◎魔女と魔法使い

僕はそのころ三年がかりの大きなプロジェクトを終え二ヶ月の休暇をようやく取ったところだった。政府が「IT」事業を進めてくれたおかげで官公庁の仕事が多く立ち上がった時期がある。そのうちの一つが僕のプロジェクトだった。半年も納期が遅れ僕達は二年近く休みもろくに取れぬまま作業を行なった。そして死ぬような思いをしてだけれどもそれを終わらせることができた。僕はスタッフのみんなを扇動し、会社に二ヶ月の休暇を強く願い出て、そして要求を通らせたのだった。金は有っても使う時間が無いなんて最悪だと思ったしね。

でも実際休みを取っても最初からそんなに休めるなんて思ってもなかったもので、予定なんて立てているわけもない。僕には何もやることがなかったのだ。最初の一週間は部屋の片付けで追われた。だって二年間部屋の掃除さえしてなかったのだ。一週間で終わったことを誉めてやらねばなるまい。が、次の週にはもうやることがなくなった。旅行に行くにしても家族も居ないし、恋人も居ない。そんな僕の友達は皆、普通の生活をしているわけだから、平日に暇をしている僕の相手をしてくれるわけもない。それに第一、みんな結婚して家族を持ってる。一人気ままな生活をしてるのも僕くらいのものだ。

いまから海外に行こうっと思い立ち、行きたい所もないのにともかく旅行代理店にでも行ってみようと外に出る。雨が降る中を商店街を過ぎ、駅前の旅行代理店に向かう。途中、お腹が空いたので喫茶店に入った。

店員に案内されて座ったところは店の奥の壁際。A4のノート型コンピュータを取り出し、メールを見てみた。プロジェクトの何人かから一人で暇をもて余してるんじゃないかとメールが来ていた。余計なお世話だが、図星だ。

ふと顔を上げると通路を挟んだ向かい側に大きな縁あり帽子を被った女の子が居る。デニムの上着にロングスカート、茶色のバスケットシューズ。店の中でも帽子を取らないんだぁと気になり始める。彼女はフレッシュメロンジュースを飲みながら窓の外を見ていた。彼女の眼鏡の横から見えたその瞳は赤かった。髪を染めているんじゃなくって地のプラチナブロンドだったんだと気がついた。

彼女が振り返り、僕と目があった。ドクン。心臓が爆発した。きょとんとした表情がにこやかな笑顔になったからだ。女の子が僕を見て微笑むなんて生涯にも無かったことだぞ。

「私もそんなのが欲しいの」

僕のノートを指差して言った。見た目の幼さから想像できないハスキーな声だった。

「ねえ、少し教えてくれますか」

最初は通路を挟んで話していたけれど、彼女は僕の向かいに座り、そしていつの間にか僕の横に座っていた。いろいろと話しているうちに雨はやみ、そして僕は旅行代理店に行くつもりだったことを思い出した。

「ああ、もう出なくちゃ」

彼女との話はとても楽しくて、終わらせるのは嫌だったけれども、僕が鞄にコンピュータを仕舞おうとした時だった。太陽の光が店の中に差し込み急に明るくなった。と、彼女は消えていた。僕が目を鞄にやったのは、たった一瞬のことなのに、もうどこかに行ってしまっていた。とても残念で海外旅行のことなどどうでもよくなってしまった。そうだ、またここに来れば会えるかもしれない。その日から僕はこの喫茶店の常連になってしまった。

でも次に会ったのはその喫茶店じゃ無かった。

結局一週間会えなくてふらふらと出かけた銀座で彼女に出会った。うん、銀座と言っても僕には関わりの薄いところだけどね、家電ならまだ職業上近いし、それに店は出来たばかりで安売りをやっていたんだ。で、そこに彼女は居た。ノートパソコン(あんまりパソコンという言葉は好きじゃないんだけど)の入った、いかにも今買いましたと言わんばかりの店の袋に詰められた箱。彼女も僕に気付いて近寄ってきた。

