2012年度活動報告 いわゆる旭山レポート

 

イワナの会復活!?赤木沢は今日も雨だった!!


2年ぶりのご無沙汰である。 昨年も、入山はしたのだが、活動らしい活動もままならず、そのまま台風で太郎の小屋に缶詰!!  オレと熊隊長とHオジの酒グダグダ、トランプ三昧のみではレポートにもなりゃしない・・といったわけで、昨年のレポートは休載を余儀なくされたのである。        旭山 久


 もちろん、オジの再起すら危ぶまれた大ケガ。 ケガ自体は言わば捻挫に過ぎないが、深部静脈血栓症、いわゆるエコノミー症候群の併発により、黒部に入ること自体が厳しい状況であり、活動どころの状況になかったことも事実ではあるが・・。

 とはいえ、我々(オレだけ?)がどんどんアユ釣りにシフトしてきたことも事実である。 加齢による根性の摩耗に加え、黒部と違って鮎釣りは釣り場までのアクセスが容易で、また熊隊長の悪魔のささやきによって、富山まで来ているにもかかわらず、折立からの地獄の急坂に足を踏み出さない事もしばしば。 会の大顧問キーさんからは「神通川のアユを愛する会」に改名した方が良いんじゃないのとの苦言を呈されることも多くなった。


第1回。 今年はイワナの会も結成25周年!何かやらないことには格好がつかない。 そこで、我々は、足慣らしも兼ね、その構想を練るべく、8月の太郎平キャンプ場へと向かったのである。


 しかし、初日の星空が嘘のように2日目以降はずっと雨。 篠突く豪雨でついにはテントが浸水! 持参したワインや本物のシャンパン(以前にも紹介したが、
8/13はイワナの会のマドンナ、マサヨ姉さんのバースデーなのである)・バーボン・スコッチから山崎12年までが全て空になったのと、狭いテントの中の沈殿で腰を曲げ続ける態勢に疲れたのとで、早々に予定を切り上げて下山した。 個人的には生態調査で32cmの黄金イワナを釣り上げたが、乱獲の話も伝わり、満足する活動からはほど遠いこととなった。 また昨年以来、どうも天候にも恵まれないようだ。




 第2回、1日目。 そして、いよいよ釣期も押し詰まった9月下旬(21−24)、土日を含めて休みが4日しか確保できなかったため、我々は放流場所を赤木沢と絞り込み、薬師沢の小屋に向かった。 いきなりの雨模様に、「またか・・。」の感があるが、天気は徐々に回復。

 昨年はリハビリ中で、たどたどしく危なっかしく歩いていたオジもすっかり復活。 7〜8年前よりもかえって強いくらいでは・・と思わせるが、オジの背負うザックを持ち上げた姉さんの表情では、ずいぶん荷が軽そうである。 しかし、軽ければ早く歩けるモノでもないというのも事実だ。何せ、オジの復活は頼もしい。

 やたらと後ろを振り返っては気にしている様子なので、ここは先に行ってもらうことにして、残り三人はぼちぼちと薬師沢に向かう。 ここまで来て慌てる必要は何もない。とはいえ、カベッケが原でまでのんびり休む必要があったかは定かでないが、とにかく足がヘニャヘニャだったのも事実。

 何せ、ほおっておいた「巻き爪」が悪化し、恐る恐る歩いていた自分は、変な歩き方をしていたために、普段とは違う場所を使っていたのだろう。


 薬師沢の小屋では、先に入山していた武田前会長と合流。 夕方、上流で良い釣りをしてきたというので、翌日が楽しみである。 黒部本流も薬師沢も、かなりの渇水でイワナは神経質そうだが、その分普段は竿を出しにくい所も攻められそうなので、何とかなるだろう。

 夕食時には、ここ数年で何度かご一緒した荒井さんと再会。 放流への協力を依頼し、快く引き受けてもらった。 楽しい方であり、デュークオジのうんちくにも負けない御仁なので、是非入会してほしい逸材である。 初日は、チーズにアンチョビ、生ハムでワインの夜は更けていった。

