ハードウェア(1)
コンピュータのハードウェアを扱いますが,一番身近なパソコンを使って説明していきます.1回ですべてを説明するのは難しいのでハードウェア(1)では一般的なシステムの構成について説明していきます.
本体と周辺装置
システムは本体と周辺装置から構成されるといえば,デスクトップパソコンを思い浮かべ,「そうそうディスプレイは周辺装置だから外にあって,本体はケースに収まっているよな」と思う人が多いでしょう.しかし,本体ケースに含まれていても周辺装置であるものもあり,一概に見分けることはできません.一般的には,中央処理装置と主記憶装置を本体,補助記憶装置や入出力装置などは周辺装置と解されています.ディスプレイはもちろん周辺装置ですが,本体に入っているハードディスクやフロッピーディスクといったものも周辺装置なのです.
では,中央処理装置,主記憶装置と補助記憶装置の役割について見てみましょう.この3つをたとえるならば,中央処理装置は人間,主記憶装置は仕事のデスクの盤面,補助記憶装置はファイルキャビネットや書棚になぞられることができます.仕事をしようとするときに,ファイルキャビネットから書類や資料を取り出し,デスクの盤面に広げます.そして主体的に仕事をするのは当然のことながら人間です.コンピュータにおける中央処理装置,主記憶装置と補助記憶装置の役割はこういったものです.
中央処理装置は,CPUとかMPUと呼ばれます.本来の中央処理装置はCPUですが,そこにコプロセッサと呼ばれるような補助的な回路が加わって一つのパッケージになったMPUが一般的になっているためです.コプロセッサはCPUの代わりに処理を行って全体の性能向上を図るものですが,代表的なものに浮動小数点計算を行うFPU,マルチメディア系の処理を行うMMXなどがあります.
中央処理装置の性能を見るには,一度にどれだけのデータを扱えるかという意味でのbit数,1秒間に行える命令処理を決めるクロック周波数といったものがあります.現在の主流は32bitのCPUで,クロック周波数は500MHz付近まであります.ただ,CPUばかり性能が良くても足回りとなるほかの部品がそれについてこれなければ,全体の性能は向上しません.
主記憶装置とは,メモリのことです.たとえではデスクの盤面としたように,ある程度広くなければ,盤面にあるものを一度片づけなければなりませんし,仕事が滞ります.広ければいくつもの仕事を並行して進めることも可能になります.しかし,いくら広くても処理を行うCPUの性能が追いつかなければそれを生かしきることはできません.ですから,Windows95/98では最低64MB程度は欲しいものです.WindowsNTでは96〜128MBくらいでしょうか.
メモリを大きく分けるとROMとRAMになります.単純に言えば,読むだけのROMと読み書きを行うRAMです.ROMはハードウェアに電源が投入されたときにシステムの構成を確認したり,OSを起動するもととなるBIOSを格納したりしています.NECのNX以前のPC98シリーズは日本語のフォントをROMで処理し,IBM互換機はソフトウェアで処理していたのが大きな違いでした.RAMはDRAMとSRAMに分かれます.この2つの特長は次のとおりです.
- DRAM
- 容量当りのコストが安く,いわゆる主記憶に用いられています.しかしSRAMと比べるとアクセス速度は遅く,定期的にリフレッシュを行わなければデータが失われてしまいます.
- SRAM
- 容量当りのコストが高く,VRAMやキャッシュメモリといった高いアクセス速度が必要なところに用いられます.データは電源を切っても保持されます.
DRAMの形状も,以前は専用設計が多かったのですがだんだんと標準化してきました.72pinのSIMM(Single Inline Memory Module)や144pinのDIMM(Dual Inline Memory Module)といったものがあります.また,データ転送の仕組みに改良を加えたEDOやSDRAMといったものや,CPUの高性能化に伴って高い駆動クロック数のものも登場しています.
補助記憶装置は,フロッピーディスクドライブ(FDD)やハードディスクドライブ(HDD)に代表されるようにディスクと呼ばれることが多い装置です.ファイルキャビネットにたとえたように,内蔵のHDD容量が足りなくなるとデータやアプリケーションを外部に持たなければならなくなり,不便になります.
FDは長い間,ポピュラーなメディアでありつづけました.ハードディスクが普及する前にはFDDが2台内蔵されたパソコンが一般的でしたし,現在でもワープロ文書の一つや二つを保存して移動するには適しています.しかし,パソコンが大量のデータを処理できるようになったことで,FDに収まりきれないデータを保存する必要性が生まれ,技術革新によっていろいろなメディアが生まれています.
さまざまな補助記憶装置
メディア | 容量 | コスト | 方式 | コメント |
FDD | 720KB:2DD 1.44MB:2HD | 安価 | 読・書/磁気 | 小さなデータを一時保存するのに向いている |
HDD | 数十MB〜数GB | 安価 | 読・書/磁気 | OSやアプリケーションを保存するメディア |
ZIP | 100MB | 安価 | 読・書/磁気 | FDに代わるメディアとして欧米で普及 |
SuperDISK | 120MB | 安価 | 読・書/磁気 | FDDと互換性を持つドライブ |
MO | 128MB〜640MB | 高価 | 読・書/光磁気 | 書き込みが読み込みより遅い.日本でFDDに代わるメディアとして普及 |
MD | 140MB | 高価 | 読・書/光磁気 | Sonyしか生産しないマイナーメディア |
CD-ROM | 640MB | 安価 | 読/光 | アプリケーションの配布用などに使われている |
CD-R | 640MB | 普通 | 読(1回)・書/光 | 1回しか書き込めないが,未使用部分に書き込みができるドライブもある |
CD-RW | 640MB | 普通 | 読・書/光 | 専用のドライブでないと読めないため普及は遅いが,CD-Rと共通化したドライブが登場している |
PD | 640MB | 普通 | 読・書/光 | 松下の開発したCDにジャケットを着せたようなメディア |
DVD-ROM | 2.6GB〜5.2GB | 高価 | 読/光 | 長時間の映画が高画質で記録できると注目された |
DVD-RAM | 2.6GB〜5.2GB | 高価 | 読・書/光 | マルチメディアデータの保存に適したメディア |
ストリーマ | 〜数GB | 普通 | 読・書/磁気 | バックアップ用磁気テープ |
DAT | 〜数GB | 普通 | 読・書/磁気 | バックアップ用磁気テープ |
8mm Tape | 〜数GB | 普通 | 読・書/磁気 | バックアップ用磁気テープ |
リムーバブルHDD | 1GB程度 | 普通 | 読・書/磁気 | 着脱できるHDDだが,Syquestの経営危機で将来性× |
フォーマットとパーティション
補助記憶装置の多くは,使用するときに初期化という手続きが必要になります.現在はメーカーが出荷前に済ませてくれている場合も多いのですが,これはフォーマットとも呼ばれます.FDなどは白紙の状態であるので,データを記録するために整然と並んだ原稿用紙のます目が必要になります.フォーマットは原稿用紙の縦罫と横罫とをつける作業と思って良く,その縦罫と横罫がトラックとセクタになります.
パーティションは,ある程度大きな容量のハードディスクなどを複数の区画に分けて別のドライブとして利用することを言います.OSとアプリケーションで1区画,データで1区画というわけ方があります.物理的には1つのディスクであって,パーティションを切ることによって複数のドライブとして利用できます.
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