「平成12年2月定例市議会に提出した議案に対する市長提案理由説明要旨」(学校給食関係部分のみ)

第四に、学校給食につきましては、昨年末の審議会の中間報告を受け、質の向上を図りつつ、経費の削減を行い、そして学校教育の向上にその資金を活用するという方針で臨みたいと存じます。これが、あくまで子どもたちのために行うという基本姿勢に合致し、幅広い市民合意の形成につながると考えております。現時点においては、給食現場の合意は不十分であり、また、市の方針も必ずしも市民の方々に十分浸透しているとは言えない状況であると存じております。問題の解決をいたずらに先延ばしすべきではありませんが、拙速な行動も慎まなければならない問題でもあります。基本に立ち返り、情報の積極的な公開・提供等を通じて、じっくり市民の方々の理解を深める努力をするとともに、そのためにも、理解の得られたところから試行を行い、その結果をまた情報公開していくというような、地道な取り組みが必要であると考えております。


解説
・2月議会は来年度の予算を審議する大切な議会です。市長が提案した平成12年度予算には、試行のための一定の予算と、学校給食の経費削減をもとに学校給食の充実にあてるための基金1億円が計上されています。

・この提案理由説明では、まず、学校給食の質の向上を図ることと経費の削減を行うこと、そして削った財源を学校教育の向上に活用する方針が述べられ、そうすれば市民合意が得られるという見通しを述べています。

・注目すべきは、「質の向上を図りつつ」という点です。この場合の質の向上は当然中間報告に盛り込まれた改善の内容を実現することでしょう。そして、私たちが明らかにしてきたように、その実現はPTA委託や民間委託では実現が極めて困難なものです。特に地域や家庭とつながっての給食作りや食教育の充実などは、直営方式のもとで、調理員や栄養士が今まで以上に働くことが不可欠です。

・「給食現場の合意は不十分」「市の方針も必ずしも市民の方々に十分浸透しているとは言えない状況」という認識は正しいと思います。現場の合意が不十分ということの中には、労働組合との交渉がうまくいっていないということと、改善内容についての取り組みの合意作りも不十分というふたつの意味があるように受け取れます。労働組合はすでに17項目の改善要求を当局に出して、委託しないで直営でコストも下げつつ、豊かな学校給食の実現を迫っているわけですから、市長が言うように委託部分の市民合意が不十分なもとでは、とりあえず合意が得られる改善部分について、交渉で実施を決めれば事態は打開できるはずのものです。

・現場での改善内容についての合意作りが不十分とすれば、それは調理員さんや栄養士さんの真摯な努力が求められる問題です。これだけ多くの市民の関心を呼び、社会問題ともなっている現状ですから、何度も集まって十分論議し、改善へ向けての合意作りを急ぐことは当然の責務と考えます。そこができないようなら、PTAや市民からそっぽを向かれ、委託の方が良いという意見に流れてしまうおそれもある、そういう重要な問題でしょう。私たちの期待に応える努力をお願いしたいところです。

・PTAや親の立場では、この学校給食問題を多くの人にきちんと伝え、論議を巻き起こしていく必要があります。まだまだ一部幹部役員だけの問題になっている。そこを市長は「市民の方々に十分浸透してるとは言えない」と述べたものと思います。市長が言うように、学校給食の質の向上をめざした改善も、市民合意なしには進みません。ここは特に各学校の教職員やPTAの努力を期待したいと思いますし、私たちも会としてそういう機会をたくさん作っていきたいと思います。

・「拙速な行動も慎まなければならない問題」「情報の積極的な公開・提供等を通じて、じっくり市民の方々の理解を深め」「理解の得られたところから試行を行」うという発言は、事実上4月からの試行強行は難しいという態度表明と受け取れますし、合意が得られていない民間委託やPTA委託については、試行の先延ばしもやむをえないという判断に至ったとも取れます。この背景には、2月8日に市議会議長から教育委員会に対して、12年度からの試行にあたっては民間委託やPTA委託に限定することなく、あらゆる角度からさまざまな方策を検討し、実施にあたっての課題、メリット、デメリット等を明らかにした上で、議会として判断するに足る説明を行うよう申し入れがなされたことも影響していると考えられます。

・しかし、状況は予断を許しませんので、引続き試行反対の声をどんどん届けていくことが大切でしょう。