2004 Mt.FUJI JAZZ FESTIVAL Report

 

 去年は富士スピードウェイでやったのですが,今年は富士急ハイランド

での開催。

 去年はなにしろブレッカーブラザーズを見たかったのでその日だけ行き

ましたが,今年は初日にリー・リトナーとクルセイダーズがあり,二日目は

ステップス・アヘッドがあるので,これはもう泊り込みで両方見なければ

ならない。

 台風16号の影響で雨が降り続き,また東の風が吹き込み,数日前には

考えられぬ異常な寒さ。

 そんな中,白熱しましたねえ。今年も。

 

 初日トップはオルケスタ・デ・ラ・ルス

 これも楽しみだったんです。結構好きで。

 ところがですねえ,ちょっと違和感がありましたね。

 偉そうになに言ってんだってことにもなりましょうが,なんだか縦ノリと言う

か。わかりやす過ぎというか。

 カルロス菅野さんとか高橋ゲタオさんがいた頃とはちょっと違うかなと。

 生意気なようですが。

 まあ活動再開して間もないことですから,これからどんどん良くなるので

しょう。バンドは上手いですし,NORAさんは相変わらず元気ですしね。

 私としては「あれっ」というのがあって,今一つはじけられませんでした。

 でも盛り上がりましたよ。

 次がバンドネオンの小松亮太さん。

 これは凄かったですね。

 ジャズフェスティバルに何故タンゴが?ってのはありますが,なかなかの

緊張感で良かったですね。もうプログレですな。

 またバイオリンの女性が物凄く上手い。感動的でした。

 途中,ピアノの方が作った曲の紹介で,その曲が某社の車のCMに使わ

れたそうで,その車の名前を言っておりましたが,それは特別協賛のスバル

の車ではなく(笑),気まずい空気が流れましたが,あれはもしかしてわざと

でしょうか(笑)。

 その次が日野皓正さん。

 「ミスターマウントフジ」ってことらしいですが,今年の日野さんはいつにも

増してこれまた凄い緊張感で,一曲終わるとただちに次の曲を始めるという

ような構成で,ソロも凝縮されていて,濃密なステージでした。

 この人は命がけで新しい音楽を作ろうとしているんだなと感じさせるものが

ありましたね。

 もう結構なお年であるはずなのに若々しいですねえ。ずるいぞ。

 そしてリー・リトナー登場。

 メンバーも凄いですよ。

 パトリース・ラッシェン(K),エイブラハム・ラボリエル(B),アーニー・ワッツ

(S),アレックス・アクーニャ(D)。

 往年の名曲をやりましてねえ。

 「RIO FUNK」ですか。「CAPTAIN FINGERS」もやったか。

 エイブラハム・ラボリエルが雰囲気を作ってましたねえ。

 キメをサボったりしてたみたいですが(笑),楽しそうでした。

 キーボードソロの時,ドラムとベースでトリオになりますが,一瞬やばい領域

に踏み込みました。

 アレックス・アクーニャががんがん突っ込んで,エイブラハム・ラボリエルが

ぎりぎりの音符でぶりぶり引っ張る。その上でパトリース・ラッシェンがどこに

行ってしまうかわからないようなプレイをする。

 あれはかなりスリリングな時間で,これぞ「本物」と思わされました。

 あんなことができたら楽しいだろうなあ。

 あ,リー・リトナーか(笑)。

 いやいや,もう元気そのもの。しゃべればおちゃらけおじさんですな。

 しかし十代の頃とかに憧れたミュージシャンがすっかりロートルになっていて,

時間って残酷だなあと思いましたね(笑)。

 初日最後はザ・クルセイダーズ

 見たことないんで,これはなんとも見たかった。

 ベースはジョー・サンプルの息子だそうで。頑張って弾いてました。

 これまた往年の名曲の数々で。

 それはいいのですが,ギターが何故かレイ・パーカーJr.なんです。

 ほら,もう嫌な予感がしますでしょ(笑)。

 そしてその予感は最悪の形で現実となってしまうのです(笑)。

 ステージはスムーズに進行し,ラストの曲が終わる。

 当然アンコールがかかります。

 スタッフがステージ中央にマイクスタンドを立てる。

 そして今まで最後列で弾いていたレイ・パーカーJr.がそこに立つ……。

 始まってしまいました。「ゴースト・バスターズ」(笑)。

 しかも「ゴースト・バスターズ!」っていうところを,「クルーセイダーズ!」って

わめけと強要するんです(笑)。

 まあ盛り上がったし,面白かったからいいんだけどね。

 でもこの曲が一番スイングしてて(笑),一番盛り上がるってのはどんなもん

なんでしょうか。

 まあよかろう。

 

