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80年代の多彩な選曲には、当時の金大フィルの無鉄砲さ、上り調子の勢いが感じられます。例えば、ブラ3と火の鳥(第44回定期)、シューマンの「春」とJ.シュトラウスの「南国のばら」(第9回サマーコンサート)などは、実に大胆です。全般に、メインシンフォニーとの、音楽的な相性や必然性という点でも、納得性のある選曲がなされていると感じます。 90年代に入ると、アンコール「なし」という演奏会が多くなります。勿論、演奏会の本プログラムに手一杯というのが現実の問題だったのかもしれません。ちょっと寂しくも感じます。 アンコールに何を演奏をするかについて様々な意見があるとは思いますが、オーケストラとして1つの見識を示すものでもあるはず。それだけに、選曲によっては、やらずもがな・・・、と言う場合もあります。数年前のサマコンで、シューマン「春」の後に、ガブリエリ(金管アンサンブル)を聴かされたときは、ちょっと失望しました。会場でも聴衆が見る見る引いて行くのわかり、後味の悪いものでした。オケの団員に他人事のような弛緩が見て取れたのに、興醒めしたのを思い出します。 ひときわ型破りなアンコールが、この「星条旗よ永遠なれ」です。「ブラームスの1番」の後の、アンコールといえば、ハンガリー舞曲あたりが無難なところ。1番か5番あたりが演奏されるのが定石です。しかし、このサマーコンサートでは、なんと、ブラームスとは縁もゆかりもない、アメリカの「星条旗よ永遠なれ」が演奏されました。 この演奏は、当時の名学生指揮者、ブラ1を指揮された花本氏自身のアレンジです。中間部のオブリガートには、ピッコロだけでなく、ピッコロトランペットが与えられているあたり、独特のものです。 当時、オケは金管楽器奏者の団員が急激に増加し、1つの演奏会でメンツ全員の消化ができないという問題に直面していました。特に、この演奏会のように、メインがブラームスの場合、Tbあたりが暇になります。最終楽章しか出番がありませんから・・・。 このような事情で、ブラームス1番の演奏後、打楽器を含む多くの演奏者が再登場してアンコール演奏となりました。オケメンバ全員と観衆の両者がさらに感興を盛り上げていき、ブラームスとの整合性はともかくも、乗りに乗って演奏会を締めくくりました。お客さんも非常によろこんでいように記憶しています。 この頃の演奏会では、このような客席との一体感が演奏会で起こることを団員全員がを心に期待をしつつ練習に励んでいたように思います。それは「サービス精神」といっても良いかもしれません。金大フィルが更なる発展を信じて、前向きに取り組んでいた時代のドキュメントです。(中西記) ![]() 当時の名学生指揮者 花本氏 |
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第6回 サマーコンサート 81/06/28厚生年金会館 指揮:花本康二 コンサートマスター:纐纈直樹 アンコール:星条旗よ永遠なれ (2.1MB) |