2005年第2回活動報告
激流の上廊下に幻の巨大岩魚を見た!!


 8月24日、村中隊長からの「ミッション」を受け、我々二人は黙々と薬師沢の小屋を目指していた。今回のパートナーは「荻兄ィ」。4年ほど前の例会に「オブザーバー」として参加されてから、家が近い所為もあり、釣りにスキーにご一緒させてもらっている。特に今年は兄ィのホームグラウンドである湯川に案内してもらったり、フライタイイングをご教示いただいたりしているので、お礼代わりに「ディープ」な黒部をご案内しようと思っていたが、何やら趣旨が変わってしまった。今回、我々に与えられた「ミッション」は、黒部イワナのDNA鑑定のために必要な「アブラビレ」を採集すること。最低でも30ほど必要とのことだが、条件がよほど悪くない限り二人がかりなら問題はないだろう。

 改装された薬師沢小屋は、真新しい木の香りが心地よい。早速釣り支度をして下流へ。前日までの増水が引いたばかりで、釣り人もこの数日間入っていないという好条件が重なり、イワナの反応はとても好かった。ただ、アブラビレを切り取るという作業に慣れていないため、もどかしい釣りになった。

夜は心平さんのリクエストだった「もやし」を食べながらの楽しい宴を行った。


 8月25日、本来ならば源流をつめて三俣に向かう予定であったが、天候が不安なため、上流でヒレを集めながら後発組の到着を待つことにした。この日も釣りは絶好調。早々に必要数が集まったので、釣りに専念する。軽快に釣っては放しを繰り返していると、いかに一匹一匹ヒレを切るのが面倒な作業だったかがよくわかる。当然兄ィも絶好調。さすがに上手い!午後は薬師沢も探釣した。

 それにしても、後発組は遅い。待ちきれずに、新装されたベランダで宴会を開始する段になってやっと到着。どうも、林オジが何か大失態をやらかし、出発が大幅に遅れたらしい。個人的には、オジがどこぞで「可愛いウサギちゃん」と楽しい時間でも過ごしていたんじゃ・・。と思っているが、これ以上は追求するまい。しかし、これでメンバーが全員集まった。宴も賑やかになり、夜は更けていった。だけど、村中さんが持ってきた肉は美味かったなあ。
 編集者注:日程を1日間違え、奈良で鮎原鮎子と遊んでいた、思わせぶりな記述は筆者のサービス


 8月26日、大東新道を通って高天原へ。小谷で探釣するが、今までになく数・型ともに悪い。なんとなく、渓相も変わっているようで、心平さんの言っていた7月の大増水の影響があるようだ。橋の下流で釣っていた、荻兄ィもあまり芳しくなかった様子である。その間に村中さんと吉田姉は温泉で「由美かおる」ばりのセクシーショットを撮影していたそうだ。多分、俺の○○○は反応しないと思うが・・。夜は、義姉の元上司だったという伝説の小屋番さんから、豪傑たちの残した数々の逸話を語ってもらい、和やかな宴を楽しんだ。


 8月27日、荻兄ィは小谷の探釣に強い未練を残していたが、村中さんの熱心な誘いで、立石から薬師沢までの「上廊下」遡行に同行することになった。これが、5分後に大きなドラマを生むこととなる。出発早々、村中さんの登山靴のソールが両足とも剥がれていることが発覚。早くも上廊遡行断念か!?という時に、神の声とも言うべき兄ィの「スペアの靴ありますよ」という一言が・・。またそれが村中さんと同じサイズというところに、村中さんの強運がある。

 立石までの道のりは・・。いや「道」とは到底呼べるものではない。ここを登ってきた人がいるということが信じられないくらいのところである。原始から手付かずの森を抜けて立石に出ると、大きなプールには早速岩魚の魚影が2つ、3つ・・。そそくさと釣り支度を始めるオジが村中さんにたしなめられるのが、滑稽だった。そこからは、「ヘツリ」・「スクラム渡渉」など沢登りを十二分に満喫した。しかし、水は恐ろしく冷たい。経験者3人は「今年はぬるい」と言っていたけど・・・。


 しかし、聞いていたとおり、岩魚の魚影はあまり濃くないようだ。大物のついていそうな場所ばかりなのだが・・。ロッドを出したまま、なかなか竿を振れない遡行が続く。途中、いい落ち込みがあったが、先行したオジが水の中を覗き込んでそのまま「巻き」に入ったので、竿を出さずにその後に続いた。かなりの高所まで来た所で、下を見てみると・・

「ウアッツ!!」思わず声にならない、声を上げた。今まで見たこともない、まるで、丸太ん棒みたいなヤツが浮かんでいて、盛んに何かを追っている。「オーイ!」オジを振り返らせると、身振り手振りで状況を説明する。下りはかなりやばそうだが、あいつを見て素通りはできない。途中、あんなヤツをかけてもどうやって取り込むんだ?という疑念が沸いて来たが、そんなことは鉤にかけてから考えれば良い。慎重に慎重に下って行った。やっと、射程圏内に入ったところで、そっと水面を覗き込んでみると・・・。「いない」。とりあえず、何度か毛鉤を打ち込んでは見るが、無反応だった。さすがに、落胆したが改めて黒部の凄さを実感できた瞬間だった。あまりの興奮ぶりに、同行の皆も凄いのがいたことだけは信じてくれたようだったが・・・。
 同行者証言: 日頃やたら冷静な筆者が、かつて無い興奮ぶりで手足も震えていたほどであった



 その後は、食事や酒を楽しみながら軽快に遡行を続けた。立石奇岩やビル何個分もありそうな巨大な雪塊など大自然を満喫した楽しい遡行だった。B沢出合直前のゴルジュまでは・・・・。
村中さんが「見た目には難しそうだけど、ここは驚くほど簡単に行けるんだ」と言ったのが、皮肉だとわかるまでに、大して時間はかからなかった。「落ちそうになったら、岩を蹴って飛び込め」との指示に、途方に暮れそうになったのは、荻兄ィも同じだろう。最後の最後で、本当に上廊のヤバさを実感させてもらった。途中ですれ違った単独行のお兄さんは大丈夫だった廊下(ろうか)なんてシャレていられるのも、無事に生還したからこそである。

 8月28日、鮎の禁断症状が出ている村中さんと、今や完全に鮎仲間になってしまった大阪の2人は先に下山。俺は荻兄ィと第2渡渉点まで薬師沢を釣りあがってから帰ることにした。

毎回のノルマである100匹をクリアした所で、薬師沢を釣りあがるのは初めてという兄ィのガイドに専念する。兄ィは十分に釣りを満喫してくれたであろうか。

 とにもかくにも今年も黒部のイワナたちと十二分に戯れることができ、そして初めての上廊を満喫できたことを同行の4名に感謝して報告を終わりにします。

 報告が遅れたことを、ファンの皆様(?)に深くお詫び申し上げます。


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(C)黒部源流の岩魚を愛する会