巴里の日本人

98年12月14日(月)曇り

 大陸標準時5時、まだ暗いシャルル・ド・ゴール空港にエールフランスAF173便は着陸した。昨夜バンコクを22時50分(バンコク時間)に離陸して約12時間、一転真冬の世界に到着した。
 イミグレーションを通り、さっそくコートを着て到着ロビーに出てみるが寒い。両替所もまだ開いていないので身動きがとれない。やっと6時になって両替できたのでタクシーを拾ってホテルへ向かう。約40分ほどで到着。チェックインして身支度を整える。
 9時30分過ぎに商社の人が迎えに来たので、ビザ発給のためコート・ジ・ボアール大使館へ連れて行ってもらう。事前に申請書などを出してもらったりしたのでスムーズに発給してもらえた。
 大使館へ行くときはタクシーを使ったが、帰りは地下鉄でということになり、乗り降りの方法を教えてもらいながらホテルへ戻った。いきなり回数券のカルネを買ってしまうあたり無謀ではあったが。

 さて、コート・ジ・ボアールへ行く飛行機は明日の昼なので、それまでの間はあいている。やはりルーブル美術館へ行こうかと思ってコンシェルジェに聞くと、職員のストライキで閉館中だという。他の美術館も電話してみないとわからないというので、めんどくさくなってあきらめる。
 ホテルのそばで昼食でもと思い外出する。適当に歩いてみたが、適当な店がない。やはり地図が必要だと感じたので文房具屋に入りとりあえずポシェという小型のものを購入した。
 やっとカフェやレストランが並んでいる一角に出たが昼食時なので軒並み混んでいる。その中の一軒に思いきって入って席に着く。肉でお勧めのものと言って頼むと単なるステーキだった。
 実は2つくらい隣のテーブルではタルタルステーキのようなものを食べている一団がいておいしそうだったが何と言っていいのか判らず悔しい思いをしたのだった。 隣の席にいる爺さんは生牡蠣を食べてワインを飲み、さらに鶏のソテーを食べたので、その健啖ぶりに驚く。

 腹ごなしに再び歩き始めて地下鉄駅近くのカフェに入りエスプレッソを注文する。一服しながら先ほど買った地図を拡げて現在地を確認する。よく見るとこの地図には観光名所の建築物が絵で紹介されていたので思わず嬉しくなる。次の目的地をノートル・ダム寺院と決めて地下鉄で移動する。
 最寄りの駅に出てセーヌ河沿いに歩いていくと見えてきたのだが、修復工事で正面の堂塔に足場が組まれていて塔の下、3分の1ほどがシートに覆われていた。
 中に入るとかなり暗くて、まさに荘厳としかいいようのない神聖な空間になっている。奥に進むと右手側に宝物を展示している場所があり、23フランの料金を徴収している。入場料を払って入ってみると寄贈された宝物の他に、高僧たちの遺骨があったりして結構怪しい場所になっている。
 宝物館を出て一番奥に行くとピエタがある。他の観光客に紛れて写真を撮ってしまう。
ぐるっと回って出口付近の売店でセント・クリストファーのキーホルダーなど土産を買う。

 ノートル・ダムを出てモンパルナス方面に歩いて行き途中で右折して歩いて行くと地下鉄のオデオン駅付近に出た。ここから地下鉄に乗りコンコルド広場駅で降り地上へ出てみる。
 広場の向こう側に観覧車が見えたので行ってみたが営業は終了していて点検中のようであった。乗れなくて残念。近くで鉄板を載せたドラム缶で栗を焼いている。匂いにつられて買ってみる。新聞紙を三角推のようにした中に入れてくれる。結構甘くてうまい。3、4個食べたところで水分が欲しくなったので、残した分はオベリスクのそばにいた日本人の女の子たちにあげてしまった。

