谷川真理ハーフマラソン (2005 1月9日 ハーフマラソン)

 

 さて,NAHAマラソンを完走したのは良いのですが,足のダメージは大きかった

です。

 結局レース後二週間ほどは全く走りませんでした。

 NAHAでは,完走の喜びもさることながら,脚力不足を痛感しましたので,足に

重みを感じているうちに練習を再開したかったのですが,痛みがありましたし,完

全に壊してしまっても意味がありませんからここは我慢して休養しました。

 そこでは練習をしていなくても,気持ちは前向きなのでいいと思うのですが,だん

だんと年の瀬が迫ってくるうちに生来の駄目モードが溢れ出てきて練習はどこへや

ら。

 結局は地上歩行するナマケモノのようになってしまいました。

 まあ「自堕落王」とまで言われた男ですからね。

 こんなのは想像の範囲です。

 12月はそんな感じですからNAHAの後は1回5キロほど走っただけ。

 年が明けて,1日は天気も良くて気持ちいいので「走り始め」(「走り初め」かな?)

をしました。柴又は凄い人出でした。

 3日は足利の方に行っていたので,渡良瀬川の土手を走りました。

 あれは赤城山なんでしょうか。どどーんと見えましてね。人も少ないし空気もきれ

いで気分よく走れました。

 これで足の筋肉にはぴりっといい刺激になったかもしれません。

 

 谷川真理ハーフの話に入る前に,ちょっと雑談。

 私が使っている電卓なんですが,時間計算機能があるのは買った時から知って

おりましたが,使い方がわからなかったんです。

 それが最近ようやく使えるようになりまして,使ってみるとこれが便利で面白い。

 かけっこをする人には必需品の一つでしょうな。

 そこで,1キロを何分ペースでいくとフルマラソンのゴールが何時間何分か,或い

はゴールを何時間何分でいくためには1キロを何分で走ったらよいか,という表を

作ってみました。

 おおまかなものはいろんな本などにも出ているのですが,ちょっと細かく作ってみ

ました。

1Km  2分51秒 2時間00分00秒 人類の夢 2時間切り
1Km  2分55秒 2時間03分02秒 男子非公認世界記録 Geoffrey Mutai KEN
1Km  2分56秒 2時間03分59秒 男子世界記録 Haile Gebrselassie ETH
1Km  2分59秒 2時間06分16秒 男子日本記録 高岡寿成
1Km  3分00秒 2時間06分35秒  
1Km  3分05秒 2時間10分00秒 レーサーの大目標 サブ10
1Km  3分13秒 2時間15分25秒 女子世界記録 Paula Radcliffe GBR
1Km  3分18秒 2時間19分12秒 女子日本記録 野口みずき
1Km  3分19秒 2時間19分41秒 女子日本2位 渋井陽子
1Km  3分29秒 2時間27分00秒 福岡国際Aグループ出場資格
1Km  3分30秒 2時間27分41秒  
1Km  3分33秒 2時間30分00秒 東京国際,びわ湖毎日出場資格
1Km  3分48秒 2時間40分00秒 別府大分毎日出場資格
1Km  4分00秒 2時間48分47秒  
1Km  4分02秒 2時間50分00秒 福岡国際Bグループ出場資格
1Km  4分16秒 3時間00分00秒 東京国際女子国際の部出場資格 サブ3
1Km  4分30秒 3時間09分53秒  
1Km  4分37秒 3時間15分00秒 大阪国際女子,名古屋国際女子出場資格
1Km  4分59秒 3時間30分00秒 東京国際女子市民の部出場資格
1Km  5分00秒 3時間30分58秒  
1Km  5分30秒 3時間52分04秒  
1Km  5分41秒 4時間00分00秒 北海道制限時間 サブ4
1Km  6分00秒 4時間13分10秒  
1Km  6分24秒 4時間30分00秒  
1Km  6分30秒 4時間34分16秒  
1Km  7分00秒 4時間55分22秒  
1Km  7分07秒 5時間00分00秒 河口湖,長野制限時間
1Km  7分21秒 5時間10分00秒 篠山ABC制限時間
1Km  7分30秒 5時間16分28秒  
1Km  7分49秒 5時間30分00秒  
1Km  8分00秒 5時間37分34秒  
1Km  8分30秒 5時間58分39秒  
1Km  8分32秒 6時間00分00秒 つくば,かすみがうら制限時間
1Km  8分53秒 6時間15分00秒 NAHA制限時間
1Km  9分00秒 6時間19分45秒  
1Km  9分15秒 6時間30分00秒  
1Km  9分30秒 6時間40分51秒  
1Km  9分57秒 7時間00分00秒 荒川市民制限時間
1Km 10分00秒 7時間01分57秒  