「これ動かすのを手伝ってくれる?」

電源を入れて手順に沿ってデータを打ち込むだけだと思ったが、仲良くなるチャンスだったので二つ返事で承諾した。彼女の家はバスでなきゃ行けないそうなので駅から近い僕の家に来ることになった。若い女の子が僕の家に来るなんて信じられないことだが。

「入ってもいいですか」

「どうぞ、入って下さい」

「わあ、何もない部屋」

随分と失礼な言葉だが僕は嬉しかった、掃除をしておいて良かった。彼女がそう言うのも無理はなく、ベッドと机の他は本棚一架と衣装ケースくらいのものだ。あとはインターネットの専用線と大容量のハードディスク。これは自慢の品。僕が今までやった仕事のデータを総て入れてもまだまだ空きがある、そう、僕の唯一の道楽品なのだ。

僕は彼女に机の上へノートを広げさせセットアップを横から手伝った。電話線を貸してあげてネットへの接続も確認する。彼女のうちはまだ電話線しかないって聞いたからね。

「ねえ、メールアドレス教えて。メールできるか試してみるから」

『From:witch@hakuto.ne.jp 家覚えちゃった、また来ていい?』

『To:witch@hakuto.ne.jp いつでも、喜んで』

witch か。彼女をバス停まで案内しようと後を追いかけたけどもう居なくなっていた。本当に魔女かもしれない。魔女と言ってもグリム童話の醜悪なそれではなく、オズの魔法使いに出てくるグリンダのような。彼女は僕に魅惑の魔法をかけ魂を奪ってしまった。

魔女さんはいつもノートに向かっているようだった。メールを書くとすぐさま返事が来る、嬉しくなってまたメールを書く。彼女が僕のものになったような錯覚を覚えたものだ。

次に彼女が家にやってきたのは四日後。夕立の中彼女がドアの前に立っていた。僕のノートを触ってみたいと言う。仕事でもよく他人に使わせることがあるので、セキュリティモードを用意している。人が勝手にシステムの中をいじったり、覗き見できないようにロックをかけるのだ。ハードディスクやネット資源にもアクセスできる量を制限できる。僕はセキュリティモードで立ち上げ、彼女に使わせた。すぐに僕のノートからゲームの場所を見つけ出し動かし始めた。いかにも隠してあるよというように置いておけば誰もがそれに引っかかるのだ。本当に隠したいものの上に鼠の死骸を置いておけば、それが最後だと思ってその先まで見ようとはしないものだ。そんな仕掛けがいっぱいしてある。そして初めて僕のノートを使う人達はみなそのゲームをやる運命にある。彼女がゲームに興じてる間、買ったばかりのハリポタの新作を読んでいることにした。

「ああ、疲れた」

彼女はゲームに飽きたらしく、ベッドの上に身を投げ出した。ベッドに横たわる彼女を見て僕は彼女を抱きしめたい衝動にかられた。本を置き彼女に覆い被さろうとした時、部屋の電気が消えた。停電か。僕の体の勢いは止まらず闇を良いことにそのまま抱きしめようとした。が腕は空を斬り、僕は情けない恰好でベッドに倒れ込んでしまった。暗闇の中、彼女の眼鏡のレンズだけが青白くぼんやりと光っていた。

「私を捕まえられたら好きにさせてあげるよ」

僕は彼女の体があると思えるところに手を伸ばす。やはり空気しか掴めなかった。眼鏡はすうっと上にあがっていった。

「またね、さよなら」

そしてふっと消え、光が戻ってきた。停電だったのにも関わらず、総てが停電の前のままだった。ノートにも光が戻ってきたし。えっ、ノート? そうノートパソコンの画面の光は停電でも落ちるはずがないのだ。総ては前のまま、彼女だけが消えてしまったのだった。僕は夢をみているようだった。

あくる日職場から緊急の呼出しがかかった。納品して順調に動いていたシステムが突然トラブルを起こしたのだ。僕は愛機を抱え納品先へ向かった。

そこに入ったのは三回だけで、最初のシステムとスペックのチェックの時に一回、納品インストールと起動テストの時に一回、そして動作確認の時に一回だけだ。実際に使うコンピュータと同等のものを用意し、テスト用のデータも本物に近いもので開発を行なったので自信はあったのだ。もっとも運用が長引けばトラブルが起きる理由もいろいろ増えてくるから何かあっても不思議ではないと思ってはいる。