 相変わらず、デュークオジはK子ちゃんと宵越しの宴会。 荒井さんも加わって一層盛り上がったようである。 他のメンバーは当然消灯とともに就寝したのは言うまでもない。



 2日目。 爽やかに・・とまではいかないが、まずまずのお目覚め。 以前は遅くまで飲んでいたから、黒部では二日酔いの状態でしか釣りや山歩きをしていなかったが、ここ3〜4年は、黒部を満喫するために「ほどほど」を心がけているつもり。 とはいえ、4〜5時間は飲んでいるわけだから、爽やかには目覚められるはずがない。

 風は少しあるが、きれいな秋晴れ。 放流用のイワナを集めるには絶好といっていい天気である。 腹の具合がよろしくないという荒井さんに見送られ、B沢出合まで約1時間の下り。 コーヒーを飲んで一服したら、釣りの開始である。


 尺モノがよく出てくるA沢下流の核心部は全くの無反応。 上流部では早速、オジが掛けているようだ。 姉さんも次々に良型に竿を絞られるが、痛恨のバラシ連発。 しかし、2年ぶりの黒部イワナとの再会を心から楽しんでいる様子が伝わってくる。

 前会長はバンブーでフォルスキャストを繰り返しながら、ハイピッチで釣り上って行く。 こちらは、竿抜けをねらってポツポツと拾い釣り。 しかし釣れるイワナの型は皆良い。 尺近いのも含めて、23〜4pくらいがアベレージか・・? 20p以下は、ほとんど釣れない。

 熊隊長は、姉さんを茶化しながらビク係。 竿を曲げているメンバーを見つけては、イワナを回収している。



 午前中の釣果は、10匹あまり。 天気と人数の割には日光のちょっと手前の状況で、(我が故郷の今市は日光の一つ手前の宿場町で、イマイチな事をソフトに表現する江戸時代の古典的ギャグである)オジ以外の3人は精彩を欠いている。 って、実際の腕?からいってこんなものかも・・と少しスネ気味。 しかしきれいな秋空のもと、黒部の川原で飲むビールは格別。 こんな一時を楽しむためにここまで来ているのではなかろうか。


 午後は一転、イワナの活性も上がって、ビクは瞬く間にいっぱいになっていく。 オジは早々に予定終了。 それでも、時々竿を出しては確実に掛けていく。 このオッサンは上手い。 その他のメンバーも着実に釣果を伸ばし、予定の20は軽くクリア。 2つのビクに入り切らなくなって来たので、熊隊長から納竿のサイン。 薬師沢の小屋に戻り、放流運搬用のオトリカンにイワナを移す。

 そこに、上流から荒井さんが戻ってきた。ノルマと約束した6匹をビクに入れ、あとはリリースしてきたとのこと、真面目なお方だ。 でも、良い釣りができたようで何より。 結局、41匹のイワナが集まった。放流用としては十分すぎるくらいである。 チビが居らず良型が揃っているためか、オトリカンの中はまるで満員の通勤電車のような状態だ。 多少の増水では流されないように、しっかりと石でガードして渓流に沈めておく。



小屋前のデッキでは、お馴染みのT山岳会の面々がモツ鍋で大宴会中。 小屋番のA塚くんも、仲間に入って上機嫌にスイスイ飲んでいる。

 我々は、薬師沢の川原でプチ宴会。 高級ナッツとビンテージのバーボンがことのほかよく合って旨い旨い。 良い釣りをして楽しい仲間と旨い酒を飲む。 人生で最良の瞬間、これが本当の幸せと言うものではなかろうか。



3日目。 いよいよ、放流の日。 夜半からの雨が冷たい。マサヨ姉さんは、「お得意の」腹痛で留守番決定。 前会長は高天原に転戦のため、放流部隊は熊隊長と林オジと3人編成となった。

 出発前に御殿場のK藤氏が高校生の娘さんと到着。 K子ちゃん情報では前日に入山するも、太郎の小屋で若マスターと宴会をしていたとのこと。 夜に宴会をご一緒する約束をして9時前に出発する。