 二日目。

 最初は津軽三味線の木下伸市さん。

 これもジャズフェスで何故?ってことなんですが,本人もそれは言っておりま

した。

 彼曰く,津軽三味線も即興演奏であると。

 なるほどそりゃそうだ。

 しかし津軽三味線のソロって,あれはワンコードってことになるのかしら。

 ハービー・マンみたいなもんか(笑)。

 確かにがんがん転調する津軽三味線ってのも気味が悪いかもしれませんが,

それでもかなり凝った曲もやってましたね。

 なかなか迫力がありました。

 バイオリンの土屋玲子さんという方が大変おきれいな方で。

 かなり萌えました(笑)。

 そして次が今回最大の謎,佐野元春さん。

 なにしろ全く意味がわからなかったのですが,始まって少しは理解できました。

 とにかく,この歴史あるイベントをリスペクトした(MC:赤坂泰彦談)スペシャル

ユニットであると。

 パーカッション仙波清彦,トロンボーン村田陽一ですからね。

 バンドは凄腕揃いですわ。音楽的にはもう恐いぐらい。

 で,佐野さんですが,これがなんと,詩を朗読したんですねえ。

 一曲だけじゃないですよ。全部(笑)。

 「SOMEDAY」は無し(笑)。つまり佐野さんはここでは所謂「佐野元春」をやり

ませんでした。

 これは評価すべきなんだろうな。たぶん。

 その詩ですが,うーむ。

 言葉のイメージとしては非常に美しくて,パワーも感じられましたが,どうしても

なんでこの仕事を受けたんだろうというのが先行して(笑)。

 無理してやる必要があったのかどうか。

 とりあえず,所謂「佐野元春」的なものを期待して出かけたファンもたくさんいる

と思うんですが,その人たちは困惑しただろうなあ。

 私は完全にあっけにとられました(笑)。

 次。ロビー・デュプリー

 これまた懐メロ全開です。

 「STEAL AWAY」ですか。あと超有名な曲もやっていたのですが,タイトルが

わからない。

 バンドも凄くて,サックスなんかも気合が入ってましたね。

 もっとも後でマイケル・ブレッカーが出てきますからね。

 ああいう大物が後で出てくる前に演奏する心境ってのはどんなものなのでしょう

か。ちょっと力が入ったりしてしまうのでしょうか。

 いや,でも凄かったですよ。

 ロビー・デュプリーは歌声は相変わらずなのですが,見た目はすっかりじいさん

で,街中で会っても絶対誰だかわからない。

 去年もランディ・ブレッカーが妙に肥大していて,トランペットを持っていなかったら

全く誰だかわかりませんでした。

 「AORドリームバンド」ってことなのですが,勿論AOR的なさわやかな楽曲もある

のですが,演奏自体はなかなかハードで聴き応えがありました。

 そしてその次がBen E.キング

 かっこよかったですねえ。

 JBとかB.B.KINGのステージのように始まる時に名前をコールしましてねえ。

 ホーンセクションがあって,ぶっといコーラスのおねえさんがいて(振り付き)。

 いかにもアメリカの昔ながらのミュージシャンという感じで良かったですねえ。

 「STAND BY ME」も当然やりましたよ。

 会場全体で熱唱です。

 同じ時空にいる喜びを感じられるような,そんなステージでした。

 さあさあ,今回の大トリ,ステップス・アヘッド

 メンバーも強力です。

 マイケル・ブレッカー(S),マイク・マイニエリ(V),マイク・スターン(G),ダリル・

ジョーンズ(B),スティーブ・ガッド(D)。

 これもまた懐かしい名曲をやりまして。

 「BEIRUT」なんて生で聴くことがあろうとは思いませんでした。

 昔来日公演がありましたが,あれを彷彿とさせる曲,構成でありました。

 あのへんてこな電気サックス(?)で「IN A SENTIMENTAL MOOD」もやり

ましたねえ。泣きそうになりました。

 そういえばセッティングしている時に,いきなりマイケル先生がステージ上に現れ,

あの長身を折り曲げてマックのノートをてけてけいじっておりましたが,あれはちょっ

とかわいかった(笑)。

 さて今回はドラムがスティーブ・ガッド大先生でこれも驚きなんですが,ずっといい

感じで,無駄なことしないで叩いていたんです。

 それがマイク・スターンがソロを弾いている時,彼にフラッシュバックが訪れました。

 何をどう叩いているのかまるでわからない音のカタマリがごわーっ!と押し寄せて

きて,あれはびびりました。洩らすかと思った。

 途中,私は視野の狭窄が起こり,今自分がどこにいるのかわからなくなりました。

 久しぶりの経験でした。私もフラッシュバックだったりして。

 

 てことで,もう大満足。おなかいっぱいの二日間でした。

 二年前はスパイロ・ジャイラ,ベイクド・ポテト,去年はブレッカー・ブラザーズ,今年

はクルセイダーズ,ステップス・アヘッドときているのですから,来年は是非ウエザー・

リポートを連れてきてほしいですねえ。呼び屋さん頼むよ。

 ジャパンマネーにものをいわせてなんとか実現して下さい。

 さて,これで終わりますが,読み返してみると,日本人に対しては「日野皓正さん」

「佐野元春さん」と「さん」付けなのに,外国人に対しては「リー・リトナー」「ロビー・デュ

プリー」と呼び捨てなんですね(笑)。変なの。

 もっとも「リー・リトナーさん」ってのもおかしいかな。

 まあいいや。

 しかしこういう文章って個人ホームページで一番ありがちでダメで気持ち悪いもの

ですわな(笑)。

 もう書いちゃったからいいことにする。

2004.8.31

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