納品先は内閣と自衛隊と警察庁が合同で作った国家安全保障局という機関で、そこはハイテク監視システムを駆使して国のコンピュータネットワークを防衛するのが目的だ。だから僕達の仕事は誰にも口外してはいない。完全な秘密と、間違いの無いプログラムが僕達に科せられていたのだ。その代わり報酬も大きかったし、会社へのボーナスや休暇の要求もすんなり通ったというわけだ。

システムセンターの内部に入るまで受付は三つもある。受付というより検問といった方が近いかもしれない。それの全部に身分証明と照合を行ない通り抜けていく。メンテナンス用の席は用意されていて、そこで僕は自分のノートをLANに繋げ状況を把握していく。僕達の作ったプログラムは完全に動作しており別に問題を出しているわけではなかった。ソフトウェアではなくハードウェアの問題のようだった。波状的な高負荷攻撃を受けて、ハードウェアが共鳴し輻輳が発生し異常動作を起こしていることがわかった。ほどなく他のスタッフもそのことに気がつき、対策会議が設けられた。いつの間にか僕はソフトウェア側の担当責任者にされてしまい会議に引っ張り出されることになった。実際、僕の上には幾人かソフトウェアプロジェクトの責任者はいたのだが、実質的な設計と作成を仕切っていて実務上の対外窓口だったのは僕なわけで、にげるわけには行かなかった。

外部から人為的に攻撃を受けていることは判った。ネットワークの監視は全国の数十ヶ所で行なわれている。監視は幾つかの条件の下で行なうようになっていていつも全部をチェックしているわけではない。実際に監視されるのはごく少数なのだ。それが突然、全監視地点で監視条件に引っかかるものが同時に多数発生したのだ。人為的としか考えようがなかった。

もっとも、そのようなことは最初から考慮されて設計されていたはずなのだが、実際ハードウェアのスペックは充分だったし、処理速度にも問題はない。問題はハードウェアの特性にあった。非常にリズミカルで繰り返される攻撃にハードウェアがうねりを生じたのだ。そのうねりが並列化されたハードウェアたちを揺るがし異常動作に駆り立てたのだ。もし、人為的に行なえたとするならば、天才と言えるかもしれない。犯人はソフトウェア、ネットワーク、ハードウェア固有の情報に熟知ているばかりか、犯人に全システムが筒抜けになっているということも示していたのだ。幾つかの対症療法が示されその場は治まったが、別途トップレベルでの対策会議が行なわれることになるだろう。ともかく、遅れてやってきた上司共に引き継ぎを行ない、僕は帰宅した。

翌朝、遅い食事を摂りに出かけようと玄関のドアを開けた。ドアの前に女性がぬぅっと立っていた。僕はびっくりして後ずさりした。

「内閣調査局の方から来ました、紅玉っていいます。方って言っても方角のことじゃありません。消火器の押売りみたいに消防署の方から来ましたっていうわけじゃありません。先日のネットテロについての調査でお話を伺いに来ました。あなた、あたし知ってるでしょ?」

彼女の顔は何度かシステムセンターで見たことがある。いつもよれよれのGパンにウインドブレイカー、みすぼらしい服装でどこか貧乏臭く、文字通り叩けば埃が立ちそうな感じの女性である。今日も例によって同じ格好だ。たぶん持っている服はこれだけなのだろう。もっとも服装だけで判断できるものではない。ぼーっとしているようにみえても噂では日本屈指のハッカーなのだということらしい。放浪癖があっていつもどこかをブラブラ彷徨っているところを無理矢理お願いされて今回の監査役にさせられたらしい。もっとも生来の風来坊らしく、会議の場には一切出てこなかったし口を交わしたことさえ無かった。