 コンコルド広場から遥かに見える凱旋門に向かってシャンゼリゼ通りを歩きはじめたが、途中までは店もなく並木と歩道のみで寂しい。既に日が落ちて暗くなり並木にはチューリップ形の電球の装飾が灯っている。門に近い処になってやっとにぎやかな店が並んでいる。さらに歩いて地下道を通り門の下へ行く。鎮魂の灯火が燃え、その周りに花束が供えてある。門の板一枚一枚にも文が刻まれていて、それぞれが戦いの記録だと思われる。ぐるりと一周して再び地下道を通ってグランド・アーミー通りへ抜けてさらに歩き続ける。

 やっとホテルの近くまで戻ってきた。ちょうどシーズンなのでフルーツ・ド・メールと書いてある海鮮レストランの店先では生牡蠣を売っている。この魅力には勝てないので3個ほど食べさせてもらった。うう旨い。しかし3個ばかりだったせいか値段はちょっとぼられたか?

98年12月20日(日)雨のち曇り

 トランジットの時間がほぼ1日あるので入国してパリ市内へ向かうことにした。今回は空港から市内まで鉄道のMARを利用して行く。
 例のポシェを見るとカタコンブがダンフォートロシュホー駅のそばにあるらしいので行ってみる。早速行ってみたがどこが入り口でどうやって入るのか判らず、入れそうもない様子だったのであきらめた。
雨も降りはじめたので近くのマクドナルドに入ってバーガーセットを食べる。雨がやみはじめてきたので周辺を歩いてみた。路地の肉屋の店頭にはウサギや雉がそのままぶら下がっている。

 やはりパリへ来たからにはエッフェル塔へということでメトロに乗り移動する。最寄り駅を出て歩いていくと、街角にいた男が呼び止める。
 「自分は画学生です。あなたのその髭、素敵です。ぜひ似顔絵を描かせてください。」
時間がないからと無視して歩いていく。
 エッフェエル塔を見上げると2000年まであと何日いう電光掲示をしている。68フランで上の展望台までのチケットを買う。チケットのデザインセンスの良さに感心する。
 脚の部分はケーブルカーのようなエレベーターで下の展望台に昇り、そこから普通のエレベーターで上の展望台へ昇る。外へ出ると冷たい風が吹き付ける。いやあ寒いの何の、建物の高さが規制されているので完全に吹きさらし。手早く各方向の写真を撮ってコンコルド広場の方を見ると例の観覧車が運転しているのが見えた。きょうこそ乗るぞと決意あらたに塔を降りる。
 塔の前に船着場があるので船で行こうと思ったが、次の船が来るのが1時間位後だというのでタクシーを拾っていくことにした。

 観覧車の下には行列ができていたので早速並んだ。チケット売場はどこにあるのか見回したが、それらしいブースは無人で窓も閉じていたので後払いかなと思っているうちに乗る番がきた。6組くらいがゴンドラに乗り込んが一人者は自分だけでちょっと気恥ずかしい。
 操作室にいる親爺がレバーをたおすと動き始める。スピードは意外と速く、あっという間に頂上付近に昇りった所で一時停まる。冷たい風に吹かれながら市街の展望を楽しむ。また動き始めて今度は停まらずに2回転して頂上で一時停止。さらに2回転して終了。降りても料金を集めている様子もなくて結局、薩摩守になってしまった。

 コンコルド広場からセーヌ河と反対の方向に向かって歩いて行くとマキシムなどがあったりする。日曜なので閉じている店が多く残念だ。さらに行った先の路地にパヒュームアルチザンという香水の店があったので入ってみるとシックな匂い袋があったりして洒落ている。
 さらに歩いていくとデパート街にぶつかる。大手の一つプランタンへ入る。案内を見ると3つの建物があって通路でつながっているらしい。クリスマス前の日曜ということもあって非常に混んでいる。大きくて日本でいえば日本橋の三越、高島屋、東急が繋がっているような感じである。
 本館らしい建物の屋上へ行くと半分はガラス張りの室内カフェになっているが、屋上へも出られるようになっている。カフェは満席だったので屋上へ出て風景を眺める。ふと見ると避雷針兼風向計がヘルメスの杖を横にしたモチーフで、こんなところにもセンスが感じられる。
 まだ時間には余裕があったのだが空港へ向かった。