貧乏なフリーのプログラマがおりました。あぶくがはじけたおかげで仕事がどんどん少なくなっていき、とうとうほんのちょっとのプログラムを組むだけの仕事しか無くなってしまったのです。でもプログラマは心にやましいところなど全く無かったので明日プログラミングをやろうと思って仕様書だけ全部書きおえて今日はもう寝てしまいました。
ところが次の日起きて仕事に取り掛かろうとすると、なんともうプログラムができてしまっているのでした。プログラマは驚いたのですが、まあなんともしようがないのでテストをして完璧に仕上がっていることを確認してから発注元に納品に行きました。発注元はプログラムのあまりの出来の良さに感激しプログラマに二倍のお金を与えたばかりか二倍の仕事を再発注してくださったのです。
とはいえ、微々たる量でしたから生活が向上するとも思いませんでしたがプログラマはソフトウェアの神様に感謝し、その日も仕様書だけ作って寝てしまいました。
次の朝、起きてみると昨日と同じく仕事は出来上がっておりました。昨日と同じく素晴らしい出来でした。やはり納品しに行くと、とても喜んでいただき見積もりの二倍の金額をいただけたのです。こうしてまた二倍の量の次の仕事も発注していただきました。
次の日も次の日も朝起きたら仕事が出来上がっているのです。
プログラマはだんだん裕福になっていきました。そして大晦日も近いころ、プログラマは奥さんと話しました。
「うららよさりずっと起きててぇだれがぁプログラミングするんか見とこのぉ」
(私達夜中起きていて誰がプログラミングしているのか見届けましょうね)
奥さんもそれにこしたことはないとうなずき夜通し中起きていて誰がプログラムを組んでいるのかみていることにしました。
いつものように仕様書だけ置いて二人は部屋の片隅に隠れました。息を殺して二人は待ちつづけました。そしてどうでしょう、夜中の十二時をすぎると突然パフォーマー575に電源が入ったのです。トリニトロン管がようやく明るくなってくるとかわいらしい顔が現われてきました。マウスもひとりでに動き始めます。よくみるとマウスにも目や鼻や口が浮き出しています。そして、なにかクラシックのメロディに乗せて歌いながら作業を始めたのです。
「仕様書できてる、よっこらしょ、うらの仕事だ、どっこいしょ」
チャールストンでも踊っているみたいにマウスがこまめに動き、どんどんプログラムが入力されていきます。最後にコードウオリアーズが起動されコンパイルされました。そしてエラー無しでメイクされると特別から終了を選んで自然と電源が落ちていきました。
隠れていたプログラマと奥さんの二人は感激にふるえて涙を流していました。奥さんがあの子達に何か着せてやりたいと言ったのでプログラマはうんうんとうなずきました。さっそく奥さんはかわいらしいマウスカバーとしゃれた本体カバーをつくり、プログラマはギガ単位のハードディスクとマウスパッドを買ってきて、仕様書の代わりに横に置いておきました。
そうしてその夜も二人は部屋で隠れていました。パフォーマー575の電源がまた突然に入りました。マウスと本体は仕様書の代わりにカバーが置いてあることに気がつきました。そしていそいそとそれを身にまといました。
「うらはもうはだかでないで、町長みたいなえらいみなり。もうはたらかんでもいいけどのぉ」
そしてぷつんと電源が落ちました。
その日からはもう二度とプログラムが自然に出来ているということはなくなりました。けれどもプログラマはなにをやってもうまくいくので困ることはないということでした。
それでもときおり妖精達が顔を出すことがあるみたいです。ときどきニコニコマックのマークの代わりにカバーを羽織った二人のアイコンが見えることがあるのです。あなたものぞきにいってみませんか。