 とまあこんな感じなんですが。

 これは実は正確ではありません。

 例えば荒川市民マラソンの制限が7時間。

 これを私の電卓で1キロあたりの時間を出すと上記の通り9分57秒と出ます。

 ところが1キロ9分57秒で42.195キロをいったらどんなタイムが出るかとやると,

6時間59分50秒と出てしまいます。私の電卓では。

 まあその程度のデータと思って下さい。

 しかしこうして見ると,1キロでは大差無いタイムでも,42.195キロを走る間にえら

いこと差が開くことがわかります。

 それほど長い距離なんですね。マラソンって。

 で,例えば2時間30分制限のハーフの大会でしたら,二倍の5時間のところを見れ

ばいいのです。そうすると1キロを7分07秒以内のペースでいかなければいけないこ

とがわかります。

 フルマラソンを6時間以内でしたら,大体8分30秒のラップでいけば可能だと。

 しかしこれ,やってごらんになるとわかると思いますけど,1キロを8分30秒かけて

走るのって大変ですよ。かなりゆっくりです。8分でも遅いです。

 レースの最初から8分のペースを刻んでいくというのはなかなか困難です。

 ちなみに1キロを10分というのは100メートルを1分ですから,早歩きぐらいのペー

スです。

 と言っても前回のNAHAでの私のタイムは5時間59分ですから,平均すると1キロ

を8分30秒ぐらいってことにはなるんですな。結局。難しいもんです。マラソンって。

 しかしキロ8分30秒のイーブンペースを保てたら6時間切れるんですねえ。なんだか

変な感じです。

 かと言って,私なんかが最初から8分30秒ペースでいったら,それはそれで後半バ

テて,6時間をはるかにオーバーしてしまうことになるでしょう。うーむ。

 当面はばらつきのないイーブンペースを刻んで完走することを目標にしよう。よし。

 それにしても男子のトップランナーは大体1キロ3分ですよ。速いですねえ。

 100メートルを18秒ですからね。そのペースで42.195キロ走るんです。

 100メートル18秒ランを422回,休み無しでやると考えると……。

 尋常ではありません。

 

 で,谷川真理ハーフマラソン。

 谷川さんはもう有名ですよね。テレビ等でもご活躍。お美しい方ですし。

 前にも述べておりますが,私が走り始めるにあたって,参考書として最初に購入し

たのが,谷川真理さんとコーチの中島進さん監修による「楽しくきれいに走りたい マ

ラソン完走BOOK」でございます。

 我が心の師のお名前を冠した大会に出ない訳にはいかない(笑)。

 正月明けに一発ハーフを走るというのも悪くない。

 フルだとちょっとキツイかなという気もしますが,ハーフなら。

 

