シスアドの役割って?

 初級シスアド資格は歴史が浅い情報処理技術者資格ですが,なぜこのような資格が必要になったのかという点について説明したいと思います.

EUC

 コンピュータのハードウェアとソフトウェアからなるシステムを,エンジニアの手に任せておけば何の問題も無い.そんな時代は長く続き,現在でもエンジニア任せのシステムを利用するユーザは多いことでしょう.そういったシステムにはシスアドは必要ありません.なぜなら,シスアドはユーザサイドでできることはエンジニアに任せずにやっていこうという方向性の中で生れてきたからです.
 見出しに挙げたEUCとは,エンドユーザコンピューティングの略です.業務の最前線で仕事をこなすユーザがコンピュータを活用することを指している用語で,シスアドの仕事を理解する上でキータームとなるものです.コンピュータ用語のなかでEUCと呼ばれているものはもう一つあり,それは日本語の文字コードです.状況を判断して,どちらが用いられているか確認しましょう.
 専用の部屋があって,冷却のためのエアコンががんがんにきいてて,リールテープがぐわんぐわん回っている,鉄腕アトムのアニメに出てくるようなコンピュータは,今尚健在です.もちろん,性能は比較にならないほど高くなっていますし,コンディションについてもそれほどシビアではなくなっています.それでも大型のコンピュータを運用管理するためには,専任のエンジニアが必要になってきます.しかし,ダウンサイジングと呼ばれる大型のコンピュータを複数のパソコンなどに置換えて業務を行う動きが進行したことにより,EUCの必要性が生れました.
 ダウンサイジングは,ラディカルに進行すると大型コンピュータを全廃してパソコンのみで全社システムを構成しようともなりがちですが,最近では大型コンピュータの良さも見直されつつあり,適材適所が重要だとの認識がされるようになってきました.

コーポレートシステムにおける基幹システムとエンドユーザシステム

 さて,3つも頭が痛くなりそうな用語が出てきました.用語集も作れば良いのでしょうが,ぼろが出てしまうのと割く時間が無いため無しです.コーポレートシステムとは,企業が活動を行っていく上で必要となる情報システムの総体を表します.ですから,人事管理や給与計算,その他諸々の情報システムが含まれます.その中で企業活動の中心を貫き,全組織に渡って関わるような情報システムを基幹システム,一方で業務の最前線でファイルやプリンタを共有するような一般ユーザでも構築可能なシステムをエンドユーザシステムと呼んでいます.
 基幹システムの開発は原則としてエンジニアの仕事ですが,システムの要件を決めるときには一般ユーザの意見をよく聞かなければなりませんし,使い勝手を良くする意味でのインタフェースをうまく設計しなければなりません.エンドユーザシステムは,一般ユーザをシスアドが主導して構築していかなければなりません.

シスアドの役割

 シスアドが果たすべき役割についていくつか挙げてみましょう.
EUCの啓蒙と推進
エンドユーザが業務にコンピュータを活用するといっても主導する人材が必要です.その人材として期待されるのがシスアドなわけです.一般のユーザが自分達に何ができて,何ができないのか,これを理解させることが必要です.

エンジニアとユーザの通訳
エンジニアには専門用語があり,一般ユーザは理解困難なことが多いでしょう.また一般ユーザはエンジニアに自分達が考えていることを開発に生かせる形で伝えることも困難があります.両方の言葉を理解した上で,ユーザとエンジニアの意思疎通を助け橋渡しをする役割がシスアドにはあります.

情報システムの構築
エンドユーザシステムを構築するとき,いくつものセオリーがあります.何をそのシステムで処理するのか決まらないのに,導入するハードウェアが決まっている,そんなことがまかり通るようでは困ります.シスアドが段階的に情報システムを構築し,環境整備を行うのに中心的役割を果たします.
 こういった役割を果たすために,エンドユーザがコンピュータを活用するための知識(表計算ソフト,データベース操作)を身につけ,情報システムの構築・整備・運用について学ぶ必要があるわけです.


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