「政府の犬みたいな仕事って大嫌いなのよねぇ」

彼女を部屋に上げるといきなりそう言いだした。

「システムセンターなんて税金使った国民監視機構でしょ。ネットワークを防衛するとか言いながら、それを盾にして総ての情報を集約しようっていうんだから二枚舌もいいところだよね。あんなもの潰すのは一向に構わないけれど――」

金縁眼鏡のレンズ越しに僕の目を見据えた。

「あたしの目の前でやらしておくわけにはいかない」

彼女が僕のところに現われた理由はこうだ。システムセンターの情報は基本的に持ち出し禁止である。とはいえ、開発をするにあたって外部に持ち出さざるを得ず、外部発注社には公開をしている。しかしそれはかなり限定的なものであり、外に持ち出されている情報をそれぞれかき集めて総合できたとしても、今回の事件のようなことは決してできない。何らかの中枢にいるものの情報が持ちだされたと考えるのが妥当で、それができる人物を総当たりでチェックしているのだそうだ。

「センターの出入りが出来て、テクニカルな面での全容を知っている人ってのは三人だけなの。監査役のあたしとハードウェア責任者とあなた」

ハードウェア責任者は当局の主任なのだが、主任のところからハードウェアの情報が洩れたことは判ったそうだ。残るはソフトウェアの情報である。

「あなただけは、その――」

彼女は僕の机の上にあるノートパソコンを指差した。

「ノートをセンターに持ち込み、そして持ち出すことができた。そこには全ソースコードが入っているんでしょ」

その通りだった。僕はプロジェクトの全工程をチェックし、総てのソースコードに目を通していた。どんなプロジェクトにもそういう人が一人は居ないと事前にトラブルを関知できないのだ。そしてその道具として使っているのはそのノート。もっとも肌身離さずにしているし、誰かに使わせる時もこの間のように僕の監視下でしか。と考えたところで蒼ざめた。あの時、あの娘をずっとみていたわけじゃなかった。ゲームに興じていると思わせておいてセキュリティを破っていたかもしれない。

そのことを彼女に話した。

「その娘が犯人の仲間かどうかは判らないけれど連絡はとれる?」

彼女の目の前でメールを書いた。

『To:witch@hakuto.ne.jp 君に今すぐにでも会いたい』

すぐに返信が来た。

『From:witch@hakuto.ne.jp 表の商店街で待ってる』

「ハクト。ウィッチ」

アドレスを見た紅玉嬢は驚くほど機敏に立ち上がり携帯電話を取り出し連絡を取り始めた。何ヶ所も電話をし僕の家の住所を早口で何度も繰り返す。それでも一分掛からないうちにやめてしまい僕の腕を掴んで外に連れ出そうとした。

「あっ、電源落としてノートを持って出なくちゃ」

それもままならないまま強引に押し出され、今にも雨の降りそうな外に連れ出された。真昼だというのに夕方のように真っ暗だ。商店街の店員達は雨に備えて店の前に出してあった商品を片付けているところだった。

「その娘はどこに居る?」

「ここよ」と僕達の背後から声がした。「初めまして、紅玉さん。高名な魔法使いさんのお名前はかねがね伺っています」

彼女へ駆け寄ろうとした僕を紅玉嬢は片手でおさえた。最初に会った時に被っていた帽子に白のロングコートだ。ロングといっても、彼女の背自体が低いから普通の人の通常サイズなのかもしれないが。

「魔女さん、システム破壊はあたしが阻止するから。警察にも自衛隊にも連絡したんだから」

彼女はドキドキするような笑顔を返した。

「今回は動くのが遅かったのよ。いつまでものらくらやっててくださったおかげで全部終わっちゃったの。今ごろは責任者が二人も居ない間にクラッシュが始まってる」

強い雨が降り始めていて、人通りの絶えた商店街の通りの両側に警官隊の姿が見えた。そして拡声器で通りの封鎖を宣言し店のシャッターを閉めるように通達が発せられた。ガラガラと降りていく店のシャッター。僕と紅玉嬢にも彼女から離れるように命令がされる。けれど知ったこっちゃない。僕は殆ど信じられないまま、彼女をともかく捕まえて彼女の潔白を証明したいなんて考えていたし。

