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 高橋史朗氏を教育委員に選任することに抗議し、強く撤回を求めます
   



 埼玉県知事 上田 清司 殿


 上田清司埼玉県知事が、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)の前副会長の高橋史朗氏に県の教育委員への就任を要請し、高橋氏も承諾したという報道に接し、大変な驚きとともに強い怒りを感じています。

 高橋史朗氏は「つくる会」の呼びかけ人であり、結成当初からの理事、副会長として「つくる会」運動を実質的にコーディネートしてきました。また、改憲・右翼組織である日本会議の中心メンバーとして、「つくる会」と日本会議とのパイプ役を果たしてきた人物です。「つくる会」歴史教科書(扶桑社版)は、日本の侵略戦争を正当化し、歴史を歪曲するものです。歴史教科書で日本の過去の戦争を肯定し、公民教科書で今日とこれからの日本の戦争を正当化するものです。つまり、「戦争をする国」の歴史・公民教育によって、戦争国家の人材養成をめざす教科書です。

 上田知事は、高橋氏の「実績を評価した」と述べていますが、彼の実績とは何でしょうか。日本政府も認めている日本軍「慰安婦」被害者を攻撃して、教科書から「慰安婦」記述削除を執拗に要求してきたこと、教科書を「自虐史観」と誹謗攻撃してきたこと、性教育を攻撃しジェンダー・フリーを攻撃してきたこと、統一教会=勝共連合のイデオローグとして活動してきたこと、学生時代から、「天皇中心の新体制国家の形成を期すことを目的にし、大日本帝国憲法体制に原点回帰を目指す」(『右翼・民族派事典』)という方針を持つ右翼組織の日本青年協議会をつくり、この協議会の下部組織として日本教育研究所をつくり、初代事務局長や副所長を務めて青年・学生の右翼運動の指導者だったこと(俵義文著『ドキュメント「慰安婦」問題と教科書攻撃』)、今日の教育がかかえる様々な困難をすべて歴史教科書と教育基本法に原因があるかのように言いふらしてきたこと、教育勅語や国家神道を賛美し、「日の丸・君が代」は教員だけでなく子どもや保護者に強制すべきだと主張してきたこと、教育基本法改悪をめざす「国民運動組織」として「日本の教育改革」有識者懇談会(民間教育臨調)を「つくる会」と日本会議が共同して結成する中心的役割を担い、発足後は運営委員長の任にあること、などなどが彼の実績です。高橋氏は、教科書やジェンダー・フリーを攻撃するときに、教科書記述や原著、相手の主張の一部を恣意的に引用し、それに勝手な解釈をつけて、批判するという手法を多用しています。以上のことはすべて資料や証拠がある事実です。これは研究者が絶対にやってはいけないもので、学者としての資質が問われるものです。
 以上のようにことは、どれをとっても教育委員としてふさわしくないものといえます。

 さらに重要なことは、高橋氏は「つくる会」歴史教科書の監修者だということです。今年4月に「つくる会」・扶桑社は改訂版教科書を文部科学省に検定申請しています。検定申請時には、著者名簿も提出しますが、4月時点では教育委員就任の話はなかったので間違いなく改訂版にも監修者として名前があるはずです。それどころか、9月11日の「つくる会」の総会でも彼は副会長として再任されています。教育委員になったら、検定合格後に見本本を作るときに著者名を削除して、「つくる会」教科書とは直接関係がないというつもりでしょうが、彼が「つくる会」教科書に深くかかわっていることは消し難い事実です。たとえ、副会長を辞任したとしても、「つくる会」との関係は否定できません。特定の教科書やその教科書の採択運動に深くかかわり、その責任者として利害関係のある人物を、教育委員に任命することは大きな問題だといえます。

 しかも、上田清司知事は、9月7日の記者会見で「つくる会」教科書を「新しい試みとして私は基本的に評価したい」(「埼玉新聞」9月8日)といい、9月30日の県議会で、「つくる会」教科書に対するアジア諸国からの批判を「内政干渉だ」「国内に他国からの批判に呼応する動きがあることが問題」と述べ(「東京新聞」10月2日)て、「つくる会」教科書に反対する市民や教員を攻撃しました。さらに、上田知事は、「つくる会」が9月11日の総会後に開催した「東京・愛媛の成果を来年の採択に生かそう!!『つくる会』前進のつどい」に、全国の知事でただ一人、「『新しい歴史教科書をつくる会』の活動が、八木新会長様をはじめとする新たな体制で推進されることをお喜び申し上げます」というメッセージを送っています。こうした点からみるならば、中学校教科書の採択を目前にしたこの時期に、高橋氏を教育委員にするのは、「つくる会」教科書を県内で多数採択させるための人事と言わざるをえません。

 高橋氏は、11月の「つくる会」理事会で副会長の辞任を申し出たということです。それだけでなく、12月7日に「つくる会」にも退会を申し出、日本青年協議会も辞めたといっています(埼玉新聞12月10日)。高橋氏の「つくる会」副会長の辞任、「つくる会」や日本青年協議会の退会は、明らかに教育委員になるための「偽装辞任・退会」だといえます。仮に、辞任・退会したとしても、高橋氏の考えや主張が変わるわけではなく、彼が言ってきたこと、やってきたことも消されるわけではありません。

 上田知事は、「高橋氏がつくる会の副会長であったことは就任を要請するまで知らなかった」といっていますが、これは明らかな虚偽です。2002年10月に上田氏が主催した「四市政策フォーラム」の講師に高橋氏を招いていますが、衆議院議員上田清司名による案内文書で、高橋氏を「つくる会」副会長として紹介しています。さらに、上田知事は「つくる会」教科書を評価する発言をしているので、当然、「つくる会」教科書を読んだということであり、高橋氏が監修者だということも知っていたはずです。

 こうしたウソまでつきながら、何がなんでも高橋氏を教育委員に選任しようとするのは、「実績」や「体験学習の第一人者」という理由ではなく、「つくる会」を支援し、その教科書を県内に多数採択させることをねらうものであることはもちろんですが、それだけでなく、いま憲法・教育基本法の改悪をねらう勢力の意図にそって、埼玉県の教育を戦争するための人づくり教育に全面的に転換させようとするものにほかなりません。高橋氏の教育委員就任は、教科書採択の公正はもちろん、教育行政の中立・公平・公正の面からも絶対に許されないことです。

 私たちは、上田清司知事が高橋史朗氏を教育委員に就任することを要請したことに怒りをもって抗議し、高橋氏の教育委員選任を撤回することを強く要求します。

                                      2005年12月16日






子どもと教科書全国ネット21
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