 背負子にオトリカンで川原を歩くのはいつものことだが、大量の水はザックとは違う揺れ方をするので、慣れるまで油断は出来ない。 体は前に進もうとするのに、背中の水は後ろに行こうとするので、足がもつれる事もしばしばである。

 途中、休憩の度にイワナの様子を確認する。 41匹のイワナは芋洗い状態でも結構元気。 ダブルのエアーポンプはダダダダダッと力強い音を響かせ、思いの外、強力である。


 かわるがわる運び手を交代しながら赤木沢出合を目指す中、釣り人を発見。 ゴルジュまで登り、釣り下ってきた様子である。
 雨降りで気温の上がらない中、釣り下りでは釣果も延びないであろう。 せっかく休暇をとって黒部に来たのだし、昨夜はかなりの釣り客も宿泊していたので、少しでも早く竿を出したい気持ちはよくわかるが、焦りは禁物である。

 気温が上がる昼ごろから動きだし、釣り上がれるコースを選べば楽しく釣れるはず。 何せ、ここは黒部である。 フィールドも広大であるし、魚影も下界とは比べようもないので、多少の先行者がいようが気にすることはないのだ。 ちょっと、相談してくれたらアドバイスしてあげるのになあ・・。 などと色々考えながら、上流に向かう。


 渇水のため、ゴルジュも難なく突破し、赤木沢出合も水線通しの遡行となった。 赤木沢は一部が紅葉を始めているものの、残暑の影響か、まだ夏の雰囲気が残っていた。

 時折、今年生まれたばかりと思われるイワナの稚魚を水溜まりに見つけた。 所々で水中を走るイワナの影は皆小さく、親魚クラスはほとんど見かけない。
 大きな魚は、滝壺のような大場所に潜んでいるのか、産卵を終えると本流に下ってしまうのか、それとも釣り師に抜かれてしまっているのか、明確な答えは見つからない。

 赤木沢のイワナが減ったと言う情報を得て、
2年前にも放流をしたが、その成果を確認することは出来なかった。 いにしえの黒部源流の様に、どの淵にもイワナがゆったり浮かぶ姿を見たい、誰にでも釣れる大らかなイワナに会いたいという先人の思いを継ぐべく、細々と活動を続けて来た。 その事が源流のイワナにとって多少なりとも意義のあることだったのだろうか。 少し考え込みながら上流へ向かう。

 高度が増す毎に、ガスも濃くなり、気温の低下が著しい。手袋をしてこなかったことを後悔するが、時既に遅し。


 今回はイワナの数が多いので、とりあえず、大滝の一つ手前の滝で15匹を放流する。 イワナは、底についたまましばらくは、石の陰でジッとしているが、徐々に動き出す。 中には、ここまで持ち上げてきた苦労をあざ笑うかのように、さっさと下の淵に下るひねくれものもいる。


 それを見届けると、栄光のアンカーの座を譲ってもらい(単にオジがもう背負いたくなかっただけだと思われるが)、大滝までのラストスパート。 予定通り、12時過ぎには大滝下の淵に残りの26匹、一つも欠ける事なく放流を完了した。

 ギュウギュウ詰めで運搬してきたにも係わらず、放流後すぐに「初ライズ」をする強者もいて、皆やる気の様子に一安心。 よい子孫を増やしてくれることであろう。 熱々のカップラーメンをすすったら、濃いガスと冷気に追われるように早めの撤収を始める。 


帰りは、身軽な上、とにかく寒いのと、隊長がよりによってこの日から禁煙を始めた結果、休憩時間が少なくなったため、軽快なピッチで下っていく。 本流との出合につく頃には、黒檜(くろべ=ネズコ)の樹林に遮られた為か、少し気温が温かく感じられるようになってきた。 

 渇水のため、右岸からゴルジュを下る。「釣り堀のゴルジュ」には、100匹を下らないイワナが群泳していて、壮観であった。 岸壁がかなり危険であるので、よほど気合いの入った釣り師でないと、ゴルジュまでは入り込まないし、通常左岸側からの釣りでは水面との距離が遠すぎるので、ここのイワナは守られているのであろう。