外には本格的に降り始めた土砂降りの雨と僕達三人、そして離れて警官隊だけ。

彼女は道の真ん中を駅側に向かって疾走し始めた。物凄い速さだ。遅れて紅玉嬢と僕も追いかける。反対側の警官隊も僕達が走り出したのを見て後から間を狭めてくる。彼女が走り寄った側の警官隊は遅れてやってきた機動隊に入れ替わっていた。ジュラルミンの盾と紺の人垣が二重三重にもなって阻止線を引く。

彼女は阻止線の数メートル先で立ち止まる。

隊長の「確保」の声が上がり、警官達が一斉に彼女に飛び掛かろうとした時だった。彼女はかぶっていた帽子を右手で取り、空へ高く突き出した。上を向いて雨を顔で受け止めていたその表情は目を細め歯を見せて笑っていた。ゾクリと背筋が凍るような神秘的で恐ろしい笑いだ。

と、目も眩むような輝きとともに凄まじい爆発音が響いた。落雷だ。目の網膜に焼きつきそうな白い鋭角のエネルギー光線が機動隊の集団の中に落ちたのだ。阻止線は瓦解した。それでも両翼の元気な警官達は速度を落としながらも彼女を捕まえようと近づいていった。しかし一撃だけでは治まらなかったのだ。最初の一撃よりは小さかったけれども、続けて何発もの落雷が降り注いだのだった。その状況は反対側の集団にも言えることだった。彼らにも等しく落雷は襲っていたのである。奇跡的にも僕達の回りには落ちなかったけれどその威力の大きさに立っていられないほどだった。直撃を食らった彼らにすれば生きていることが不思議だったかもしれない。

ともかく、彼女は一瞬にしてその場全員の武装解除を行ない、戦闘能力を失わせた。彼女は倒れ込んでいる僕に近づき手を取って、

「私と一緒に来ない?」

と言った。

彼女に言われるまま立ち上がろうとした僕は右手をガッチリと捕まえられた。紅玉嬢が離さなかったのだ。すっかり生気を抜かれて話せないような状態でいても決して僕を放そうとしなかったのだ。

「今度は一緒の側で戦いたいわね、紅玉さん」

彼女はそういうと倒れ込んでいる警官の山を飛び越えながら去っていった。それが彼女を見た最後だ。

後はエピローグだ。僕のマンション上下左右の部屋には爆弾が仕掛けられており、あの雷撃戦の時に爆発があり部屋は丸ごと破壊されてしまっていた。当然僕の部屋は廃墟どころか完全な空洞になってしまっていた。彼らは随分前から準備をしていたらしい。一角を丸ごと買い取っており他の住人達には一切迷惑をかけていないところなど彼らがカネ目的ではないことが良く判る犯行だ。

雷撃戦で被害を受けた警官達も直接雷に打たれたわけではなく、音と光と衝撃、そして帯電によるショックを受け一時的に動けなくなっただけだった。幸いなことに心臓が弱いものもおらず、一人の死人もでなかった。指向性の誘電装置が地中に埋めこまれていたのではないかと考えられている。落雷によって装置自体が吹き飛んでしまっている可能性が有り実際のところどのように都合の良い落雷が実現されたのかは謎に包まれている。

システムセンターは僕のノートに忍び込ませていたワームが伝染し、雷撃戦と同じ時刻にハードウェア全体に高電圧・高電流が流されて破壊されていた。同時にその証拠も吹き飛んでしまったので僕の責任を追及することもできなかった。気付いているのは紅玉嬢だけだったが、彼女は別の方法論をでっち上げてくれたので皆はそれを信用したのだった。ともかくプロジェクトは完全に終焉を迎えることになった。

そして僕はというと、魔女に魅せられ、仕事への熱意も無くし会社を辞めることになってしまった。帰る家さえ無くなってしまった。今は紅玉嬢に弟子入りし彼女とともに放浪のプログラマを続けている。もう一度魔女に出会うまで、放浪は続く。