わかなちゃんが博士の研究室に遊びにきました。なにやら博士は体を動かしています。
「はっかせー、なに体操してるんですかー? ラジオ体操?」
「見てわからんか。ウナバウアーじゃ」
「ウナバウアーって、しずかちゃんの真似のつもりですか。それを言うならイナバウアーですよ。それにそれじゃ老人の背伸びです。まだカメの方がマシなくらいですよ」
「(カメイシズカ (ぼそっ))、カメって甲羅があるからうしろに曲がらんじゃろ」
「はかせは猫背だからまっすぐにもなってません。冬オリの時、病院は大変だったそーですよー。使い慣れない腹筋を痛めた人とか、腰痛になっちゃった人とか」
「みんな真似して壊したのじゃろか?」
「そーです。はかせみたいな歳のひとは気をつけたほーがいーです」
「わしはまだハタチじゃぞ」
「何進法でですか」
「今年は端数が出る可愛くない数字じゃから言えん」
「進数の基数の方が20より多いくせに。躯を柔らかくしたいんならお酢でも飲んでみたらどうですか」
「お酢とな、わかなちゃんの方が年齢不明じゃぞ。ところで3つめの写真の説明が無いな、これはなんじゃ?」
「エビ天のウナバウアーだそーです」
「わかなちゃんもウナって言っとるじゃろが。(ネタが風化する前に書いてしまおうという魂胆じゃな)」
「で、今日はなんの実験を見せてくれるんですかぁ?」
「じゃーん。ソフトはハードを凌駕するパート2じゃ」
「ハードウェアは一瞬・ソフトウェアは永遠、ソフトウェアはハードウェアを破壊することもできるっていう実験ですよね。去年もやりましたよね、それのつづきですかぁ」
「うむ。最初の実験はこの全自動洗濯機じゃ」
「洗濯機がハードで、洗濯物がソフトですねー」
「そうじゃ。普通はこういう洗濯物を使うものじゃが」
と言いながら洗濯機から洗濯物を取り出します。
「きゃー」
わかなちゃんが奇声を発しました。
「なんてものを取り出すんですか、まったく、はかせは」
「驚かなければ読者は気がつかんのになぁ」
「そーゆー問題じゃありません。セクハラです」
「で、じゃ、取り出した洗濯物の代わりにこのねk」
「だめっ。それやっちゃ、だめです。ただでさえ『日本人は猫を喰う』とか『日本人は猫を虐待する』とか言われているんですよ。ブラザーズ・グリムでもやってたでしょ、猫を喰っちゃうのは本当はフランス人なのにさ。誤解されるような実験は、たとい文部科学省が許しても、このわかなが許しません」
「むう。そういうことしようとしたわけじゃないんじゃけど。まあよい。では次の実験じゃ」
「一回くらいはまともな実験をしてくださいよー」
博士は写真パネルを取り出しました。
「これはマンションの写真じゃ。一軒の間取りは超広ーい豪華なマンションじゃ」
「いやーんな予感がしまーす」
「こっちはホテルの写真じゃ。カネと土地が余ってたのでもったいなからということで建てちゃったホテルじゃ」
「あの、は、はかせ」
「これの二つはハードじゃ。しかーし、これで構造設計ソフトの出力にデータを捏造すると」
「ねぇ、シャレになりませんから別の実験にしてください」
「なんでじゃ。これだけがまともな実験なのに」
「はぁ。だめです。次です」
「取り敢えずやってみて検証してみるということも重要じゃぞ」
「却下します」
「この本棚はここに造り付けの頑丈な本棚じゃな」
「変わり身は突然ですね。そーです。父の離れの書斎をはかせにお貸ししていて、家が建てられた当時からずっとある本棚です」
わかなちゃんは博士の実験室の大家さんなのです。
「で、じゃ」
「もういいです。本とかCDとかDVDとかがソフトで、その重みで本棚が壊れるというネタでしょ」
「すまぬ」
「本当の実験で致し方なく壊れるのはいいですけど、今日みたいな莫迦ネタで私のおうちを壊さないでくださいね。結局今年は一つも実験できませんでしたねー。ところで、助手のやませさんはどこ行っちゃったんですか。皆さんに顔見せできる一年に一回の機会なのに」
「去年からずーっとそこのマッサージ器に座っておる」
やませ君は人(ソフト)がマッサージ器(ハード)を壊せる実験を昨年からやり続けているのでした。
「やませさん、きあいだー、きあいだーっ、きあいだー」
わかなちゃんは妙なハイテンションで応援し始めました。
「一年動かし続けても壊れないマッサージ器の方に気合い入れているような気がするのう」
まだまだ実験は続きそうでした。