◎嫁獲装置『カムカムおヨメちゃん』

「はかせー、ぼく、今日はデートの約束が有るからって言っておいたじゃないですか。それなのに呼び出すなんてひどいですよぉ」 助手の長瀬君が博士の実験室に現われました。

「なにをいっとるのじゃ、君は。わしの発明と君のデートとどっちが大切かよく考えてみい。わしの貴重な発明の方が緊急性を要し、実験台となる君がその場におらなければどうしようというのじゃ?」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、はかせー。ぼ、ぼくが実験台にされるんですか」

「当然じゃ、他に誰がおる。そんな危ない実験をわしが先にできるわけがないじゃろが」

「ひいー、勘弁してくださいよ。で、なんの発明なんでしょうか?」

「よくぞ聞いてくれた。ぱんぴょろすっぽーん、嫁獲り装置『カムカムおヨメちゃん』じゃ」

「どひゃー、いつもながらそのまんまのネーミングセンスですねぇ。ベタベタというか、欲望がそのまま露出しているというか、名は体を表わすというか」

「今の日本には本人にその気があっても結婚の出来ない惨めな独身男がたんと存在しておる。ましてや結婚しても子供を作らぬ夫婦が増えるばかりでこの先の日本はもう壊滅じゃ。いかん、こんなことではいかん。よってこの装置に独身男どもをどんどんかけて結婚させ日本の明るい家族計画を実現するのじゃ」

「はかせー、自分が34歳のカウントダウンに入っているから焦ってきてるんじゃないでしょうねぇ」

「なにを根も葉も無い戯言をいっておる。わしは真面目じゃぞ」

「で、大丈夫なんですか、その装置。何をするもんなんですか」

「結婚できない男には幾つかの理由があるのじゃ。まずそれを解析しそれらに対する適切な措置を施したうえで、フェロモンを増加させる」

「フェロモンですか、なんか危なそうですねぇ」

「その個人にあった適切な方法でフェロモンがかもし出されるわけじゃ。もう女の子にもてもてじゃぞ、うっひっひ」

「じゃ、ぼくは実験台にしないでいいですよぉ。もう彼女いるんだし」

「駄目じゃ、まず君が実験台となってもてもてになったことを確認せねば恐ろしくて、わしが試せんのじゃ」

「なんだ、結局自分の為じゃないですか。や、やめてください、ひー助けてぇ」

博士が無理矢理長瀬君を装置に縛りつけようとしています。その時実験室のドアがバタンと開いてまるで半裸な女の子が飛び込んできました。

「うちのダーリンになにするっちゃ!」

手にはスタンガンを用意してバチバチ火花を飛ばしています。博士は驚いて長瀬君を離してしまいました。これでもう立場が逆転です。博士の方が装置に縛り付けられてしまいました。

「もう大丈夫だから車に戻っていてね」 長瀬君は彼女に言って立ち去らせました。

「恐かったぞ、長瀬君、今のコスプレ鬼娘。あれは君の?」

「はい、ちょーヲタクですが大好きなんです。ですからこの装置にかかるわけにはいかないのです。節分だからって言って鬼娘にコスプレする娘ですが」

「豆をぶつければ退散したんじゃろか」

「それはそうと、実験いきますよ。このボタンを押せばいいんですね。あそれ、ポチッとな」

「や、やめんか、長瀬君、、ひぃー」

装置が駆動し始めアナライズが始まりました。

『解析開始・・解析中・・解析終了、あなたは虫歯を直していませんね、強制治療します・・ぎぎぎぎ・・がががが』

「あれ、はかせー、麻酔薬切れてますよ、い、痛くないですかぁ」

『髪型がダサイので直します・・しゅー、しゅしゅしゅー』

「ひええ、スチームアイロンで髪をなでつけてますよ。あ、熱くないですか」

『改造終了しました・・フェロモン分泌促進剤を注入します・・完了しました』

ばったん。博士は装置から解放され口を血まみれにしています。

「どうじゃ、長瀬君、わしは少しは良くなったかのう?」

「よくはわかりませんが、はかせの体からすっごく変な匂いがしますよ」

そのときでした。研究所の外が騒がしくなってきています。二人は双眼鏡を持って窓の外を眺めました。

「おお、娘さん達が外を取り巻いておるではないか。効果覿(てき)面じゃ」

「ちょっと待ってください、娘さん達の後に男がいっぱい取り囲んでますよ」

「なんじゃろう、娘さん達の親兄弟じゃろうか?」

「はかせ! 大変です、娘さん達の左手薬指をみてください!」

「う、全員指輪をしているではないか」

「そうです、この装置、人の嫁さんを獲るものなんですね」