その核融合によって南太平洋上に雲が作られた。海水面は夏の太陽よりも高い熱源により熱せられる。それはただでさえ大きな雲を巨大な積乱雲へと変化させた。その雲が地球史上最大の雷鳴を轟かせたときにソレは目覚めた。
落雷によって生まれた大量の電子の流れは、目覚めたばかりの邪悪な存在とぶつかり合いソレを熔融し同化した。そして総ての電気抵抗を無効化しいつまでも地球の内部を奔流し続けたのだ。
ソレはマグマの海を泳ぎ、マントルを飛行する。ときおり核に吸い込まれそうになる。復活し体が変容した後も、失われた太古の力はわずかしか戻ってきていないのだ。熔けた鉄とニッケルで構成された地球の核に吸引されたならば電子の体は解体され、また眠りにつかなくてはならない。
また、地表に近づきすぎても空中に放電してしまい分解されてしまうのだ。
人々の眠るその下を走るとき、異様な磁界を街に創り出し安らかなはずの夢を恐怖と不安に変えてしまった。
両極の地下を走り抜けるとき、美しいはずのオーロラは姿を変え言葉で表現することも出来ないような醜悪な光を放った。極地に住む人々は空をあおぐことをやめた。
大陸のの重なり合うプレート面を駆け抜けるとき、たがが外れるように地表は大きく震動した。地表の人々は怖れに慄えた。
虹は七色を失い、複数の不気味な副虹が現われる。それは空を穿つ細長い大蛇に見えた。
太陽系にとって幸いだったのは、推進力を失った彗星が太陽の重力に負け、その灼熱の海に衝突したことである。太陽表面の衝撃はフレアと黒点を創り出す。それによって生まれた太陽風は地球の防衛機能であるバンアレン帯を強化した。強化された放射能帯は地中にも作用し、マントルを走る邪悪で巨大な電流を地球の核の中に押し込んだのである。
静寂は戻った。ほんのしばらくの間。