情報処理技術者試験の意味

 シスアド受験講座を作ってみたり,専門学校で講義したりしているわけだが,あまり情報処理技術者試験に価値を置いていない.不謹慎な話であるが,資格手当てがもらえる人は是非是非取得して所得を増やしなさい.そんな意味くらいしか無いのではと思っている.

 でも,世間的になんで情報処理技術者試験がもてはやされるかと言えば,

  • これだけ資格を持った技術者を抱えているんだぞと会社が対外的に威張れる
  • システム開発を受注する時のコスト計算が資格を基にするとやりやすい
  • 下請けに仕事を発注する時に有資格者をベースに仕様書を書くとやりやすい
  • 通産省の天下り法人の座を確固足るものにする
  • 資格マニアの欲求を満たすために細分化されている
  • 資格商法?に関わる人々を潤すため...含む私
  • なんとなく仕事ができそうな気がする
  • う〜ん,う〜ん...思い付かない
くらいの理由なわけである.(^^;

 実際に仕事ができて,どんどんプロジェクトを引っ張っていける人材が実は資格を一切持っていないということも珍しくない.そういった人たちに言わせれば,「資格が仕事をするわけではない」の一言で片づけられてしまう.もっともな話で,知識と経験を備えた人材が仕事をするわけで,最低限の知識と経験しか問われない情報処理技術者資格がなんぼのものかということなのである.

 資格に対してネガティブな表現が多くなったが,もっとポジティブに捉えればどうなるのだろうか.特に初級シスアドに限定して話をすれば,パソコン経験1年以上でエンドユーザの立場でリーダ的役割を果たしていく人材と位置づけられていて,なかなかそこまで達している人材というのは多くはない.ワープロソフト,それもMicrosoft Wordで入力と印刷ができるという人はいても,他のワープロソフトとの比較評価ができなかったり,他のアプリケーションソフトを満足に使えない人がほとんどである.バランスよくアプリケーションソフトが使いこなせ,評価ができ,さらにエンドユーザシステムの運営管理ができれば,それは立派なシスアドである.

 もちろん初級シスアドに合格したからといって,立派なシスアドとして認められたと勘違いしてもらっては困る.現状として必要な知識の一部や応用といったものを切り捨てたカリキュラムによって実施される試験のため,試験に合格するための知識と実際にシスアドとして役割を果たすための知識は異なるのである.しかし,これまで体系的に勉強する機会が無かったユーザにとって,初級シスアドの受験は自分に何が欠けているのかを思い知る良い機会になるだろう.

 表計算ソフトを単に表の整形ソフトと思っていたり,データベースソフトをなんだか遠い世界の話に思っているような人々が,その基礎を知って体系を理解した時に,とても有用な(当社従来比)人材に成長していることだろう.そして,自分が体系を取り入れようと努力して勉強したことを,プロジェクトチームのエンドユーザに伝えていこうとすることがチーム全体の能力を高めることにつながるのである.

 トップページに「能力開発のスタートラインに」と書いたが,まさに自分の偏ったコンピューティングをバランスの取れたコンピューティングにし,さらにプロジェクトチームにおいてリーダシップを発揮していくスタートラインとして情報処理技術者資格を考えてもらえれば良いと思う.自動車運転免許だって取得したら立派なドライバーというわけではなくて若葉マークをつけるように,初級シスアドに合格してさらに知識を蓄え応用力を身につける不断の努力が求められる.


トップ

Copyright(c)1999 All right reserved
by T.Izumi.