 この大会,「地雷ではなく花をください」というスローガンを掲げております。

 これを見て最初は,言いたいことはわかるのだけれども,今ひとつスローガンとして

こなれていないのではないかと思いましたが,同じタイトルの本があるんですね。それ

で納得しました。

 というように,地雷廃絶を訴えると共に,地雷除去の費用の寄付金を募るチャリティ

大会でもある訳です。

 何故谷川さんがこういった問題に取り組むようになったか。

 これはクリス・ムーンという人との出会いが大きかったようです。

 クリス・ムーンさんは長野五輪で聖火ランナーを務められましたので,ご存知の方も

多いでしょう(最後伊藤みどりさんが出てきた時はのけぞりましたが)。

 イギリスの方だそうですが,元々ボランティア活動は盛んにやっていた方のようです。

 軍隊に入りましたが途中で辞め,地雷撤去の活動に携わるようになったのが1993

年。

 95年,地雷撤去作業中に自身が地雷を踏んでしまい,右手右足を失う。

 この人の凄いところは,事故後,まあ入院してますわね。

 テレビでロンドンマラソンを見たそうなんです。

 そうしたら自分も義足を付けて走ると言い出したらしいんです。

 無茶言う人ですな。

 で,この人はホントに無茶な人で,事故から1年後にロンドンマラソンに参加してしま

うんです。

 義足で。

 初マラソン,5時間29分で完走ですって……。

 世界は脅威に満ちてますな。

 このチャレンジは話題となり,チャリティーランとなりました。

 つまり自分で地雷を掘り起こすことはできなくなったが,彼がマラソンを走ることで寄

付金を集めるという道ができた訳です。

 この後,五体満足な鍛え上げたランナーでも過酷なレースに彼は挑戦し続けます。

 サハラ砂漠240キロとか,デスバレー200キロ超を往復とか。

 この辺のことはこのサイトの下の方,「特集」の中にある「クリス・ムーンはなぜ走る

のか」でドキュメントを見ることができます。

 で,そうそう,谷川さんは,長野五輪の二日後,彼が箱根・東京間125キロのチャリ

ティマラソンを走った時,伴走を務めたんですね。

 この様子も上記のドキュメントで見られます。

 これだってとんでもないですよ。

 箱根駅伝,ありますでしょう。

 あれの復路ですよ。

 あの山を。義足で。

 義足の当たっている部分はマメの上にマメが重なり,巨大な水ぶくれみたいになって

しまう。

 痛くない訳はないんだけれども,それでも走り続けてしまうんですねえ。

 足の指に小さいマメができただけだって気になってしょうがないのに。

 マラソンコーナーの最初でも述べたボブ・ウィーランドさんもそうですが,この人たちを

突き動かすものは一体なんなのでしょう。

 クリスチャンだからというだけでは説明しきれないものがあります。

 それほど地雷というものが卑劣なものだということでしょうか。

 谷川さんは,この伴走をしてから,いろいろ勉強したそうです。

 パキスタンに行ったりもしたと。

 そして98年から開催のこのハーフ大会では,チャリティも募ることになった訳です。

 エントリーする時に,一口100円で何口でもいいから募金して下さい,という風にな

っているんですね。

 また会場では,ゲストを招いてのチャリティオークションもやる。

 今回2005年の大会では188万円の募金が集まったそうです。

 これだけ集めるのは大変ですよ。

 しかし「ランナーズ」誌2005年1月号で谷川さんが述べておられますが,地雷を作

る1個単価は300円なんだそうですが,除去にかかる費用は1個あたり5万円になる

そうなんです。

 単純な割り算をすれば,今年の募金額で除去できるのは37個。

 まあこういうことは金額や数だけではない部分もありましょうし,知ることが一番重要

なのだとは思いますが,正直もどかしさも感じます。

 一方クリス・ムーンさんが25日間連続ダブルフルマラソン(つまり1日にフルマラソン

の2倍の距離を走り,それを25日間続ける)をやると,1億円ほど集まったのだそうで

す。

 勿論やっていることがあまりにもぶっ飛んでおりますし,比較してはいけませんけど,

凄いですね。

 それでも5万円で割ってご覧なさい。2000個ですよ。何百万個か何千万個か,世

界中にいくつ地雷が埋まっているのかは知りませんけれども。

 こうなると対岸の火事ではないという気がしてきます。

 1個300円×2000個=60万円の後始末に1億円。

 不謹慎承知で申し上げますが,闇金融どころの話じゃないです。

 そんな単純な話ではないにしろ,このように考えてみても地雷の問題がいかに困難

なものかがわかります。

 ところがこういったチャリティというものですが,どこまでやったらいいものかわから

