旭山レポート2015

錦秋に源頭放流のイワナを訪ねる

2015/9/19〜

 昨年は、Hオジのご母堂様の健康問題もあり、8月にチビとK藤さんと一度入ったきりで、神通で鮎三昧の秋の連休であった。まあ、鮎三昧というほど釣れたわけでもないのだが・・・。

 今年は、遡上鮎の少なさから近年稀に見る巨鮎に沸く神通。連休は巨鮎とバトルのも悪くないと考えていたが、「鮎にしようぜ」と誘ってくるはずの隊長が「山に行く」と言っているのだから、従うほかはない。

 隊長が事前に荷上げをしておいてくれたおかげで、食料と酒を背負わないで済むのは、高齢化が深刻になっているメンバーには幸運以外の何物でもない。


 登山道を歩く人の多さからある程度予想はしていたものの、太郎小屋で荷物を受け取ってたどり着いた薬師峠のテン場は大混雑。

 後で聞いたところでは、300以上のテントが張られたのは、過去最高とのこと。水場の目の前という通常ではありえないところではあったが、何とか寝るスペースを確保できたのは、オジのファインプレーだった。

 お隣のテントには、神戸から来られたという素敵なお姉さん。即、隊長が「立山 吟醸」をエサにナンパを敢行、楽しい宴会となった次第。

 翌日は、今回のメインイベントである源流イワナ・ウオッチに出発。宴会を焦った自分が下降点を誤ったため、「アルバイト」とは言えない苦しいヤブ漕ぎに次ぐヤブ漕ぎを強いられた。

この場を借りて、改めて隊長・オジ・マサヨ姉さんにお詫びを申し上げる。

 しかし、一旦登山道を離れると、そこは昨日の大混雑が嘘のような静寂の世界。見事な紅葉も独り占めである。

後は、放流したイワナが定着してくれていれば万々歳なのだが・・・。

 結論から言うと、イワナはいた。

 H谷の本流筋に入ったところの、ほんの小さな淵で20pクラスのイワナが何の警戒心もなくユラユラと泳いでいるのを見た時には、ここがイワナのエルドラドになったことも予感した。

 しかし、その後は遡行する自分の影に怯えたイワナが時折走るのを見かけただけで、あまり魚影が濃いとは言えない。

 前回(2年前?)放流に来た時のほうがもう少し多かったような気さえする。

 ここまで釣りに入る人はまずありえないと思われるので、やはり標高の高さと落差の大きなゴルジュ帯が続く谷の厳しさが原因と思われる。

自分がかかわっただけでも、50匹以上は放流しているのだから、K池さんやT成くんが放した分を含めると100匹は下らないだろう。

  ひょっとすると、エサ不足で共食いもしているのかもしれない。


 天の川に君臨する白鳥座の存在感の大きさに驚きつつ、やや風の強く寒い夜は、隊長とは不似合のパスタ鍋とともに深まっていった。

 毎日少しずつ食べて、飲んで、荷物は軽くなってきているが、それでも折立から登り始めた時よりもまだ重い。

自分のザックが空いた分は、すぐに隊長やオジのザックから補充されるシステムになっているからだ。

メンバーで一番の「若手」だから当然といえば当然だが、それでも48歳、オジと初めて出会った14年前(オジは当時47歳)に間違われた年齢に実年齢が追いついてしまっている。

この荷を背負ったまま急勾配の沢を下るのは結構しんどい。


 とりあえず、フラットになってきたところで、テンカラ竿を取り出すことにした。とりたてて「釣りたい」という気持ちでもなかったが、入山三日目にもなって釣りたいとも思わないだなんて、何か自分が「枯れて」しまったことを認めるのが、嫌だったのである。

 釣りにがっついていない姉さんだって、あの伝説のZ谷では三日目に「そろそろ釣ろうや」ってキレたし、隊長は今でも隣のテントにきれいなお姉さんがいれば、「立山 吟醸」をエサに釣ろうとするのである。

  そこにイワナがいれば釣ろうとするのが自分であり、
  それが自分のアイデンティティのはずだ。


 チビではあるが、ポツポツと釣れた。釣り下りで釣れるのだから、そこそこはいるのだ。満足したので、オジと交代。

オジにテンカラ竿は不似合で違和感はぬぐえない。

今一つタイミングが合わないのか、いくつかかけ損ねている。登山道が近づくと、一気に魚影は薄くなったので、納竿。


 初日のテン場から大混雑を覚悟した薬師沢小屋は、思ったほどの混雑ではなく一安心。I上さん、ヤマちゃん、M下、世田谷に住んでいるのにM黒くん、歴代のアルバイトの面々が手伝いで入っていた。一通り挨拶を済ませ、着替えたらヘリポートで乾杯。

そこに、山岳警備隊が上廊下から上がってきた。

やっぱカッコいいな。ぜひ家の「岳」もあんな風になってもらいたい。
期待するだけなら、タダだし。


 いつになく饒舌なヤマちゃんと語り、やたら釣り雑誌等で盛んにoutdoor営業と黒部源流の釣りとのコラボを展開しているM下に

  「おかげでイワナがスレ切っている」と嫌味を言い

M黒くんと過去に釣ったあの川、この川の話などしながら、夜はごくごく普通に更けていった。




 下山の時、ダワさんが記念に撮ろうとスマホを持ってきて、一緒に入ろうとしたオジに「二人で撮るから」と言ったのには笑ったが、多分、先月入った時にフライをたくさん進呈したので、親近感を持ってくれたのかもしれない。

もっとも進呈したフライはI垣さんからザックを貸したお礼にと、10年くらい前にもらったもの。イワナの反応があまり良くなかったことからずっとウエストポーチに入ったままで邪魔だったんだよね。

  あのフライで釣れたのだろうか?


 来年は、隊長も古希を迎える。自分も異動先がどうなるかは、まったく不透明。ひょっとしたら、みんなで登るのはこれが最後かも・・・。

そんなことを思いながら、「来年のことが保証されている人間なんて誰もいない。いつだって、これが最後と思ってやっているんだ。」


 そう思いながら下山した。


 ちなみに、去年のK藤さんとK子ちゃんの放流に同行したM黒くんは、槍から薬師沢まで一日で踏破する健脚。

放流への意欲も高いので、今後ますます活躍が期待されるところである。

そういえば、我が家の長男も来年の夏には野球三昧の生活から解放され、歩荷として活躍してくれることだろう。受験勉強も心配といえば心配だが…。



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