短歌BOX


・・・・Scale of season・・・・・


ものなべてほそき影曳くこの頃のあなたの目には落日がある 

叩きつけた言葉響かせなぜこんなあつけらかんと抜ける秋空

息詰めて崩るるまでをいつくしむ今宵聞かばや砂の忍び音

あつぼつたい媚びあるをんなと思ひしが三面鏡に映る横顔

おうつくしくあらせられませ悲をまとふ貴女に捧ぐ月のカンテラ

鳩羽色の夜のそこひを船はゆく人が闘いの火蓋切るとき

此岸より見えざる扉ノックする節高き指のわれを訪なふ

<<寂連>>                     
思いおく心の底の夢ならば手折りてゆかむ白き曼珠沙華

*****

ぶはぶはと両の手たよりなき朝春の不調の慣ひのひとつ

波立てる百の緑と競ひあふ命がけの花 春は疲れる

案の定きのふとよく似た朝が来てただ木蓮のだらしなく咲く

むせるほどの桜のにほひ惨劇はどこかでしずかに用意されてゐる

見た目にはただの林檎であるのだが掴めばずぶりと崩れるのだらう

膨らんだ空気は嫌ひばうばうとはめあひ公差の決まらぬ午后の

ブランコは二人で漕がむこのまんま無限に上昇してゆくカノン

肩先でためらつた手は下ろされて「涙のにあふをんなになれよ」

おづおづと別れ切り出すそのをとこ咽喉の胡桃の微動だにせず

おほきにゑ、ほなさひならと別れ告げる京都弁にはアルトが似合ふ

あつけないさよならだつた舌の上のトローチ噛んでしまひたいほど

あまつたるい言葉溶かして酒を飲む今夜も猫は帰つてこない

きりんの背濡らす小糠雨ゆらゆらと詩人は坊やの手を引いてゐた

致死量の退屈を詰めて朝を待つオイルタンクのキャップがあまい

ゆるやかにとぢたカーブのその先にとほく蹄の音が聞こえる

**

ひたひたと水たまりゐて右肺にゆつくり開くクリムソンの染み

脳髄にいくつもいくつも転がつてゐる色とりどりのゼリービーンズ

狂つてもいいよといふがに両隣のヘッドフォーンから漏るるシャカシャカ

営業マンのよくしやべる手がわたくしの目の前にある 組んず解れつ

円卓に孤立無援のこのをとこやはらかさうな耳をしてゐる

おとがひに剃刀をあててみたいものだ骨太にして美しき横顔

並びゐし影の肩先とけあひて……抜いてはならぬ胸奥の棘

**

からつぽの棺に髪ををさめませう深山(みやま)猫目草(ねこのめさう)のかたはら

ひととせを髪切らずをれば行きつけのヘアーサロンの店閉ぢゐたり

「少し髪をお染めなさいな」美容師は一束指にあそばせて言ふ

ひたむきに生きて来しかばくろぐろと物語せむか切り拾つる髪

漆黒の夜へをんなを放ちやるここちなどする髪解くとき

誰だつて君よりはましさ解き放つ髪のシナモン色に疾けゆく

「夜更けては道が淋しう御座ります」髪長き人いとまを告げぬ

・・・・Everyday・・・・


淫らなるかかと浮かせて立つてゐる夕暮れキリンの首を抱くとき

欲しいもの欲しいと言へずほのぬるきリビングに独りきく Je te veux ジユ トウヴー"

