下の図はステファン曲線と呼ばれるもので、飲食によってプラークのpHがどのように変化するかを見たものです。
飲食物中の糖がプラークの中のむし歯菌によって分解され酸が産成されるとpHは急激に酸性になります。そして時間の経過とともに徐々に回復していきます。そして、図の中央部の赤い帯の所が臨界pHといって、これより酸性になると脱灰が起こり青色の部分になると再石灰化が起こるのです。つまりこの図の臨界pHより下の赤色の部分がより小さいほど虫歯になりにくいということになります。
このステファン曲線の変化を一日の中で見てみると、下の図のようになります。赤色になる回数が少ないほど、そしてその持続時間が短いほど虫歯になりにくい(脱灰の部分が少ない)といえます。
むしばの発生に影響を及ぼす要因のうち主な幾つかのものを調べて、虫歯になりやすいかどうかを判定するのがカリエスリスクテストです。
カリエスリスクテストを行うとどこに問題があるのかが分かるため、その人に一番適した効率のよい虫歯予防が出来るということです。そしてこれを繰り返し調べることによって予防法の効果を確認することが出来るのです。
1.カリエスリスクテストの検査項目
下の表はカリエスリスクの検査項目とその判定基準を示したものです。表の最上段(ピンク色の部分)の数字が大きいほどリスクが高いことを示しています。
項目 | 0 | 1 | 2 | 3 |
ミュータンス菌の数 | 0 | 10万 | 50万 | 100万 |
ラクトバチラス菌の数 | 1000 | 1万 | 10万 | 100万 |
飲食の回数 | 3回以下 | 4回 | 5回 | 6回以上 |
プラークの蓄積量 |
無し | 少 | 中 | 多 |
フッ素の使用状況 | 定期的なフッ素塗布家庭で毎日使用 | 家庭で毎日使用 | 時々使用 | 使用していない |
虫歯の経験 (DMFT指数) | 0 | 2 | 4 | 6 |
唾液の量 (5分間) | 10ml以上 | 6〜10ml | 3.5〜6ml | 3.5ml未満 |
唾液緩衝能 | 即青 | 青 | 緑 | 黄 |
ミュータンス菌とラクトバチラス菌の菌の数は、唾液を専用の培地に塗布して一定時間培養して菌の数を判定します。下の図がミュータンス菌とラクトバチラス菌の菌数判定用チャートです。
唾液緩衝能は検査紙(リトマス試験紙みたいなもの)に唾液を滴下して色の変化で判定します。下の図が唾液緩衝能の判定用チャートです。
2.カリエスリスクテストのレーダーチャート
各項目を下に示すようなレーダーチャートに記録するとどこに問題があるのかが一目瞭然になり、その人に応じた予防プログラムを作成することが出来ます。
※図表の引用図書 : 補綴臨床別冊「新しい齲触学・修復学を求て」(医師薬出版刊 1997)より 「齲触の治療とその目的」 熊谷 崇 先生著、「齲触傾向の検査と評価」 藤木 省三 先生著、「脱灰と再石灰化」 田浦 勝彦先生・熊谷 崇 先生共著