「運命」やベートーヴェン演奏にまつわるあなたのサイドストーリ募集します。メール ![]() 「運命」は、余りにも有名な名曲中の名曲だ。シンフォニーの王者であり、多くの人がこの曲からクラシック音楽に親しみ始めたのではないだろうか。ご多分に漏れず、自分も「運命」/「未完成」入門組だ。最初に耳にしたのが、ノイマン、チェコ・フィル(東京公演のライブ、コロンビア)の演奏だった。自分の小遣い一ヶ月分をはたいて、1300円の小学館の確か「世界名曲全集」の一見デラックスな箱入り第1巻を買ったのだ。これが、自分のソフト所有欲を満たした最初の体験だった。その後、叔父さんが購入したリーダーズダイジェストと言う懐かしい大手通販のクラシック入門セット物の中から、コンビチュニー、ライプツイッヒ・ゲバントハウス管弦楽団という渋いものも聴いた。しかし、余りにも地味過ぎて、相変わらず、ノイマンを聴いていた。そして、間もなくカラヤンと言う指揮者が世界で一番の指揮者だという噂を聞きつけた。小学校6年の誕生プレゼントか何かで、カラヤン、ベルリン・フィル(1961年録音)のブランドのLPを買ってもらった。このLPは100万枚売れたと言われており、イ・ムジチの「四季」と同じくらいの大ベストセラーだったらしい。、一家に一枚と言った具合のものだったようだ。 今になって、多くのLPを集めたのに、すべて売り払って、CDにしてしまったことを後悔している。この最初に買ってもらった、カラヤンのLPの見開きジャケットの格好よさに、レコードの黄色いグラモフォンのレーベルに魅せられた。レコードとジャケットから発せられる独特のにおい。そして、ジャケットに浮かぶカラヤンの姿が格好いいと感じた。指揮者になりたいと真剣に思った。演奏も、ノイマンの穏当で可もなく不可もなくという演奏とは大違いだった。ダイナミックでテンポは速く、ベルリン・フィルの音もとにかく何だか凄いと、子供心に感じた。これで、カラヤン=ベルリン・フィルブランドの信者になった。同じ曲でも、演奏者によって全然違うのだということを知った。 それからもう30年近くにもなろうとしている。カラヤンに対しては音楽以外の事も含めて、毀誉褒貶が多い。自分も、これはちょっとついていけないという演奏もあるし、いろんな演奏家を幅広く聴くようになったが、依然として自分のアイドルであリ続けている。カラヤンの死後は、新しい演奏家のCDを買う意欲は失ってしまった。 ![]() ![]() この曲は意外にTbが重要な役割を担っている。想い出深いのは、金沢にオットマール・スイトナー、ベルリン国立歌劇場管弦楽団が来て、「田園」と「運命」を演奏したときのこと。両方とも素晴らしい演奏で、感激したが、特に金管とティンパニーがどんな役割を担うべきなのかということを強く印象付けられた。ベートーヴェンの楽譜に多数書き込んであるsf、スフォルツアンドの演奏法である。 そして、忘れられないのは、「運命」の第4楽章の再現部の後のクライマックス、オケ全員が和音とトレモロだけになって、第1Tbがハ長調に解決してくれる部分(290-294小節)。第1Tb奏者の顔が2,3小節の間に、見る見る真っ赤になった。そして、和音が解決した後に、顔色は白く戻った。「運命」の実演で、視覚的な変化を楽しめたのは後にも先にもこの時だけだ。しかし、音楽はこのTbで確実に火がついた。背筋にぞくっと走るものがあり、全身の毛が逆立った。音力で押しまくることなく、興奮させられた。このとき、プロのTb演奏者の違いを思い知った。この体験以後、必ずこの部分を注目して聴く習性がつき、この部分の演奏如何で、演奏全体の印象が決定してしまう。しかし、なぜ、ベートーヴェンが第1Tbだけに音の動きを与えたのかを考えれば、Tb奏者にとってこれくらいおいしい部分も無いはずだ。 この部分の記憶に一番近い理想的演奏はこれ。演奏者を知りたい方は連絡ください。 |