よごれたガラス磨き続ける調律が必要なのはピアノだけじやない

海は月に支配されてる ねえ涙、あふれていいよ赤い月だよ

水底から月を見ている斑なる死者の眸の流れいづるまで

うすあおき水に海馬が落ちてゆく夢とふ夢をくだるきだはし

*

「ガッコウがつらい」と言ひぬ 子は秋の恬と暮れたるキッチンのすみで

折れさうなセイシンは嫌ひアスファルトの路肩に傾ぐコスモスの花

せめぎあふ一対の翼きしきしと十四の吾子の飛べない背中

自転車におまへを乗せてゐたころのあつけらかんと晴れてゐた空

くにこさんなんばしよるとをとこんこたつた二人を育てきらんと

杜の外へと小さなわたしをひいてゆくしんと冷たき祖母(おほはは)の手は

幾たびもリプレイさせる笑顔ひとつあかときの海のやうに静かな

*

冬野原未だ咲きゐる蒲公英のぽつりぽつりと呟くやうで

昏れ残る草藪に小さき花のあり世に雑草とふ草はないはず

藪枯覆ふひさしにトリコロールの螺旋ゆかしき理髪店の見ゆ

うなじつたふほのぬるき泡丸顔におかつぱ頭の少女でありき

電飾を縦横無尽に絡ませてイロハカエデは何の咎負ふ

雪纏ひ静かにまろむビルの群街では人も老いやすくある

テンペスト幾千の音符降る中を逃げてゆくのは たぶんあなただ

*

おなじやうに丸まつて膝を抱きをれば猫は小さく寝言をもらす

この家に末つ子の生(あ)ればさもあらん猫のしぐさより話しはじまる

それぞれが猫にむかひて話しかけ家族の夕餉のはつか若やぐ

「猫だからつてさように気ままぢやなりませぬ」なだめてすかして食べていただく

集会の時刻なるらしやにさがりしつぽゆらして猫のいでゆく

ねじ伏せた気持ちいくつか見透かして猫は静かに踵をかへす

寒空には満天の星 こんな夜に歩いても歩いても満天の星

*

「死ぬるべきはあなたではないか」あかときを機械仕掛けの猫が横切る

その人はさよならを呉れた熟れ充ちてコケモモが木から落ちる瞬間

引き裂いた思い出のやうに胸を刺すヤンバルクイナの紅いくちばし

傷ついたクジラ漂ふゆふぐれはこころの中のオカリナを吹く

涙なんか忘れてしまつたクローバーの丘に座つてるトッポジージョー

呉橋を飾る雨だれ誰だつて触れたくはない夢の一条

*

屋根を越ゆる夾竹桃に花みちてマゼンダはどこか悪女のにほひ

大玉のレタス投げつけたキッチンの壁は誰より私を知つてる

うら若き父親五月の陽の中をみどりご肩にとまらせてゐる

颯颯とサキソフォンの風うけながらサボ履いてゆくさみしい足は

緑陰に四肢投げ出せばなにもかも吸はれてゆくか大土の中

ここに居ようこころ緑に染まるまでオランウータンのやうな目をして

髪をさぐる指が落としたヘアピンはあなたの小指の骨かもしれず

*

来る年七歳男児三名が揃わぬといふ門前町は

落とし紙軍手せんべい竹箒並べたる店タバコ屋といふ

三回忌計りてをればかたはらの犬は舅の面持ちに似る

ゆつくりと鋏入れられし切符なればずつと右手に持ちてをりたり

大学前、京セラ前過ぎ櫻川駅にて君の笑顔拾ひぬ

鞄には文庫一冊「失われた時を求めて」つひに開かず

だらだらとつづく葬列下りゆく二度とはもどつてこれないところ

*

軽やかにセックスレスと言い放つ唇を濡らすキャンティの赤

縛るなら絹の靴下転(まろ)び合ふ二人聞きしはダイアナの訃報

をぢさんはずるくて嫌ひと告げしよりをぢさんの肩なべて下がりぬ

松葉杖のかたへに在ればつんつんとモノ言ふごときわが脚である

