「はかせー、今日はこんなところでなんのお話なんでしょうか?」
助手の長瀬君は博士に尋ねました。
「なにを言っとるのじゃ、長瀬君。発明じゃよ、発明。決まっとるじゃろ。これはめちゃくちゃすばらしい発明じゃよ。大村昆も嬉しくて眼鏡を落っことすような大発明じゃ」
「自信過剰なんじゃないですか、はかせー。このあいだも鈴木杏樹が眼鏡をかけて魅入ってしまうような大発明じゃとかいって、テレビに映る人間全員に自動的に眼鏡が付加されて映っちゃうっていうやつだったじゃないですか。それも黒縁ばっかし」
「黒縁の眼鏡が一番簡単だったのじゃ」
「久米宏の眼鏡が黒縁に変わるのはまあ愛敬としてもバボちゃんや日テレのブタやむしむしQのトンボも眼鏡かけちゃったじゃないですか。ガチャピンやムックもですよ」
「ダビンチの最後の晩餐が番組で流れた時は面白かったのう、十二使徒全員に眼鏡がついとった。ピカソのゲルニカはちょっと辛かったがの。まあいい。今度は仮想から現実へ飛躍じゃ」
博士は自分の白衣で何かを覆っています。そしてそれをぱっと取り去りました。
その拍子に白衣についていたボタンがとれコロコロと床を転がっていきました。
「じゃじゃじゃじゃーん、眼鏡っ娘製造装置『めがちゃん』じゃ」
「今度はネーミングに少し工夫しましたね、いつもは『君』付けなのに今回は『ちゃん』ですね、それだけですけど。誰かの受け売りですか?」
「この装置はすんばらしいぞ。特殊な怪電波を流して人間の美的感覚を操作し眼鏡をかけた女性こそが美しいと思わせるのじゃ」
「あ、それで東京タワーなんかに呼びつけたんですね、この場で実験しちゃうんでしょ」
「そうじゃ。東京タワーをアンテナにして全国に怪電波を発信するのじゃ。これでもう今日から誰も彼女も眼鏡をかけずにはいられんようになるじゃろうし、眼鏡をとったら美人だったなんて審美眼のかけらもないような俗悪漫画も駆逐されるじゃろうて。さて行くぞ、あっそれポチっとな」
効果は覿面(てきめん)でした。日本中に眼鏡っ娘と眼鏡っ娘好き好きがあふれるようになりました。
「はかせー、斉藤ゆう子が現役復帰し、トムキャットがリバイバルして、セイントフォーの写真集が復刻されてます。それはいいんですがどういうわけだかフィンガー5の懐かしビデオもバカ売れしているみたいです。大橋利恵がブレイクするのはわかるんですけれどもね。他のアイドル達もこぞって眼鏡かけ始めましたし」
「江川紹子と香山リカの二大巨頭が神格化されてもおるようじゃな、いい傾向じゃ。よし、これを機に電波の出力を大幅にアップして全世界に眼鏡っ娘好き好き怪電波を発信し、世界中を眼鏡っ娘好き好きであふれさせようではないか」
「はかせー、それだけは辞めておいたほうがいいと思いますよぉ。そんなことしたら日本経済が破綻しちゃいます」
「何故じゃ、世界シェアの90%を握ると言う眼鏡枠産業が福井県は鯖江市にあるんじゃ。日本は大儲けするじゃろう?」
「だからです。貿易不均衡が起きてアメリカのお眼鏡にかないません」
「うん、なるほど。これはわしの眼鏡違いじゃったな」