◎超現実タッチパネル『デコボコ君』

「はかせー、また発明したんですか、今度はまともでしょうねー」 助手の長瀬君が博士の実験室に入ってきました。

「今度はまともか、とはなんちゅう言い草じゃ。今世紀最後の大発明じゃ。グラハムベルもペコンペコンして電話の前でお辞儀するような大発明じゃ」

「またまたそんなこと言って。この間もドクター中松が平伏して弟子入りを乞い願うくらいの発明じゃとかいって、結局フロッピィディスクの50枚チェンジャーじゃなかったですか。しかも、いまどき5インチフロッピィなんて流行りませんよ」

「ええい口答えする口はどの口じゃ、この口か。ふん。雑誌の付録のフロッピィの処理に困っておる人は何人もおるんじゃぞ。それになんだ、偉大なベルをあんな似非中松と一緒にするんじゃない。今発明したのはこれじゃ」

さっきまで窓にかかっていたカーテンとおぼしきボロ布が机にかぶさっています。それを博士は、えいやとばかりにはねのけました。ほこりがもうもうとあがります。コンピュータのモニタの前に透明なものが張り付けてありました。

「パンパカパーン、チョーリアル3Dタッチパネル『デコボコ君』じゃ」

「いつもながらセンスの無いネーミングですねぇ。お願いですから名前を決める前にぼくに相談してくださいよぉ」

「しゃらっぷ。これは凄いぞ、表面にデコボコが表現できるタッチパネルじゃ」

「で、そんなもののどこが凄いんでしょうか」

「まったく、想像力のかけらもないやつじゃのう。一を聞いたら十とは言わん、せめてニでも三でも気がつくのが助手と言うもんじゃ。」

「はかせ、自分を棚に上げてますね」

「まあいい。今までのタッチパネルの欠点は何か知っておるか、言ってみぃ」

「えっと、タッチしてもボタンと違って押されたかどうかがわかりにくい、ってのがありましたよね」

「そうじゃ、それがこれを触ってみいボタンの絵の上がこう盛り上がっておる。で押すと、ほら、潰れる。どうじゃ、押したかどうかがはっきりわかる」

「おお、なるほど」

「それだけではないぞ、こうして細かいつぶつぶも出せるから、文字の代わりに点字を出してやれば」

「おお、目の不自由な人でも何が書いてあるかわかりますね」

「そうじゃ、目の不自由な人でも使えるGUIじゃ、GUIの大革命じゃ、窓枠すら完全に表現できるのじゃ」

「点字変換ソフトも標準添付すればもう完璧っすね」

「まだあるぞ、この地形図を触ってみい」

「はかせ、高いところも低いところもはっきりわかります、あ、ざらざらします」

「砂漠じゃ」

「ここはちくちく痛い」

「そこは針葉樹林じゃからのぅ」

「はかせ、これは画期的です、これは本当に大発明です、グラハムベルがペコンペコンしなくても、ぼくがペコンペコンします」

「わっはっは、もっと誉めてくれ、わしは天才じゃろう」

「はかせ、ちょっと質問ですが、さっきちくちく、ざらざらしましたが、これって、つるつるとかすべすべとかも表現できます?」

「当たり前じゃ、ぬめぬめも、べたべたも、ちょーおっけーじゃ」

「うへへ、はかせ、じゃ、インターネットで、あーんなページ開いたら」
博士もピーンときました。

「でっへっへ、そうじゃな、長瀬君、いいことに気がついた、さっきの発言は撤回じゃ、君はいい助手じゃ、ちょっとあーんなページをのぞいてみようかのぅ」

二人はウェブのページを閲覧し始めました。二人の変な笑い声が響きます。

そしてしばらくして二人して突然叫び声をあげ、うしろに、ぶっ倒れました。

「はかせー、間違えて死体のページを開かないでください」