ま昼間の車中に座せばわが膝は熟みたる苺の香をぞ放ちぬ

黙々と自転車に人の曳かれゆく深夜駐輪場のスロープ

波打つはお囃子御輿担ぎ手の茶髪白髪寄り合ひてゆく

*

利休作とふ石庭に人の立ち並び「百人の庭」とて石に見らるる

躙(にじ)り口と貴人口より吹いてくる風は明度とにほひが違ふ

妙齢の女主の居るやらむ「今昔西村」珍裂(ちんぎれ)の店

白壁のかたへうふふと桃色の笑みを漏らせり室咲きの桃

京都駅烏丸口よりいでくれば京都タワーは二本もありぬ

つま先のストレツチ足袋に目をやれば「おまつとうさんどす」と声かけられぬ

三月堂古書店に『鵞卵亭』あるやらむ京都寺町御池を上がる

*

飲食の酸ゆき甘きを知りてなほぎざぎざと吐く「丸くはならぬ」

大筒を抱きて若き花火師のししむらもろとも火の粉放てる

チェーンソーの音響きわたれこの宵は倒木の一つになりたき思ひ

倒木は朽ちて若芽を育てをりげに朽ち果てたや若芽育つな

おたのしみのところをすまぬがアクトレス濡れた尾鰭をどけてくれぬか

長すぎるイントロのごとき「とほりやんせ」冬の晴れ間の交差点に聞く

過去(すぎゆき)は葉陰のそよぎ抱くべき何物もなし『星宿』を読む

*

憎しみは憎しみとして飾りおくVネックから零るるクルス

疎まれし記憶一つはぎざぎざと 班猫(はんみよう)土にて育つがごとく

不忍池のほとりに笑み深き男ありけり何に哀しき

省みる昨日は持たずさはいへど…檸檬しぼつてくださいますか

口中の酸ゆきはきつと檸檬のせい舌だしをんなが舌を抜かるる

7cmのブーツの踵が踏みしだく「出会い」と書かれしティッシュの類

やじろべえのゆれやうが好き風衝けどさやと戦がぬ人を思ひて

*

雑踏のややにまばらになる真昼これより先はジグザグに行く

饒舌に酔ふこのゆふべキリマンジャロの苦きカップはゆつくり干さむ

語らひはわずかにずれる協和音テーブルごとに音立ちのぼる

表彰台にて拳あげしはトミー・スミス '99年「ちびくろサンボ」は復刻さるる

刹那刹那を生きるほかなく地下街にバームクーヘン一つ買ひたり

この膝はせつぱつまれる貌をしてゐる 両腕にかかへられてはゐるが

肩並べあふはうれしき 肩をこひそびらこひつつこの秋も暮れぬ

*

ためらいの白き肌へに緋色立つ傷といふ名のブレスレット一つ

沈みゆく腰うけとめてバスタブはまことをんなの器と思ふ

ひとたびはわれに埋もれしその人ののらりくらりと別れも告げず

重たさうに古木の枝はうなだれてとれよとれよと柿の実たわわ

父の腕の煙草の匂ひつれてくるモノクロームの回転木馬

ミルクパン囁く朝のあかるみに割つてしまひたいカップは幾つ

夭死とはもはや呼ばれぬ齢なり日照雨に匂ふアスファルトを走る


・・・・Watering pot・・・・

冷たき潮ほのぬるき潮早朝のプールに小さき潮流のあり

抱かれるとふ言葉もつともふさはしく水と光のうちに在る時

早朝の水の雲母(きらら)を抜けるとき鈍色の鱗そがれてゆきぬ

指先にわずか触れなむかぎろひはあの夏胸に砕いたガラス

ひるまひる誰もがアンニュイとまらせて降りだした雨と『岸辺のアルバム』

ちらちらと陽炎佇ちぬ稲の葉よ今宵はとつぷり眠ることです

鬼ならばまつたき鬼であるがよしガバナビリティ不足している

生まれえぬたましひの歌ふ声のする朝のプールの小さき昏がり

水にたどる輪廻転生はらはらと・・・螺旋に落つる青きまがたま

