十歳くらいの男の子が一人、夜の町を歩いていました。
「小さな灯りを点けましょう。
暗い夜道とあなたの心に」
恋人達やプレゼントを持って家路を急ぐお父さんやお母さんが振り返ります。
男の子は屈託のない笑顔で応えます。
そして大きな声で言うのです。
「それが小さな明かりでも
もしもたくさん集まれば
僕らの道が照らされます」
人々はその子が何を言っているのか理解出来ませんでしたが、男の子の笑顔を見て自然と自分の頬も緩みました。
男の子は一人寂しそうに道に座り込んでいる若者に灯の点いている蝋燭を手渡しました。
若者は男の子がどこから蝋燭を取り出したのか気づきませんでしたが、それを不思議とも思わず蝋燭を受け取りました。
とても明るく暖かく感じられました。
「小さな光をあげましょう。
一夜の宿とあなたの心に」
男の子は思い詰めた表情の、お腹の大きな女の子に蝋燭を渡しました。
女の子は差し出された蝋燭を驚きながらも手に取りました。
そして蝋燭を見つめました。
「小さな命をあげましょう。
あなたの心とあなたの子供に」
男の子は大きな声で歩いていました。
そして時々、灯の点った蝋燭を誰かに差しだしていました。
恋人達はやがてやってくる二人の生活を夢見ました。
家路を急ぐ大人達は明日の朝枕元を見て喜ぶ子供達の姿が見えました。
あの若者は体を伸ばして立ち上がりました。
あの女の子は柔らかな微笑みが宿っていました。
男の子はまた歩いて行きます。
大きな声が聞こえてきます。
「小さな灯りを点けましょう。
あなたの心と暗い夜道に」