 こんなことを書くと、来年以降は「釣り堀」狙いの釣り師が多数出てくるのだろうか? しかし確実な技術やガイド無しに無理に進入するのは墜落の危険があるし、黒部に良くある、急な大出水からの逃げ道が無いので、慎重の上にも慎重に行動して欲しい。 


さらに下ると、午前中と同じような場所で再び釣り師と遭遇。「上流は釣れましたか?」と声を掛けてきた。 背中の背負子とオトリカンを見て、大量のイワナをキープしてきたと思われたのかも知れない。 「放流です。」とだけ答えると、どうやらただの釣り師ではないと気づいたようだ。 不思議そうな表情で見送ってくれた。

3時過ぎには、小屋に帰還。 ここで昔だったら、釣りに出かけるところだが、ゆっくりと過ごす。 イワナを釣ろうという意欲が衰えたのは、単にアユ釣りにハマったからかどうかは、よくわからない。
 ただ、自分が黒部に来る意義がイワナをたくさん釣ることから、何か違ったものに変化したことだけは間違いないようである。

 「黒部の突進王」と呼ばれ、寸暇を惜しんでイワナを追っていたのは、今は昔の今昔物語である。


 夜は、K藤さん親子を交えて、氷詰めで担ぎ上げた新鮮かつモウモウたる煙のお土産サンマをいただきながら、ここは日本酒で。 黒部の山中でいただく今が旬の海の幸は、ことのほかに隊長や姉さんを喜ばせてくれた。

 K藤さんは、自分と同い年であるが、数年前までの自分を見ているよう。 たくさんの酒や土産を運び上げて、小屋の仲間と楽しそうに過ごしている。
また今年は年頃の娘さんまでついてきて呉れている。

 自分も10年くらい前は、黒部にアイスクリームまで運び上げたが、今はそんな体力もそれを支える気力も足りない。 K藤さんをうらやましくも、頼もしく感じる。 今後とも、マスターも認める陰の会員として、仲良くおつき合いさせていただきたいと思う。


 また、この夜はかつてのバイトで「ご本人曰く幽霊会員」のM下君が会社の同僚を連れて入山してきていた。 今は、Orvisの代理店や「狐火」ブランドでアウトドアグッズを展開しているT社の社員となり、黒部を舞台にしたフィッシングイベントも企画中だそうである。

 イワナの会として協力できることは協力したいと伝えた。 まあ、デュークHオジのうんちく話についてこられるかどうかが、協力条件にはなるだろうけど・・・。 最後の宴会も定時で切り上げる。 オジは3連続の午前様か?


 4日目。 
最終日も、天気は今市!。 恒例の記念写真を小屋のみんなと撮影して下山。 滞在中、小屋のスタッフから、周辺の沢に関してよからぬ話も2〜3聞き及んだが、本流・薬師沢周辺では釣り人が増えているにもかかわらず、マナーの悪い人は見かけなかったということで、それが釣れるイワナの大型化につながっているのかもしれない。 この良い流れを継続していきたい。

 何にせよ、今回も放流できたことで「黒部源流じゃなく神通川のアユの会になってしまったんじゃないの?」と危機感を募らせていた大顧問のキーさんにも面目を保つことが出来たし、総会で報告できる実績も残すことが出来た。 とりあえず、1年間開店休業状態だったイワナの会の活動を復活させることができて一安心である。

また、今回放流用のイワナを集めてくれた荒井さんの入会宣言、前会長の復活、兄さんのパワーアップ(以前は「スーパー・サブ」と称して、イワナを担ぐことなど
遠慮されていたが・・・)などがあり、今後への希望がつながったのが最大の成果であろうか?


 しかし、来年の6月以降、再び黒部に入るまでにはキーさんから何度「いつからアユの会になったの?」と責められていることだろうか?

 熊隊長の禁煙はいつまで続くのだろうか? 前回は5ヶ月で断念されたので今回は6ヶ月くらいであろうか。 

 それは、来年のレポートで明らかにしたい。






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(C)黒部源流の岩魚を愛する会