ひたひたと浸みゐるは独り 雨よ、雨が、雨は、雨こそ、雨とふ雨の

たつぷりと真水は太古の母のやうをんな静かに四肢を解きぬ

深き夜にささやくほどの雨ならむたつたひとりが忘れられない

救急車のサイレンとほくにじむ夜はひとこぶ駱駝のせなのさびしさ

呉橋を飾る雨だれ誰だつて触れたくはない夢の一条

うすあおき水に海馬が落ちてゆく夢とふ夢にくだるきだはし

毒薬に髪を浸せば雫せむむかし愛したをとこの指へ

透明な殺意の水のたゆたひのきつとこのまま知られざるまま


・・・・Classical taste・・・・




急ぐからと会を抜け来てマンデリン一杯分のひとりをついばむ

子を三たり侍らせ歩く母親の声すべからくはつらつとして

もうとうに我の背こえたる長男の靴など洗うはいと腹だたし

跳ぶことはならじと諭す人の居ていつまでと問えばしんと答えず

泣くことは無いと思えど安らげる顔にしずくのつつと落ちたり

我が身よりこぼれ落ちたる椎の香の不実不実と歌いたまえり

加茂川の上(かみ)に架かれる思(し)久(く)呂(ろ)橋真水の匂いとサキソフォンの風

じゅんさいな人などと言う悪口も京の言葉の風に転(まろ)びぬ

カレンダー赤丸青丸並びいて母の検査日父の受診日

捨てるモノ捨てられぬモノを両の手に吾は物言わぬ天秤棒になる

耳下にさやり音たて落ちる風これより長く髪は伸ばすまい

午後三時風はみずから甘くなるビール工場傍らの道

真芯に桃の種子抱く心地して身ごもりなどをうたがいてみる

行く先に一点の曇り秋の田はちゃんと黄金(こがね)の穂を揺らすのに

それぞれに見えぬ何かを抱きつつ産科婦人科医院のロビー

手折りても隣家の庭にはみだせるおしろい花の強き生き様

箒木に三日月かかるこの庭は唯一わたしが泣いていい場所

しんきらり野草の強さ身に宿しただ秋風に吹かれてゆかむ

キーボード打つ手が見たいと強く言い君の手をとるプラタナスの道

そういえば改札抜けた吾の腰をひたと迎えた君の左手

眼差しに向かいて佇てば何もかも見抜かれている 阿修羅になれず

大木はぎりぎりの線で立っていた。五重塔をずっと見ていた。

夕刻の椅子はからっぽしずけさは何より君が呉れたるひとつ

君の呉れた小さき孤独と寝るために一枚のレタス音たてて食む

あの人の咽喉(のみど)の胡桃をかりこりと…嘘などつかせる女羞しも

少しずつあなたをズームアウトしてわずかに見える立つて居る場所

恨みっこなし恨みっこなしと叫(おら)びつつ死にものぐるいの嘘をつきたい

「お前」から「貴女」に変るベクトルの距離と角度をはかりかねている

突き上ぐる噴水のさまありありと…だからあなたとはこれつきりにする

木の芽張る青瑞山の痛みなり裂け目裂け目に咲く紅ツツジ

村民は農業公園などと呼ぶドイツを模したブルーメの丘

地ビールも地野菜もひどく高価なりドイツを模したる街の中では

描かれたその時のままの光にて出会って欲しとは設計者の弁

抱かれて湖(うみ)にたゆたふ白鷺のあれもわたくしこれもわたくし

きみからの最後の手紙は十六文字「忘れてしまえ。夢だったと思え。」

いくつめでかけ間違へたボタンだろう 否 最初から数は合はない

元気さうでよかつたと笑ふきみなればゑまふほかなき吾の唇

たとふればキルトケットの昼下り春めく空気を柔く拒みぬ

花芯見せ花びら落とす花なればチューリップなんて嫌ひと言つて

翅萎えたまふかおまへあはあはと透けゆくそびらはうそ寒くある

