Microsoftの横暴

 OSはWindows,事務処理ソフトはMicrosoft Officeという光景は当たり前になりすぎて疑問にさえ感じない人が多いのが現状である.しかし数年前まで,表計算ソフトではExcelよりもLotus1-2-3の方が評価が高かったし,日本語ワードプロセッサでは一太郎を指定する会社も多かった.WWWブラウザもNetscape Navigatorが圧倒的シェアを持っていたのに,いつのまにか過半数がInternet Explorerにとって代わられようとしている.こういった事実を見て,なんてMicrosoftという会社はすばらしいソフトウェアを開発してきたのだろうと感心するようでは,シスアドの役割は果たせない.

 Microsoftがいかに商取引上,汚い手を使ってライバル会社を封じ込め,自らの低品質なソフトウェアをばらまき,高収益を上げてきたかを見つめるべきである.次の2つのリンクは,Microsoft批判の著名なサイトである.

Show's Hot Corner

GATES

 これらのサイトの指摘では,ソフトウェア市場の独占を背景に有力なライバル企業を追い落とすMicrosoftの手口は次のようなものである.

  1. ライバル企業が新製品・技術を発表する
  2. Microsoftはその新製品・技術と同様のものを3ヶ月後に発売と発表する
  3. ユーザはMicrosoft製品の発売を待ってから購入を検討しようとする
  4. 3ヶ月後に起こるのは,発売ではなく発売延期の発表である
  5. ずるずると発売を延期しつづけるうちに,ユーザは関心を失う
  6. 収益の機会を奪われたライバル企業は資金繰りに行き詰まる
  7. Microsoftはライバル企業に技術提携を持ち掛け,二束三文で買いたたく
  8. ようやくMicrosoftは新製品・技術を実装した製品を発売する
 Microsoftへの批判は無益なバッシングで過剰反応だという意見を持っている人もいるが,ソフトウェアの品質管理がなっていないこと,他のソフトウェア企業の発展を阻害しているという点は見逃すわけにいかない.

 OSのレベルからMicrosoft支配を逃れようという動きは,一般企業にも及んできている.ミッションクリティカルな基幹業務をこなせるとうたわれたWindowsNTに信頼性が無かったためである.その第一候補とされているのが,Linuxである.LinuxはPC-UNIXの一種であり,フリーで使えてオープンソースが特徴である.フリーで使えるPC-UNIXにはFreeBSDもあるが,企業の関心を集めているのはLinuxの方である.オープンソースとはプログラムが公開されていることを指し,一定の形式に則って世界中のプログラマー有志が改良を重ねている.これにより何か不具合が生じても,OSのレベルから調整することも可能なのである.Windowsでは不具合が生じても,それを回避するか,いつ出されるか分からないサービスパックという名のバグ直しを待たなければならない.

 Linuxが脚光を浴びたのは,1998年後半にInfomix,Oracle,IBMというデータベース御三家が揃ってサポートを表明したためである.それまでのLinuxというのは,世界中の優秀なプログラマーが片手間によってたかって育てていた一種のホビーであった.ところが,アプリケーションに目立つものがなく,大手ソフトウェア企業によるサポートも無かったため,Linuxを業務に活用するというのはWebサーバやファイルサーバ程度だったのだ.

 ここで注意しなければならないのは,Linux自体はフリーであっても,アプリケーションとしてのソフトウェアやデータベースは有償であり,サポートも有償であるということである.やはりLinuxは発展途上であり,まだまだ初心者がとっつきやすいものではない.Windowsに比べてLinuxを活用するためには十分に知識と経験を備えた人材が必要となる.その人材の代わりにサポートサービスを提供する業者には,それなりの対価が必要になることは容易に理解できるだろう.

 Microsoftが自滅の道を歩み始めているように見えるのは私だけだろうか.Windows2000と名づけたOSを1999年に発売するそうだが,既に2000年に発売延期されるとの観測も出ている.このOSはWindowsNT5.0として数年前に発売される予定であったOSの一部機能を断念した上で発売しようとしているOSにも関わらず,発売の見通しが明確ではない.ソフトウェアの品質管理・工程管理ができていない証拠である.同時期に発売予定の事務処理ソフトOffice2000も発売延期の予測が出ている.さらに,Microsoftは米国司法省との訴訟を継続しており,その流れ次第ではAT&Tのように独占企業として分割命令が出る可能性さえある.

 シスアドとしてこの一連の状況を正しく理解し,自らが関わっているシステムがいかに代替可能なのかということを検討・理解しておく必要がある.それは,技術的に導入可能かのみならず,そのプロセスも含めて考えに入れておかなければならない.


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