んところもあります。

 まあ募金したいと思った時にぱっとするのがいいんでしょうけれども。なにからなに

までやってられないですからね。

 しかし心が動いても,なかなか行動に出さずにそのまま月日はめぐる……,という

ことも今まで正直なところ結構ありました。

 その点こういうマラソン大会があれば,賛同できなければしなければいいですし,

そうでなければ,できる範囲のことをすればいい訳です。

 扱っている問題は重いですけど,こっちまで必要以上に重くなることもないだろう。

 気軽に募金して,楽しく走ればよい。そういう意味ではかえってありがたい。

 大体車のガソリンを満タンにする時,メーターの数字が上がるのをドキドキしながら

見ているようなヤツがチャリティもなにもないんですけど(笑)。

 でもボブ・ウィーランドさんがアメリカ大陸を横断した時,ぼろぼろの服を着た男から

10セントの寄付を受けたそうです。

 その10セントは彼の全財産のようであったと書いています。

 別に聖人君子でありたいとは思わないけれど,なんだか胸がちりちりしてきます。

 もう少し景気が良くなって,太っ腹なスポンサーが大会についてくれれば,もっと効率

よく募金が集められるようになるかもしれませんね。

 このようにマラソンから,他のさまざまな領域に思考が広がっていくというのも面白い

ことです。

 マラソン自体の性格が,いろいろな物事に結びつきやすいものなのかもしれません。

 ま,とりあえずはちょいと余分にエントリー料を払わせてもらってですね。

 その気持ちの集合がなんらかのかたちに結びつけば,これは美しいことであります。

 

 で,レースですが。

 コースは荒川の河川敷ですから,単調ではあります。

 平坦ですから走りやすいかというと……。

 私のような老亀の如きランナーはいいんですけど,タイムを狙っている人たちは,途

中コースが細くなったりしますのでちょっと走りづらいかも。折り返しのコースなので遅

いランナーとすれ違いますからね。

 ただ折り返しのコースのいいところは,トップランナーの走りを見ることができるんで

すね。

 この大会,ゲストランナーが多いんです。

 私がまずすれ違ったのが,ホノルルで優勝したこともある早川英里さん。

 小柄な人なのですが,物凄い勢いで疾走していきました。

 そのすぐ後につけていたのがこれまた小柄な千葉ちゃん,千葉真子さん。

 「千葉ちゃ〜ん!」と思わず声が出てしまいましたけど(笑)。あっという間に消えて行

く。

 凄い走りでした。

 他には谷川さんは勿論,長谷川理恵さん,そのまんま東さん,相澤美佳さん,先日青

梅マラソンを完走した浜口順子さんも走ってました。

 なかなかミーハー心はくすぐられますな。

 私はと言えば,なにしろ練習不足ですし,全く期待しておりませんでした。

 それどころか2時間30分の制限内に入れるのかも不安でした。

 最初の5キロがキロ5分42秒ペース。

 10キロまでの5キロが5分58秒ペース。

 ここまではまあまあでしょうか。私としては。

 15キロまでの5キロが6分10秒ペース。疲れてきましたかね。

 20キロまでの5キロが6分52秒ペース。だいぶこたえていると見て取れますね。

 結果。

 2時間10分26秒。

 あれま。記録更新じゃん。

 不思議なものです。

 これ,前月にフルマラソンをやって,距離に対する耐性ができたからでしょうね。

 タイムアップにつながるような練習は何もしてませんもの。

 ハーフの距離が恐くなくなったということでしょうか。

 となると,気持ちの部分も大きいということですね。マラソンは。

 少しずつわかってきますねえ。面白い。

 しかしこんなペースの落ち方はよろしくないですな。余裕が無い。

 目指すはイーブンペース。うむ。練習練習。

 

 この日は大会会場に某氏が駆けつけて来てくれたので,赤羽でまず喉を潤す。

 その後何故か両国でちゃんこ鍋でも食おうということになり移動したのですが,どの

店も大混雑なんです。

 よく考えたら,大相撲初場所の初日ですよ(笑)。そんな日に両国なんか行ってはい

けません。

 それはいいのですが,両国の街の全域に尋常ではない警備が敷かれているんです。

 黒塗りの車がずらりと路駐してあるあたりはそこかしこにSPとおぼしき人物が立って

いる。

 上空にはヘリも。

 あれは国賓クラスの大物だな。

 超VIPがちゃんこ鍋をつついていたに違いありません。

 誰だったのかなあ。

 しかし偉くなるとちゃんこをつつくのも大変ですな。

 そんなオオゴトなちゃんこ,食いたかないね。

2005.3.30 (2005.5.12 補筆)


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