捨てられしことの幾つか棘となりこの胸裡はまだ春ならず

なまなまと下る血潮や秋の日のそれより数えて六つ目の卵

諍ひの幾年月かがありまして夕やみに供ふ一合の酒

仏事神事何をかなさむ芳名帳と姑一人近江に在りぬ

まだこんな所に居るの?亡き友の声慎しく吾を揺るがす

ゆくりなく出会ひし縁(えにし)手に受けて托鉢の僧の美(は)しき一礼

やはらかく笑ふをのこら携へて織田裕二など観にゆくをみな

からからと夜半にしばらく歌ひしは洗濯槽の5円玉ひとつ

ひるがえりひるがえりつつ一葉の紙は風さえ弄びつつ

転びたる夢に溺れぬ石ふたつ引き合う磁石の両極にいて

甘噛みのやるせなさかも辛辣な言葉連ねたのちの口づけ

まなじりをつたう滴が解きゆく握りこぶしと熱もつ四肢と

鳩尾をつかまれたままあかときは仄かに滲む 雨になるのか

熟れゆける石にならむか頽れる土塊(つちくれ)となるか大土に伏す

山の端の埋み火ならむふるさとの風纏う空がふいに恋しき

恋しさと名付けてやれば喉もとの緩みてことんと梅の実落ちぬ

ペーパーに細やかな泡のわきたちてわが一生(ひとよ)瀘せばどんな色水

冴えかえり冴えかえりつつ耳ふたつ月の雫の音を聞きたり

属性をぬぎ捨てた後に何あらむワインも人も同じ音する

23cmのわれのスニーカー蹴散らして大き手足の出でゆく朝

「どれもこれも母さんのせい」黙したるわりに物言う背中見送る

うとうしい容れ物ならむか鳥籠は 大きすぎる雛羽ばたきやまぬ

「たかが図面」そういうのだな君の言う「たかが図面」を描いて食つてる

善きことのみ語る口なり だけどだけど膝抱く腕を少し伸ばして

三界に家なしと云う母も姑(はは)も子に在る家をさして疑わず

五つほどの熟れた枇杷の実手に受けて身の丈を知るわたしであれな

みずみずと透ける指先さみどりのモスコミュールに魂ひとつ

バスルームの鏡は私を映さないボッティチェルリのビーナスが好き

切り刻んだジグソーパズルの顔写真もう唇しか覚えていない

いまここで十指ひらいてゆく時に幸せ見えると言われておりぬ

巻き戻す幾つかの夏シネマにはいつも時計の針が足りない

もはや世界にたつた二人にならうとも汝に差し出す腕はあるまじ

ゆうらりと月光菩薩のほほゑみの隣に佇つのはだれであつたか

ぽつてりと黒きしとねに漂ひて熟れつつ腐りゆくのか月も

九月の雨にむんと匂へるアスファルト去年の背中が滲んで見えた

ラ・フランス好みし頃過ぎこの秋は二十世紀梨のやうなるをとこ

ビルの間を紋白蝶の迷ひ来ぬ曾根崎お初天神の庭

倦怠の頬の冷たき男なればナルキッソスの鏡を持てり

自転車の籠に二株積まれしは目にひんやりとセロリの緑

眠るためたとへばブロバリン百錠甘くなるまで噛む白昼夢

乳房ふたつ冷えてオフィスに残る夜うつしみなれば電話は鳴らない

脱ぎたての蝉やはらかき光放ち放ちてやるにこの夏のことも

人は囲みそして散りゆき風が残るそれも一つのうねりであるか

焼酎には「呷る」が似合ふが穏やかな一日であればレモンで割りぬ

うちあけたき一つ事あり ほろほろと淡き白なるブーゲンビリア

たまさかに黒木三千代さんに逢へし事ミシェル・フーコーの紐に手操りぬ

こころよく「水が洗つてくれる」とふ平たいそびらの高瀬さんなり

どしやぶりの雨だつたつけ その腕を後生大事に抱いてた夜は

夕さればよそゆきの顔に疲れゐてふと嗅いでみるブラウスの汗


Sweet yawn 花 とっぷへ