,一大パソコンブームを引き起こした.ネットワークやマルチメディアにOSレベルで対応していると注目された.世の中では知られていないが,'98年現在4回のマイナーバージョンアップが存在する.ベースとService Pack 1,OSR2,OSR2.1 with USB supportである.最後のなんかはほとんど中身はWindows98同然.
Windows98 新しいハードウェア規格への対応とInternet ExplorerのバンドルによるInternetとローカルの環境の境界を無くす機能を目玉にしたOSです.米司法省との独占禁止問題に関する訴訟は継続中です.単にWindows95のバグフィックス版ともけなされることも.新しいPCを買うのでなければあわててアップグレードの必要無し.逆に,アップグレードして泣きをみた人数知れず.まあ,USB機器を使いたければどうぞ.
WindowsNT 32bitのマルチタスクOS.オフィスの部門サーバとしては最適と評価されるが,ライセンスの供与方法やネットワークセキュリティの杜撰さに批判が絶えない.つまり企業の基幹システムを担うには荷が重い.インタフェースはWindows95にそっくりだが,使用権が登録されていないユーザーは使用できない.
他社製品
PC-DOS IBM社が自社ブランドで出したMS-DOS互換OSで付加的機能がいくつかあった.
OS/2 IBM社が当初Microsoftと開発し,32bit,マルチタスク,GUIといった画期的特徴があったが,MS-Windowsがユーザーに支持されたために技術的には高度だったにも関わらず影が薄くなった.しかし抜群の安定性と枯れた技術であるために信頼を得て,銀行などの基幹システムで使われている.
MacOS 言わずと知れたApple社のMacintochパソコン向けのOSで,開発当初からGUI であったことが自慢.当初Adobe社のPostScript技術はMacOSでしか開発されなかったためにデザイナーや印刷業界で選択の余地なく支持された.しかし疑似マルチタスクで,メモリ管理も不十分であることから安定性に欠けるという特徴を持っている.
UNIX 商標的にはAT&T社が持ち,業務用にはSun Microsystems社が大きなシェアを持っているOS.個人向けにフリーのものもいくつかあり,選択の自由度は高く,さらにカスタマイズの自由度も高い.マルチタスクマルチユーザーで,ネットワークで使うことが原則になる.パソコンより一つ上級とされるWS(ワークステーション)では標準のOS.Internetを支えるネットワークサーバコンピュータではUNIXを使うことが多い.LinuxとかBSDと呼ばれるものもUNIX.


アプリケーションソフトウェア

 応用ソフトウェアと訳されることがあるが,特定の目的に沿って開発されたソフトウェアであり,動作環境はOSに依存します.一般には店頭で販売されている商用ソフトウェアを指すことが多いのですが,ネットワーク上で流通するシェアウェアやフリーウェアも定義の範疇に含まれます.さらに,特殊な目的のためにオーダーメイドで発注して開発するアプリケーションソフトウェアも存在します.

 次にアプリケーションソフトウェアの具体例を見てみます.

ワードプロセッサ

 ワープロと一般に呼ばれているソフトウェアで,文書作成と整形,印刷をその主たる機能としています.初期のワープロソフトはワープロ専用機の能力にもかなわないものがありましたが,最近は多機能さという意味ではパソコン上のワープロが優れているようになりました.特に他のソフトと連携を図るという意味では専用機には真似のできない能力を持っています.図を貼り込んだり,スペルチェックも行えるものがほとんどです.また表現上の問題点を指摘する機能も搭載したバージョンが存在してきています.ただし,私はそういった機能を通常はオフにして必要なときだけ使うようにしています.そうしないと本来したい作業にパソコンの全能力を注込むことができないからです.
 ワープロのような修飾の機能は備えていないものの,文書入力を主たる目的にして,テキスト文書を作成するエディタと呼ばれるソフトウェアも存在しています.こちらはWindowsのメモ帳を思い浮かべてもらうと良いが,入力支援のために様々な機能を盛り込んだエディタも存在しています.

 アウトラインプロセッサという文章作法を取り入れたり,ワープロ専用機とは違った進化をとげています.各ワープロソフト製品の生成する文書ファイルは独自規格で保存されているため,他のワープロソフトで読み込む場合にはバージョンを落とすとか,テキストファイルで文章を移すといった工夫が必要になります.このあたりが部署や会社でソフトウェアの統一を図る必要性につながってい ます.

ワープロソフトの例
 Microsoft Word97
 ジャストシステム一太郎8
 管理工学研究所「松」
 Lotus アミプロ

表計算ソフトウェア

 数字のデータを扱うとなるとワープロでは物足りないので使われるのが,表計算ソフトウェアです.行と列からなるワークシートと呼ばれる領域を使って,様々な作業を行うことができます.行と列を番地指定した一マスをセルと呼びます.
 表計算ソフトは単なる表組みを行うレイアウト設計だけにも使えますし,大量のデータを集計したり様々な加工処理を行うことができます.グラフを作成してよりインパクトの強いプレゼンテーションを行うこともできます.発想のまま思うがままに作業を進められるという点において,データベースよりも自由度の高いソフトということができます.
 技術的なことにふれますと,表計算ソフトはワークシート上のデータをすべて主記憶に読み込んで扱います.ですから扱えるデータの大きさには制約があります.一方,データベースは扱うデータをディスク上においておき,加工に必要なときだけ主記憶に呼び出す仕組みを持っていますから,大規模なデータを扱うことが可能になっているのです.

表計算ソフトの例
 Microsoft Excel
 Lotus 1-2-3
 JustSystem 三四郎

 Windows95以前の表計算ソフトと言えば,Lotus 1-2-3が標準的なものと目されていましたが,Win95以降はExcelの一人勝ちの様相を呈しています.Lotus社は存続をかけて,IBM社の子会社になり現在に至っています.こういった状況はOSの開発とアプリケーションの開発を同時に進められるMicrosoftのメリットによって生まれたのですが,これが常に米司法省が独占禁止法で監視する根拠となっています.さらにつけくわえればMicrosoftはあまり自社製品にこだわりを持たないようで,初期の表計算ソフトMulti-PlanはExcelになっても上位互換を保っていたのが,Excel97になってサポート対象外になってしまいました.
 ワープロソフトの独自規格文書ファイルのように,表計算ソフトも違うソフトでは相互にファイルを読み込むことができません.しかしテキストファイルと同様に,セルの内容を交換することのみを目的にしたCSVファイルというテキスト形式の表計算ファイルがあります.このファイルはセル間がカンマで区切られ,行は改行で示されているもので,文字属性やグラフといったオブジェクトは保存できません.

データベースソフトウェア

 表計算ソフトと比較して,大規模なデータを蓄積することに特質を発揮するソフトウェアです.細かな話は,後の回で説明することにします.


ミドルウェア

 OSとアプリケーションの狭間に存在する機能を担うのがミドルウェアと呼ばれるソフトウェアで,単独で働くというよりもアプリケーションをスムーズに使うことを支援するような機能があります.代表的なものはNovel社の出していたNetwareというネットワークOSなどが典型ですが,これ以外にもデータベースシステムの管理ソフトウェアや,最近注目されているLAN(内部ネットワーク) におけるネットワーク管理ソフトなどもミドルウェアと呼べるでしょう.
 ただ,狭間に存在するという悲哀から,OS側にその機能が吸収されてしまったり,アプリケーションソフトがその機能を吸収してしまうという事態が常に起こっています.ですから,単独の製品としては成り立ちにくいのが現状です.
 また,エンドユーザの見えるところに使われていないことが多いというのもミドルウェアを認識することを困難にしています.


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